日本のしきたり新・定番。<全10回>
2018.08.17
思いを伝える、贈り物の選び方。<全8回>
「お中元」や「お歳暮」といった贈り物はあまりしない方も増えつつありますが、その伝統は今なお続く大切な文化です。一方で、手土産やお土産など、日常の何気ないシーンに贈る気軽なプレゼントの形「カジュアルギフト」の需要が高まっているのも事実。実際に人々は、どんな場面で、どんな想いからものを選んでいるのでしょうか?この特集では、自身の活動から人々に刺激や感動を与えている方たちへ聞き取り調査をしてみました。
今回お話を聞いたのは、〈SUNSHINE+CLOUD〉デザイナー兼オーナーの高須勇人さん。
高須勇人/〈SUNSHINE+CLOUD〉オーナー
1964年生まれ。カリフォルニア州ウエストモント大学卒。代官山に「G.O.D.」、葉山に「SUNSHINE+CLOUD」「HAYAMA GUESTHOUSE」、奄美大島で「PARADISE+INN」及び「PARADISE STORE」を運営。
贈りたい人:〈くるみの木〉オーナーの石村由起子さん
贈りたいシーン:久々の再会から数日後
贈りたいもの:お花
選んだ理由
ちょうど、この取材の前の週に〈くるみの木〉のイベントに伺いました。20年以上のお付き合いになる石村さんと久しぶりにお会いして、ゆっくり食べたり飲んだりしながらいろんなお話をしました。彼女、最近少し嫌なことがあったみたいで、ちょっと元気がなかったんですね。だからイベントのお礼も兼ねて、何か元気になるようなものをプレゼントしたいです。僕自身植物が好きなのですが、花屋さんに行って花を選ぶということはなかなかできなかったんです。でも、自分のお店で花を扱うようになってから、とても気軽に贈ることができるようになりました。お店でも、スタッフの誕生日には花を贈りあっています。花束をもらうことって実は少ないから、もらうと嬉しくなるんです。花をもらったら、飾る花瓶や環境を整えるし、花の種類によっては1週間くらい楽しむことができますよね。そうやって花を飾る“習慣”までプレゼントできたらいいなぁと思っているんです。
石村さん自身、庭に生えている野草を使ったアレンジがとても上手で、しっとりした雰囲気を作り出す名人なんです。だから僕からのプレゼントは、それとは雰囲気の違う、ドーンと「花」をメインにしたものを贈りたいです。元気になる花といったら、季節柄向日葵がいいですね。黄色と緑をメインに、夏を感じさせるものにしてみました。
高須勇人さんが大切にする贈り物の条件
・「この人だから」「この季節だから」という、ひと手間。
・形や心に残るもの。
僕は「プレゼント」と「ギフト」は大きく違うと思っているんです。本来の意味は違うかもしれませんが、プレゼントには現在(Present)という意味もあるように、いま一瞬のものという気がするんです。僕自身は人に贈るものは、一瞬だけの「プレゼント」ではなく、「ギフト」を贈りたい。それには、儀礼的に贈るのではなく、この人にはこれを贈りたいとか、この季節だからこれが喜ばれるだろう、という手間を惜しまないことが大切です。その人のことを、ほんの少しの時間でも思い浮かべて、考えて選ぶ。その時間こそ、相手にとってもうれしいギフトになっていくと思います。そして「残る」というのは、物質的になのか、心の中に残るものなのか、そのどちらもあると思います。親からもらう高級な時計は一生残る宝物になるでしょうし、「あの時あんなものをもらったなぁ」とか「あの時落ち込んでたけど、あの人にもらったものでちょっと元気になったなぁ」というように、心に残り続けるものもありますよね。相手に「残る」贈り物はなんなのか。それを探すためにも、選ぶ時に相手を思い浮かべるちょっとした時間が何より大切だと思います。
次回は、スタイリストの大橋利枝子さんにご登場いただきます。
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