2018.06.15

定点観測日記

第3回 和文化スタイリスト・如月まみさんの、今日の着物

各ジャンルで、独特の視点とセンスで活躍する方々。そんな彼らに、あるテーマで1ヶ月間毎日記録をつけていただきます。日々の習慣や気づきから見えてくる、未来の暮らしのヒント。6月にご登場いただくのは、和文化スタイリストの如月まみさん。和文化の総合スタイリスト、コーディネーターとして幅広く活動されている如月さんに、その日のお着物と日記を記録、紹介していただきました。

Profile

如月まみ

和文化スタイリスト。着物のスタイリストとして、多くの著名人のスタイリングを手がける。海外で実績も持つほか、企業とのコラボレーション商品を企画、販売。着付け教室では、これまでに約400人以上の受講者に着付けを伝授してきた。現在は、神田錦町の和食屋〈如月〉の女将としても活躍。その他、着物や三味線、小唄、日本酒に関するコラム連載なども多数執筆している。

https://ameblo.jp/kisaragimami/

2018.5.7(月)

雨だったので、水ものでまとめました。悠々泳ぐ鯉と青もみじの柄の袷の着物、水玉の絞りの帯揚げにブルーの博多献上帯。ゴールデンウィークに旅行した京都の北野天満宮の青もみじが美しかったです。傘も随分前に京都のかさ源さんで購入しました。老舗店は店先には何も並んでいなくて、希望を言うと奥から出してきてくれるというスタイルなのですが、初めて伺い勝手がわからずもごもごしていると「あなたはこれ」とすぐこの傘を出してきて下さり、この鮮やかな色にビックリしましたが(紫の傘を買おうと思っていたので)断固としてこれ、と選択肢を与えてくれなかったので(笑)こちらをいただきましたが、他には見かけず、よく褒められるので今ではとても気に入っています。

2018.5.8(火)

6月で私が女将をつとめる神田錦町如月が3周年を迎えるのですが、その記念のお酒のオリジナルラベルの撮影をしました。私の書籍「酒場のおんな」の共著者yOUが撮ってくれました。着物の八掛けには「お酒飲む人花ならつぼみ 今日もさけさけ 明日もさけ」という都々逸を染めております。この文字は友人で書家のMAAYA Wakasugi が書いてくれました。(最近ではNHK大河ドラマの直虎の文字を書いたりフランスでも活躍中)長襦袢は紗綾形、帯は源氏香と、自分の好きな柄をたくさん身に纏い、気分上げ上げであっという間に撮影は終了しました。

2018.5.9(水)

雨だったので化繊の着物を着ました。色目が秋っぽいかなと思いましたが少し肌寒かったので良いかと。さっぱりと白地の青海波の帯にしました。帯を合わせる時、着物の色、というよりは、着物の柄の中の色と合わせるといいと思います。今日は、花札の柄の着物で、その中の短冊の紫と帯の波の紫を合わせました。花札柄だったので博打つながりで、髪にはサイコロのかんざしをさしました。

2018.5.10(木)

午前中激しい雷雨で、今日もポリの着物かなーと頭の中でコーディネートを考えていたら、わぁ!晴れた!そんな気分で着物の色を選びました。無地なので、長襦袢はちょっと派手目に紫と黒の縞にしました。昨日と同じ青海波の帯を。同じ帯でも着物が変わるとまた雰囲気が変わります。

2018.5.11(金)

常連様が久しぶりにご来店する予定で、「ずっと仕事で忙しかったから癒されたい!」とご来店を心待ちにしているメールをいただいたので、どんな着物でお迎えしようか前日からずっと考えていました。優しい色の着物にするか、それともスパッと私らしい感じにするか。お客様を楽しませるのも癒すのも、まずは自分が元気で上機嫌で楽しくなくてはできないと思っています。

そこで仕立て上がって届いたばかりの単衣のお召しを選びました。初めての着物に手を通す喜び!ウキウキです。出来上がったら合わせる帯を大体決めていたのですが、鏡の前で合わせるとちょっとイメージが違う。それも着物の面白いところです。あれこれ迷って今日はこの刺繍の帯にしましたが要研究、夏前の単衣の時期にまた何度か合わせてみようと思います。

