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2018.07.02

次世代の大人ファッションとは。<全2回>

第2回 小岐須節子さんのファッションから見えてくること。

大人世代のファッションリーダーに聞く、成熟した大人スタイルが生まれるまで

ファッション、グルメ、旅行などアクティブに楽しむ大人世代が増加しています。新しい価値観の大人世代が生まれた背景には、1960年代以降に花開いた若者文化がありました。今回は『素敵なあの人の大人服』に登場する大人世代のファッションリーダー・小岐須節子さんにお話を伺い、大人世代のファッション観に迫ります。

小岐須節子さん

 

F.I.N.編集部

ファッションに初めて興味を持ったのはいつ頃ですか?

小岐須さん

小さな頃から洋服が好きで、小学生の頃には自分で絵を描いて、ご近所のお裁縫の得意な方に誂えていただくこともありました。例えばブルーのイニシャルが入ったジャケットスーツを作っていただいたり、機械編みが得意な奥様には、ダブルのジャケット風のカーディガンを編んでいただいたり。母がワンピースを妹とお揃いで作ってくれたこともありました。

F.I.N.編集部

洋服が好きになったのはご両親の影響ですか。

小岐須さん

両親が服に特別な興味があったということもありませんでしたけど、百貨店が好きだったのでよく一緒に出かけていました。

F.I.N.編集部

ご自分で洋服をデザインするときに、おしゃれの参考にしていたものはありましたか。

 

小岐須さん

特に参考にしていたものはなく、アメリカの映画やテレビの『パティ・デューク・ショー』や『パパ大好き』は好きで観ていたから、もしかしたらそれが印象に残っていたかもしれません。

 

F.I.N.編集部

高校生の頃はミニスカート旋風の時代でしたよね。

 

小岐須さん

そうですね。その頃は、あまりにお洋服が好きで、洋裁を習い簡単なものは自分でも作っていたんです。だから、部屋には大きな鏡台とミシンとベッドだけ。芳村真理さんがテレビで着ていたお洋服を真似して、自分で作ることもありました。

F.I.N.編集部

20代はどんなファッションを?

 

小岐須さん

それが短大を卒業してすぐ21歳で結婚し、22歳と23歳のときに男の子を出産したので、家事育児に追われおしゃれどころではありませんでした。その頃によく着ていた白いジャンプスーツや赤いスーツは、結婚前に海外の雑誌を参考にして誂えたものです。

21歳(6の場合:22歳)の頃。撮影したのは、カメラが趣味のご主人。

F.I.N.編集部

ちなみに、旦那様とはどちらで知り合ったんでしょうか。

小岐須さん

19歳の頃、毎日新聞が主催した「南太平洋洋上大学」に参加したんです。クルーズ船で太平洋を半周しながら、そこで様々なことを学ぶプログラムだったのですが、そこに早稲田大学の学生だった主人も教授と一緒に参加していました。だから、出会ったのは海外、船の上です。その後、結婚したのですが主人はまだ大学にいたので、学生結婚だったんですよ。

 

F.I.N.編集部

それにしても、男の子の年子とは大変でしたね。

小岐須さん

おむつも当時はさらしでしたから、二層式洗濯機をベランダに2台並べて1日中、洗濯をしていました。母が手伝ってくれたのでどうにかなりましたけど、その頃、何を着ていたのか記憶がないくらい(笑)。でも、ジーンズは好きでしたから、Tシャツやブラウスにジーンズだったと思います。それから今日、着ているセリーヌのセーターは、25歳の頃、主人が買ってくれたもの。今でも大事に着ています。

25歳のときにご主人からプレゼントされたセリーヌのカーディガンは、今でもお気に入りの一枚。

F.I.N.編集部

30代になるとお子さんも小学生から中学生になり、子育てもひと段落ですね。

小岐須さん

自由な時間ができたので、テニスを始めたり、ジャズダンスを習ったり。編み物の先生を家に呼んで、5、6人のお友達と編み物を習い、ワンピースや息子のカウチンセーターを編んだこともありました。30代後半になると、世間は好景気で周りのファッションは派手になったけれど、私は昔からベーシックなファッションが好きだったので、そういうものを百貨店で探して着ていました。今でも好きなのは、〈アニエス・ベー〉と〈ヨウジヤマモト〉。それからジーンズですね。ジーンズは流行があるので、その時代に合ったものを購入しています。

F.I.N.編集部

その頃、ファッションの参考にしていたものは?

