2022.07.18

移動手段はヘリコプターが定番に?「空のモビリティ」で変化する旅の未来。

F.I.N.編集部の7月テーマは「旅する」。2027年のリニア新幹線の開業など、旅の楽しみでもある乗り物やサービスも進化しています。今回は、新たな移動手段として市場規模が拡大しているヘリコプターを活用した旅に注目。その先駆けとして、ヘリコプター遊覧サービスの開発を手掛ける〈株式会社AirX〉の取締役COO・多田大輝さんに、空を活用した旅の未来についてお話を伺いました。

 

(文:對馬 杏衣/撮影:柳瀬 渉)

空を自由に使える未来を思い描いて。

前職のITベンチャー企業で代表・手塚さんと出会い、入社1年後には上場を経験。それから自らも起業を志し、事業を選定している中で目に止まったのは、ドローンの法改定だったそう。当時は認知度が低かったドローンをきっかけに、人や物を運ぶ「空のモビリティ」の未来を描き始めました。

起業当時を振り返る、取締役COO 多田大輝さん

「例えば、移動手段の検索や予約にかかる工数、移動そのもので体力を消耗してしまうことで、遠方の旅行や帰省を諦める人も多いと思います。もっとカジュアルに行きたい場所に行ける、会いたい人に会いに行けるようになる手段があれば、人生でより多くの体験ができる。そこで、ドローンのような空を自由に使った次世代交通に可能性を感じて、ヘリコプターの移動サービスを展開しました」

2015年には、全国の有名観光地の絶景を空から楽しめる遊覧飛行の予約サービス「AIROS Skyview」をリリース。東京や大阪エリアを中心に年間3,100件以上のフライト利用があります。テクノロジー企業としての開発力を活かして、従来の業界では1週間ほどかかっていた予約プロセスを約3分に短縮し、スマートフォンで最安値のヘリコプター予約を実現しました。

「空のモビリティ」で広がる、日本の観光資源の可能性。

空のモビリティ市場を発展させることで、日本の観光産業にも貢献したいというAirX社の想いに共感し、旅行業界から転職してくるメンバーも多いと話す多田さん。

 

「元旅行業界出身のメンバーと、日本の観光事情についてディスカッションする機会があります。例えば、日本は自然が豊かで、地方には魅力的な観光資源が多くありますが、電車や車を乗り継ぎ、移動に1日費やさなければならない場所も多い。さらに、コロナ禍でオンライン旅行の需要が増えたように、インターネットで高解像度の映像が見られる今、長い移動時間をかけて現地へ見に行きたいと思う人がどのくらいいるのだろうかと考えます。

私たちが開発しているようなヘリコプターのサービスを活用していただくことで、移動=不便というイメージが払拭されて、アクセスしにくい地方の観光スポットにも足を運ぶ人が増えるといいなと思っています。特に滞在日数が限られているインバウンドの観光客にとっても、効率のいい旅の選択肢が増えることは大きなメリットですよね」

成長に欠かせない業界連携と理解。

2030年には、7,000億円規模になると予想されている空のモビリティ市場。交通手段としての空の利用や観光地へのスムーズな移動が期待されている一方で、解決しなければならない課題も多いそう。

 

「まず一つは、法制度の問題ですね。例えば、『都内のビルの屋上にヘリで降りられますか?』というお問合せをよくいただきますが、今は離発着できる場所はないのです。緊急時や災害時に使えるケースはあるものの、事業として使用する許可はなかなか下りません。

 

あともう一つは、騒音の問題です。法律上、離発着ができるようになったとしても、その周辺住民の方が騒音を気にされることがあるので、その点を理解していただく必要があると思います。ハードウェアの側面でも技術の発展によって、騒音問題を解決できるようなアプローチができるといいなと期待しています」