2018.5.12(土)

平日は、毎日着物を着ることにどうしても追われてしまうので、週末にゆっくり整理したり片付けたりしています。壁一面天井まで作り付けの棚にしていて、そこにびっちり帯を収納しています。季節が終わった帯はどんどん上の方へ、藤の帯もしまいました。来年の出番の頃はどんなかなーと思いながら、順繰り出したりしまったりも、また楽しいのです。

2018.5.13(日)

月曜日に発売の週刊ポストに[美人女将が迎える小料理店]とモノクロページで紹介していただきました。その時のコーディネートがこちらです。モノクロでは着物の色は写りませんが、身につける色で、顔映り、心に与える作用も変わってくると思うので、女優さんタレントさんにスタイリングをして差し上げる際も、色選びを大事にコーディネートしています。私はよく無地を好んで着ていますが、持っている中でも特に気に入っている鶸色(ひわいろ)に、鱗柄の帯のコーディネートです。

2018.5.14(月)

半年前から書道を習い始めて、その先生が初めてお店にご来店下さることになり、前から何と書いているのかなーと疑問だったヴィンテージの着物を選びました。

波の模様の帯を銀座結びで。

この文字は[鶴]という字だそうです!今までわからず着ていましたが、またコーディネートが広がりそう。亀の帯なんかあったら、鶴亀でおめでたい席にも良さそうですね。

2018.5.15(火)

袷の着物なんて着てられない!というくらいまた急に気温が上がりました。一応5月一杯は袷の着物、と昔から決まっていましたが、年々気温が上がりここ数年は、4月でも5月でも暑い日は単衣を着たり、また気温が下がれば袷にしたりと臨機応変に調整しています。この着物は胴抜きと言って、袖と裾だけ袷、胴は裏地なしで、去年仕立ててもらいました。今後は胴抜きの仕立ての方が重宝しそう。まだ早いかなと思いましたが、花屋さんの店先で見かけたので、鉄線の帯を選びました。クレマチスとも呼びますね。花言葉を調べてみたら、心の美しさ、そして甘い束縛!着物はある意味自由を制限された拘束着。でも毎晩、着物を脱ぐ時の解放感が快感。まさに甘い束縛だと思いました。

2018.5.16(水)

暑い!東京は気温28度を越えました。今日も単衣の着物です。友人がディレクターを務めるブランドのワンピースが和風にも見える柄で素敵だったので生地を分けてもらい着物に仕立てました。全くシワにならないので旅先でも重宝します。ちょっと気が早すぎるかなと思いましたが、満を持して今年初、紫陽花の帯&カタツムリの帯留めを。このコーディネートをするのを楽しみにしていたんです。これから花の盛りまで何度かするつもりです。今日は女性のお客様もいらっしゃるので(毎日ほとんど男性のお客様ばかり)細かい部分に気を配りました。女性は、帯留めや帯揚げなど細かい部分をよく見て下さる。だからやり甲斐があります(笑)。そんな女性に対し、男性はざっくりと全体の雰囲気で捉えているようです。男性と女性で視点が違うのが面白いです。

2018.5.17(木)

今日も単衣の着物と帯です。準備が整わないうちに単衣の気温に突入してしまったので、週末に入れ替えをしなくては!この着物は去年仕立てたものなので、数回しか着ていない、まだ自分にとって新鮮な着物です。この色、子供の頃から大好きで、部屋中の小物の色をこの色に統一していました。この色を身につけるといつもそのことを思い出すのです。

2018.5.18(金)

湿度が高く蒸し蒸ししていたので、風を感じるコーディネートをと思い、着物のブルーを海に見立て、帆船を浮かべてみました。好評でした!

