2019.09.05

街中を社員食堂に! 「green」が手がける食の働きかた改革

働く時間の中で、ランチタイムは、心身をリフレッシュして午後の生産性を高めるためにも重要です。近所の飲食店が社員食堂になるサービス「green」は、ランチ代を会社が福利厚生として一部負担し、社員は近隣の飲食店を社員食堂のように使えるというサービス。「green」加盟店が提供するメニューは「健康・ヘルシー」というコンセプトに則っており、社員の健康維持にも一役買っています。そこで、「green」を手がける株式会社togoの代表・田中勇樹さんに話を伺うとともに、食を通した働きかたの未来を探ります。

渋谷区のカフェ<リズム スタンド>の、greenユーザー向けランチメニュー例。野菜がたっぷりでヘルシー。

企業の福利厚生で、毎日のランチをサポート

FIN編集部

2019年2月にローンチした「green」ですが、現在のサービス内容について教えてください。

田中さん

企業の福利厚生の一環として「green」を利用する企業の社員は、オフィス近隣の飲食店を普段より安く利用することができるサービスを運営しています。飲食店とメニュー開発を行い、「green」ユーザーだけのオリジナルメニューも展開しています。企業が社員の健康のことを考えたら、安くて健康的な食事を提供する社員食堂を設置するのが一番ですが、総工費や運営費は約1億円が必要と言われおり、運営コストを考えたら、企業側にかなりの負担になります。しかし、福利厚生として食事代の一部負担するこのサービスなら、100分の1のコストで食事補助が実現できます。企業側の負担が少なく、ユーザーもいつものメニューが安く食べられて満足度も高い、両者にメリットのあるサービスなんです。現在、加盟店舗は、渋谷、外苑前、恵比寿、六本木を中心に300店舗、都内1,500店舗、全国5,000店舗が加盟しています。

「green」のアプリ画面。greenを導入した企業の社員は加盟店舗で、安くランチを食べることができる。

FIN編集部

契約している企業はどんな職種が多いのでしょうか。

田中さん

ITや不動産などのスタートアップ企業や大手など、働きやすい環境を重視する企業にご利用いただいています。特にスタートアップの企業は人材採用の場面で、福利厚生に力を入れているとアピールする材料にもなります。また、意外なところでは、地方に本社があり、東京に支社がある企業にも喜んでいただいています。本社では立派な社食があっても、東京に転勤になったら、昼食代が高い。その不平等を「green」の食事補助で解消できたそうです。

ランチのコミュニケーションで、職場環境を健康に

FIN編集部

そもそも、このサービスを思いついたきっかけは?

田中さん

僕は高校時代、福岡の強豪校でサッカー漬けの日々を送り、大学進学で上京してからは居酒屋でバイトをしていました。福岡にいた頃、父親の仕事の関係で、飲食店のカリスマオーナーを間近に見ていたので、その憧れもあって、在学中に仲間と居酒屋を立ち上げ、1年以内で都内に7店舗、100人の従業員を束ねるまでになったんですが、怖いもの知らずの学生だったので、やはり頓挫してしまって。

FIN編集部

大学在学中に起業した経験があったんですね。

田中さん

そうなんです。それで起業への夢がさらに強くなりました。大学卒業後は、まず社長の話が聞ける現場に行こうと、中小企業向けコンサルティング会社に入社し、法人営業を担当しました。勢いのあるベンチャー起業だったので、毎日多忙で同期とも顔を合わせる時間もなかったのですが、ある時、会社がランチタイムにお弁当をオーダーするようになったんです。弁当代の半額を会社が補助してくれたんですが、金銭面以上に、休憩スペースに同期や他部署の人、普段は交流がない人も集まって情報交換ができるようになりました。昼食代が抑えられるだけでなく、相乗効果が生まれたんです。これだと思いました。

greenを運営する株式会社togoの代表取締役CEO田中勇樹さん

FIN編集部

飲食店を社食にするアイデアはどこから?

田中さん

学生時代から飲食店との繋がりがあったので、起業するなら飲食店を助ける事業をしたいという思いがありました。法人営業の経験を生かして、それが実現できるソリューションはないかと考えたときに、福利厚生や健康経営志向が高まっていたので、いつものランチに食事補助をするサービスがあったらいいのではないかと。東京では、ランチにサラダをつけると1,200円を越えてしまいます。食事補助があったら、気軽に同僚や後輩を誘うこともできるし、いつものメニューを安く食べられて、社員の満足度も高まります。

FIN編集部

健康面を気遣うサービスにしたのは、サッカーをやっていたことも関係がありますか?

田中さん

僕の経験上、身体に気遣っているときは、他のことにもモチベーションが高まりますから。それに、健康経営には2つの意味があると思っています。1つは、身体的な健康のマネージメント。2つめは、精神的な健康です。「green」を使って、社員が食事でコミュニケーションすることで、組織やプライベートの問題も解消でき、心の健康も支えられると考えています。

FIN編集部

「green」に加盟することで、飲食店にはどんなメリットがあるのでしょうか。

田中さん

飲食店がランチ営業をする理由は、夜の時間帯にお客様を取り込みたいから。特に部署やチームでの飲み会、送迎会など、まとめて決済ができるとさらに嬉しいわけですね。そこでユーザーが「green」を夜の宴会に利用したらドリンク一杯無料などの特典をつけたり、幹事の方に向けてお店選びのコンシェルジュ機能をつけたりと、夜の時間帯への呼び込みになる機能を充実させる予定です。また、このメニューには女性に人気があるなど、「green」に加盟することで、飲食店が性別や年代などユーザーのデータを集めることもでき、メニュー開発の参考にすることができます。

渋谷のカフェ<テオ カフェ>のgreenユーザー向けランチメニュー例。新鮮なサラダでしっかり野菜を摂取。

リモートワークが増えるとランチはどうなる?

FIN編集部

サービスがより拡大すると、飲食店にも利用者にもメリットが高まるというわけですね。今後の展開は?

田中さん

オフィスで昼食を済ませたい方向けに、テイクアウトでも利用できるサービスをスタートしました。また、来年には一般ユーザーに向けて、ランチのサブスクリプションサービスも始める予定です。例えば、月額5,000円で600円のランチを10回利用できるというもの。アメリカでは「ミールパル」などのサービスがあるのですが、それに近いものを東京に落とし込んでいこうと思っています。

FIN編集部

最後に5年後の未来、働き方と食の関係はどのように変化していると思いますか?

田中さん

すでに一部の企業が検証を始めていますが、リモート出社がより一般的になると思います。現在の通勤ストレスはかなりのものなので、営業職以外は出社しなくてもいい世の中になれば、生活が豊かになる人は増えるでしょうね。また正社員より、業務委託や副業も増えるだろうから、福利厚生を削る企業も増えてくるかもしれません。僕らのサービスも、「Uber Eats」のようなデリバリーに福利厚生をつけるサービスにシフトしているかもしれませんね。より効率的な働き方になり、それをサポートするサービスも変化していくでしょう。

green

http://lp.green.work/

編集後記

「あなたの健康の為に、サラダ分をお出しします。」と言ってくれて、昼食代をサポートしてくれる会社は、とても人間的な会社だと感じます。

「飲食業」と「働く人達」と「会社」をハッピーに繋ぐgreenさん取り組みは、

これからの未来の働き方と呼応して、益々求められるのではないでしょうか。

働きかた改革も、そこで働く人達の真の「幸せ」を考えて、柔軟に対応する時代が訪れていることを感じました。

(未来定番研究所 出井)