公共交通機関では時間がかかるエリアや、渋滞が多いエリアでもスムーズな移動が叶う

さらに、空の移動を実現していく上で、航空業界との連携も欠かせないと話す多田さん。「なにより1番大切にしていることは安全運航なので、数ある業務のなかでも航空会社との連携は、特に優先度を高くしています。既存の航空会社の運航体制や、既存の許認可を僕らもしっかり理解できているということが、これからの市場展開に必要なことです。

 

あと、パイロット採用や育成面もですね。空の交通サービスの提供機会が増えても、航空機を運航できるライセンス所有者は限られていますから、航空会社との人材連携や仕組みづくりに注力していきたいと考えています」

 

2030年、移動が苦にならない未来へ。

ひと足早く航空産業が盛んになっているアメリカでは、高齢者の方でも小型飛行機に乗って遠出をしたり、市内から空港までタクシーのように予約したりと、空の移動はより暮らしの一部になっているそう。日本でも2030年代には、富裕層メインのサービスではなく、帰省時に利用できるくらいの価格帯やハードルであることが理想だと話す多田さん。

 

「僕の息子は1歳半で騒がしい時期なので、電車や飛行機などの長時間かかる移動は周りの目が気になってなかなか楽しめない部分もあります。車のようにプライベート空間で移動ができるヘリコプターがより身近になれば、旅行や帰省の頻度も増えると思います。あとは、ご高齢の方や移動に対して不自由がある方にとっても、移動が苦にならない次世代交通の未来を創っていくことが目標です」

F.I.N.編集部が、実際に空の旅を体験!

全国で拡大しているヘリコプター移動ですが、安全性や乗り心地も気になりますよね。そこで今回、F.I.N.編集部が実際に空の旅を体験してみました。

 

出発は東京・新木場にある「東京へリポート」。東京駅から車で15分、新木場駅からタクシーでワンメーターと便利なアクセスです。到着後、受付と必要書類の記入を終えると、搭乗するヘリがやってきました。

ヘッドフォンで機長や同乗しているメンバーと会話ができる

アテンドされながら、機体の中へ。事前に指定した座席に乗り込み、シートベルトとヘッドフォンを装着するといよいよ離陸です。

離陸後、3分ほどであっという間にレインボーブリッジ付近に

今回選んだのは、東京湾岸を10分間クルージングするプラン。東京タワーやレインボーブリッジ、東京駅など定番の観光スポットを通過します。見慣れた街の風景も、上空から遊覧するという非日常的な体験に終始感動を覚えます。さらに、夜のフライトは夜景も素晴らしく、プロポーズのサプライズ利用も多いそうです。

 

移動のみならず、心を動かすような体験ができる空の旅。これからより身近になる未来が待ち遠しいです。

■F.I.N.編集部が感じた、未来の定番になりそうなポイント

・ヘリコプターが移動する際の当たり前の手段になることによって、移動にかかる工数・身体的苦痛を軽減し老若男女、移動を楽しむことができる。
・見慣れた風景を別角度からプライベート空間で堪能できるヘリコプターは、移動手段だけでなく、心を動かすような非日常的体験もできる。
・航空会社、旅行会社、ラグジュアリーホテルなどとの連携によって、様々なシチュエーションでヘリコプターが活用され、新たな体験価値を創出する。

【編集後記】

自然豊かで観光名所が沢山ある日本国内を旅行する際、目的地に行く際、電車で何時間/車で何時間/そこから徒歩で何分、と1日かかってしまうことがあるので、コスパを考えて諦めることが多々あります。

実際に10分間、東京湾岸を遊覧させていただきましたが、びっくりするほど揺れないんです。そして速い。子どもが憧れるようなヘッドセットを付けながら、見慣れた風景を違う角度で見ることで、様々な発見があり非日常的な体験をしました。 空のモビリティとしてヘリコプターが定番になることで、移動手段のみならず様々なシーンで注目されていくんだろうなと胸が高鳴りました。

(未来定番研究所 小林)