2021.09.24

<外遊びの協会vol.1>見つかる悔しさと見つからないうれしさ。なぜ今、大人が「かくれんぼ」を?

世界大会出場時の日本かくれんぼ協会理事・高山さん

写真:Nascondino World Championship, Consonno, 2017

子どもの頃に親しんでいた外遊び。大人になるにつれ、縁遠くなってしまう人がほとんどではないでしょうか。しかし、世の中には本気で外遊びに取り組んでいる大人たちがいます。知られざる外遊びの魅力と可能性に迫るこちらの企画、第1回目は「日本かくれんぼ協会」にインタビュー。一般社団法人として外遊びを広める活動を展開。子どもだけでなく大人を対象にしたイベントやプログラムを開催しています。老若男女を惹きつけるかくれんぼの面白さとは?

大人の本気遊びを広めるために協会設立。

「かくれんぼ協会」高山勝さん。

写真:Nascondino World Championship, Consonno, 2016

「日本をかくれんぼ大国にしたい」――。そう話してくれたのは、「日本かくれんぼ協会」の理事・高山勝さん。もともと外遊びが好きだったという高山さんは、社会人になってから外遊びイベント「チャンバラ合戦」の企画・運営の仕事をしていたそう。協会を立ち上げたきっかけは、2017年の「かくれんぼ世界選手権(Nascondino world championship)」。日本代表として大会に参加していた高山さんは、大会後に優勝国イタリアを訪問し、驚きの光景を目にします。

 

「街中の広場とかで、30代から40代くらいの男性たちが、大量の汗をかきながら子どもと一緒に本気でかくれんぼをやっている姿を目の当たりにして衝撃を受けました。イタリアでは平日の夕方や土日に繰り広げられるよくある光景で、大人が本気でかくれんぼをするのは日常の一部だそうです。周りの人も『楽しそうに遊んでいるね』という眼差しで見つめていて、その空気感に惹かれました」

 

日本では目にすることのない、大人が楽しそうにかくれんぼをする様子に衝撃を受けたという高山さん。「大人も本気で遊んでいい」という、イタリアのような文化を日本に広めたいと、2019年に「日本かくれんぼ協会」を設立しました。

 

かくれんぼ協会では、毎月4本から5本のかくれんぼイベントを開催しています。その参加者のうち約4割は大人なのだそう。しかも、そのうち半分くらいはリピーター。かくれんぼの魅力に引き込まれる大人は高山さんだけではないようです。大人がそれほどまでにかくれんぼにハマる理由とは一体何なのでしょうか?

 

高山さんいわく、ほとんどの大人は「ただの遊び」「たかがかくれんぼ」と思い、気の緩んだ状態でかくれんぼに臨むとのこと。”油断”して参加したはいいけれど、誰しも負ければ悔しいもの。

 

「油断した状態で参加された方ほど、かくれんぼ中に見つかってしまったり、自分の思うような展開にならなかったりして、悔しさが芽生え、次第に本気になっていくんです」

いい大人もつい本気になるのが、かくれんぼ。

IoTで拡がる、本能を刺激する楽しさ。

写真:Nascondino World Championship, Consonno, 2017

遊びにもかかわらず「悔しさ」がモチベーションになり、ハマってしまうのは、かくれんぼ特有のものではないかと高山さんは分析します。ルールが複雑な遊びや、初めてプレーするゲームでは、「負けて悔しい」というよりも「よく分からないけど負けた」と感じるもの。一方で、単純なルールのかくれんぼは、勝つ戦略を立てやすいからこそ「(本当なら勝てたのに)悔しい」と思い、次こそはと思うのかもしれません。

 

「負けたくない」と思うからこそ、本気で取り組んでしまうのが人の性。本気で隠れ、「見つかったらどうしよう」とドキドキする緊張感こそ、かくれんぼの真骨頂なのだそう。どんな人がかくれんぼにハマりやすいのかを尋ねると、興味深い答えが返ってきました。

 

「『見つからない=勝ち』の遊びですが、なぜか目立ちたがり屋の人ほどかくれんぼにハマるんです。たぶん、心のどこかで『見つけて欲しい』と思っていたり、『ここに隠れていました!』ってネタバラシして『おおっ!』と驚かれるのを楽しみにしていたり……。つまり承認欲求が強い人ほど、本気になってかくれんぼをする傾向にある気がしますね」

 

そう語った高山さんの協会プロフィールには「性格は目立ちたがり屋」との言葉が。どうやら高山さん自身のことのようです。隠れる、探す、というシンプルな行為の中の駆け引きが、こうも人を惹きつけるとは、不思議であり面白いもの。

 

「狩猟採集時代の人類は、隠れている動物を探して捕まえていました。これは僕の仮説ですが、その当時に培われた狩猟本能が、もしかしたら人間の中にまだあって、かくれんぼをすることで呼び起こされているのかもしれません。それなら、かくれんぼに惹かれるのも頷けるなって。だから、大人こそ、かくれんぼで思いっきり本能を解放してほしいですね。公園で泥だらけになって遊ぶことに『いい大人なんだから』とためらいを感じている人も多いと思うんです。でも、かくれんぼイベントという枠組みの中なら、社会的な制約から解放されて自由に遊べるはず。まずはイベントを通して、かくれんぼの面白さを再発見する大人を一人でも増やして、いずれ日常で当たり前のようにかくれんぼをする文化が根付いたらうれしいです」

 

大人である自分を忘れて、本気になって遊びに熱中できる。よくある大人の日常とは趣を異にする非日常の魅力が、かくれんぼの魅力のようです。協会では、かくれんぼの楽しさをさらに拡張していくための企みがあるのだとか。

 

「IoTを活用したかくれんぼです。鬼が近づいていることが分かるデジタルマップや、鬼が近づくとアラートが鳴るデバイスを開発中です。あとは、壮大な規模のかくれんぼにも、どんどんチャレンジしてみたいです。実は2021年月末には、無人島でのかくれんぼイベントを予定しています」

かくれんぼの「楽しい」ポイント

1.「見つかったらどうしよう……」の緊張感

2.「いい大人なんだから」を忘れられる解放感

3.狩猟本能を刺激する「隠れる」と「探す」の駆け引き

かくれんぼの魅力を探る記事はここまでです。vol.2の記事では、子供心に帰って大人も楽しむ「鬼ごっこ」の魅力について、一般社団法人「鬼ごっこ協会」に伺います。

Profile

一般社団法人日本かくれんぼ協会

2019年設立。「日本をかくれんぼ大国にする」ことをミッションにかくれんぼイベントの企画・運営を行う。また、かくれんぼ世界選手権に出場する代表選出のための日本選手権を主催。日々、かくれんぼを通じた人々のコミュニケーション促進や地域活性化に取り組んでいる。