2021.03.27

マニアに聞く、ジョイフル・ジャーニーへの道。<全3回>

自動車篇| 映像作家・米倉強太さんの、心を整える手段

「ジョイフル・ジャーニー」とは、移動をどこかへ行くための手段として捉えるのではなく、移動という体験自体に喜びを感じるような新しい旅の価値観のこと(*1)。移動が制限されている今、「ジョイフル・ジャーニー」の視点を持つことで、これからの旅はもちろん、日常生活のちょっとした移動にも新鮮さを感じるのではないでしょうか。

 

そこで、これからの旅の定番になりうる「ジョイフル・ジャーニー」を解明すべく、自転車や車、電車といった移動を実際に楽しんでいる方々に、移動の魅力をお聞きしていきます。

 

第3回目にお呼びしたのは、ファッションブランドの広告映像などを手掛ける、新進気鋭の映像作家・米倉強太さん。80〜90年代に製造された「ネオクラシックカー」と呼ばれる自動車のオーナーであり、レースにも時折参加している米倉さんに、自動車移動の醍醐味を伺いました。

 

*1 ジョイフル・ジャーニー

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート大学インテリジェント・モビリティ学科の教授デール・ハーロゥ氏が提唱した新しい旅の価値観。デール氏によれば、「人々は単に移動をどこかへ行く手段と考えるのではなく、移動そのものの価値を重視するようになっていく」という。(出典:『AXIS』207号)

米倉さんが以前所有していた「98年式 ボルボ 850ターボ」の写真。普段使いをしていたため、車内は部屋のようにくつろげる空間が整っていた。

自動車は、自分の部屋のような場所。僕にとって、自動車での移動は、部屋ごと移動しているような感覚なんです。プライベートな空間にいながらどこかに行けるというのは、自動車ならではの魅力ではないでしょうか。自動車の運転中は、7割ボーッとして、3割は映像のことを考えています。撮りたい内容が決まったら、その肉付け作業をするのですが、運転中にいいアイディアを思いつくことが多いですね。また、時間があるときはサーキットにも出かけて、思いっきり運転を楽しみます。ドライブがリラックスのためだとしたら、サーキットで走るのは、ストレス発散のため。どちらも僕のメンタルにいい効果がありそうですね(笑)。

運転することはもちろんですが、自動車自体にも魅了されてきました。僕は今、通称「ネオクラシックカー」と呼ばれる、80〜90年代に製造された自動車を3台所有しているのですが、それぞれシーンによって使い分けています。96年式のレンジローバー・オートバイオグラフィは仕事やプライベートに、92年式のフォルクスワーゲン・ゴルフIIは子どものお迎えなどの日常使いに、86年式のポルシェ・930ターボはレース用に使っています。ネオクラシックカーの一番の魅力は、“カッコ悪くならない”こと。2000年代に製造された自動車は、カーナビが導入されたせいで、数年古いだけで一気に劣化して見えます。その点、ネオクラシックカーは、今乗ってもあまりローテクに感じません。

レンジローバー・オートバイオグラフィに乗って、ワインディングロード(曲がりくねった道)を走るのが好きです。おすすめは、山梨へ向かう途中にある国道413号線の〈道志みち〉。景色がよく、信号もほとんどないので、ロードバイクや二輪車に乗る方にも人気です。いつか電気自動車での旅もしてみたいですね。ガソリンで動く自動車とは違って、電気自動車は充電に数時間かかるので、その間に街を散策すれば、2度おいしい旅になりそうです。

Profile

米倉強太さん

映像作家。1994年生まれ、栃木県那須町出身。モデル活動を経て、大学在学中に映像制作会社〈office sankai〉を設立。グッチ、ユリウス、ユニクロなどの広告映像を手がける。2018年にはパリにて自身初となる映像展を開催。https://www.office-sankai.com/

編集後記

自動車王国・愛知県出身の私にとって、幼い頃から自動車は非常に身近な存在。身近だからこそ、「移動」という機能以外の魅力に気づけていなかったことを痛感しました。

記事には書ききれませんでしたが、「自動車のパーツをどうカスタマイズするか」という話題を自動車好きの友達同士で語り合うのも米倉さんの楽しみのひとつなんだとか。そんな風に楽しみをシェアできるのも、移動にとどまらない自動車の魅力なのかもしれません。

(未来定番研究所 菊田)

マニアに聞く、ジョイフル・ジャーニーへの道。<全3回>

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