2018.5.19(土)

船関連のアイテム、こんなものも持っています。錨はアンティークのブローチで、帯留金具を付けました。シルバーのかんざしは、波にカモメ。以前、可愛いカモメのかんざしを京都に挿していったら、カモメがどこかに飛んでいってしまい、とてもショックを受けました。接続部分が動く凝ったデザインの古いかんざしだったので、今でも悔やんでいます。帯留もかんざしも、気に入ったものほどよくなくしてしまいます。

2018.5.20(日)

16日の写真では見ずらくなっていたと思うので、紫陽花とカタツムリのコーディネートをアップで。シルバーでできた帯留めは、葉っぱの小さな穴やカタツムリの目まで、細かく表現されています。立体感があるので、テーブルなどにぶつけたりしないように、身につけている時は緊張感があります。わずかな期間のお楽しみです。

2018.5.21(月)

袷の着物を着られる期間もあとわずかなので、持っている着物の中でも上位に好きな着物を選びました。少し体調も悪かったので、そういう時や気分が落ちている時も、大好きな着物を纏って、身につけるものから元気をもらっています。この着物には、小唄の歌詞が染められています。帯は博多献上帯です。帯締めはKEITA MARUYAMAキモノで商品製作に関わっていた時に作ったお気に入りのひとつです。

2018.5.22(火)

祖母からのお下がりの着物です。洋服っぽい印象の着物ですが、この着物はモダンにコーディネートせず、ちょっと野暮ったく合わせるのが自分には似合っているような気がします。日記を見返すとついこの前もこの帯が登場していました。帯の所持量は多い方だと思いますが、よく締めるのは大体決まってきてしまいます。この機会に普段あまり締めない帯も登場させたいと思っているのですが。

2018.5.23(水)

小雨降るしっとりしたお天気だったので、傘と柳の帯にしました。着物をほどいて仕立て変えた名古屋帯です。着物は竹の縞ですが、雨にも見立てました。暗いお天気の日は、気持ちをぱっと上げたいので、いつも明るい色の着物を選びます。

2018.5.24(木)

この着物は、漫画家の安野モヨコさんが描いて下さった私の似顔絵の着物を真似て、白生地から染めたオリジナルの着物です。銀通しといって、所々に銀糸が織り込まれている職人技の逸品です。帯も私がデザインしました。前帯には牡丹、お太鼓には獅子。敢えて白地に白の刺繍で、目だけ黒を入れました。だいぶ使い込んでいる思い出の品です。

2018.5.25(金)

新橋芸者衆による東をどりを観に行きました。一緒に行った友人が紫陽花の着物だったので、合わせて私は紫陽花の帯にしました。演舞場の客席や、道すがら「きれいな色!」と何人かにお声をかけていただきました。

2018.5.26(土)

今日は午前中国立劇場で文楽を鑑賞。そこから新橋演舞場へ移動して2度目の東をどり鑑賞でした。無地の着物ですが、長襦袢はオリジナルで型から掘った斜め縞です。貝殻の模様の綴れ帯にヒトデのブローチを帯留め代わりにしました。普段のコーディネートはインパクトを1番にしていますが、踊りの会や古典芸能の会の時は地味なコーディネートになってしまう私です……。

2018.5.27(日)

所属する長唄杵弥会のお浚い会でした。単衣の無地に源氏香の帯です。袷の方も、単衣の方も、もう絽の帯や、絽の襟の方も。年々気温が上がり、昔からの決まりごと通りにいかない気候で、合わせ方に困っている方、たくさんいるだろうなと思います。

2018.5.28(月)

やっと単衣の着物を全部出しました。でもあっという間に夏物へ移行なんだろうなぁ。この着物にはいつも水色の博多帯を合わせていたのですが、鏡の前で合わせたら今年はなんだかちょっと違うようなので、この帯になりました。帯締めも迷ってこれになりましたが、この色を選んだことが意外で新鮮でした。

2018.5.29(火)

道で紫陽花があまりに綺麗だったので、思わず自撮り。今日の帯は、元はアンティークの錦紗縮緬の長襦袢で、染めも団扇模様もあまりに美しく、長襦袢で下着として着るだけではあまりに勿体なく、帯に仕立て変えてもらいました。古いため生地が弱いので2部式帯にしました。大事に大事に締めています。

2018.5.30(水)