小岐須さん

百貨店やお店に出かけては、自分の好みに合うものを探していました。それに、主人もファッションが好きなので、彼の影響が大きかったと思いますね。結婚前から一緒に買い物していましたし、30代、40代の頃は彼の海外出張が多かったので、お土産に靴やバッグをたくさん買ってきてくれました。彼が帰国すると友人が「今回のお土産は?」と見に来ることもあったんですよ(笑)。ある時、主人が会社から電話をかけてきたことがあったんです。彼の後輩が素敵な服を着ていたのでブランドを聞いたそうで「昼休みに出ておいで。買いに行くから」と。彼が私の服を見立ててくれたり、私が彼の服装のアドバイスをしたり。ファッションはいつでも夫婦共通の話題です。

55歳の誕生日にご主人と。誕生日は毎年、家族でパーティを開く

F.I.N.編集部

ご主人はジェームス・ディーンを観て育った世代ですよね。

小岐須さん

そうですね。だからアメリカ文化の影響もあるかもしれません。今でも、ジェームス・ディーンが着ていたような赤いスウィングトップを買ってくることもあります。

F.I.N.編集部

お子さんが独立された40代以降は、どんなファッションを?

小岐須さん

好きなテイストはいつでも同じなので、変わらずベーシックです。ブランド関係なく素敵なものを見つけたら買うので、お嫁さんから「それは若い子に人気のブランドです」と教えてもらうことも。新しいものと昔から大切に着ているものを組み合わせて、今らしいスタイルにして楽しんでいます。それから、以前から好きだった着物を改めて勉強したり、息子のお嫁さんとショッピングに出かけたり。彼女がファッションブランドをしているので展示会にお邪魔することもあります。ついこの前、お気に入りのピアスを片方失くしてしまったので、ネックレスに仕立て直しました。これはいずれ、お嫁さんたちに引き継ぐつもりです。

F.I.N.編集部

最後に、これからどのようにファッションを楽しんでいこうと考えていますか?

小岐須さん

食事会、パーティーなど外出する機会も多くありますし、このまま夫婦ともに元気でいられたら。ファッションを楽しむには健康が大事ですから。息子夫婦も含め、みんな健康でいられたらそれが一番幸せですね。

お気に入りのアクセサリー。ネックレスは、ピアスをリメイクしたもの。

取材を重ねるにつれて感じたのは、私達はまだまだお客様のことがわかっていないということでした。今回スポットを当てた、一般的にはシニアと分類されてしまう世代の方々がその筆頭。一人ひとりを見ずに年齢だけでくくって「シニアってこんな感じ」と勝手な固定概念で見ているのではないかと思わせられるようなお話がたくさんありました。

新しい大人世代は、ツイギーのミニスカートがお手本だったり、お見合いよりは恋愛でパートナー選びを行った人たち。そういった経験を重ねた大人が選ぶ装いは、想像以上にうんと先の未来を感じるものでした。今回お会いした小岐須様のシルバーヘアを活かしたスタイルの何と素敵なことか。そのお姿は今まで歩んでこられた人生を感じさせるもので、そんじょそこらの女子には真似できない魅力に溢れています。そしてこんな人生の先輩がいると、歳を取るのも案外悪くないなと心から思えたのです。

人生100年時代。特に女性は長生きです。私たちの明るい未来のためにも、大人の女性の新しい価値観をちゃんと知って、それにフィットしたおしゃれのお手伝いができたらいいですね。

(未来定番研究所 前川)