雨だったので化繊の着物にしました。傘の刺繍が入った名古屋帯で、母が選んで買ってくれました。母とは着物の趣味が全然違って、正直あまり好みではないのですが(笑)そういうものをミックスするのもたまにはいいかなと思っています。お客様からこれは何という模様なの?と聞かれました。鱗柄の帯や着物を身につけると必ずといっていいほど尋ねられます。それだけ皆さん目にしたことのある印象的な古典柄なのではないでしょうか。

2018.5.31(木)

もう最後だと思い、もう一度紫陽花帯とカタツムリの帯留めを選びました。斜め縞の単衣の着物を雨に見立て、所々に絞りのある帯揚げは、雨の滴に見立てました。

2018.6.1(金)

仕事終わりに友人達と鶯谷の知る人ぞ知るお店「よーかんちゃん」で合流。一緒に写っているのがよーかんちゃんです。電飾が以前より少なくなった気がして尋ねるとやはり半分くらい処分したそうです。これでも!(笑)着物は20年ほど前に目黒の故池田重子さんのお店で、母が選んでくれたものです。その時はあまりピンときてなかったのですが、数年前からはお気に入りになりました。好みも変わりますね。この空間には馴染んでいますか

2018.6.2(土)

私は神楽坂に住んでいて、近所を歩いていてふと、着物が映える素敵な場所がたくさんある!と今更ながら気づきました。もっと早くからあちこちで写真を撮ればよかった。ちょうどカメラマンの友人yOUが家に遊びに来る約束だったので、赤城神社裏の素敵な花屋さんの前で撮ってもらいました。

この時期、紗袷の着物風に、紗の着物の下にこの季節の柄が華やかに染められた単衣の長襦袢を合わせて楽しみます。半襟は楊柳です。わずかな期間のお楽しみ。

2018.6.3(日)

骨董市を巡ったりして、長い時間をかけて探し集めたお気に入りの夏小物です。左上の団扇の帯留は、おそらくかんざしのパーツで、壊れていたものを買って自分で金具をつけました。時計回りにその隣が、シルバーの作家さんに特注した雪の結晶で、冬にもしますが、夏の暑い日にも目に涼しいようにと身につけます。その下が漆塗りの波に千鳥。貝殻でできた鯉。その左隣は昔のガラス玉に帯留金具をつけました。団扇のかんざしは、アンティークかんざしの特徴で、飾りの部分が動いて角度が変わるように細工されています。その部分が古いため脆いので、大事に大事に、めったに使いません(笑)。

2018.6.4(月)

手持ちの中でもかなりお気に入りの楊柳の着物です。年に1〜2度しか出番がなく、貝殻の帯(5/26に着用)を合わせたり、鯉の帯で、滝登りに見立てたりするのが定番ですが、今年は岩とカモメを合わせてみました。(羽織を脱いだ時にお太鼓が崩れてしまったようです)波しぶきが目に涼しげです。

2018.6.5(火)

朝顔の刺繍の付け下げに、背中に金魚の刺繍が入った羽織を合わせました。かなり寄らないと金魚がわからないので、後ろ姿はあきらめました。これまた今更思いついたのですが、この日記と連動させてインスタやブログに、他のショットも掲載すればよかった!

2018.6.6(水)

家々の屋根(着物)の上に、飛行機(羽織)を飛ばしてみました。風を感じますか⁈

2018.6.7(木)

よろけ縞の着物に、柳にツバメの絽の帯です。笹模様の絽の羽織りを合わせました。古い引き抜きの帯だったので、締めやすいように、自分で切って、お太鼓の形を作ってホチキスで留めました。

 

その日のお気持ちと天候に合わせて、仕立て(袷や単衣)や素材、色、柄、小物、洋風・和風、現代・古典、更には「見立て」などの組み合わせを自由に変えていく、如月さんの毎日をご披露いただきました。着物の世界は決まりが多く難しいと思われがちですが、自分らしさを大切にし、自由に組み合わせることで、より楽しく深めることができると学びました。着物をはじめとした日本の文化を幅広く嗜むことで、未来の新しいファッションのあり方を見つけられるかもしれません。   

(未来定番研究所 安達)