F.I.N.的新語辞典
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2018.04.02
未来を仕掛ける日本全国の47人。
毎週、F.I.N.編集部が1都道府県ずつ巡って、未来は世の中の定番になるかもしれない“もの”や“こと”、そしてそれを仕掛ける“人”を見つけていきます。最初に向かったのは、秋田県男鹿市。山伏の坂本大三郎さんが教えてくれた、〈里山のカフェ ににぎ〉を営む猿田真さんをご紹介します。
この連載企画にご登場いただく47名は、F.I.N.編集部が信頼する、各地にネットワークを持つ方々にご推薦いただき、選出しています。
〈里山のカフェ ににぎ〉から、血の通った地域の営みを生み出す人。
田園風景にぽつんと佇む古民家が何とも情緒あふれる〈里山のカフェ ににぎ〉。推薦してくれた坂本さんは、「代々受け継いできた土地でカフェと民宿を営んでいることや、そこでミュージシャンや地元の大学と協力しながら数々の催しを行い、地域の情報を発信したり、新しい文化を創出しようとしたりしているところに、未来の可能性を感じる」と太鼓判を押します。オーナーの猿田さんに早速お話を聞いてみましょう。
F.I.N.編集部
猿田さん、こんにちは。
猿田さん
こんにちは。
F.I.N.編集部
〈里山のカフェ ににぎ〉のある男鹿市の真山地区ってどんなところなんですか?
猿田さん
地図で言うと、男鹿半島の真ん中あたりに位置しています。海にも山にも近く、鰰(はたはた)寿司や魚醤、味噌や漬物等の保存食などの食文化も特徴です。
F.I.N.編集部
海も山も……、豊かな土地なんですね。文化的にはいかがですか?
猿田さん
伝統行事や四季折々の暮らし方を通して、人や自然の厳しさと優しさに触れられ、生きる力を学べるところも魅力です。伝統行事といえば、真山地区は古い時代から信仰の厚い霊場としても知られ、男鹿半島を象徴する“なまはげ”の文化があります。
F.I.N.編集部
「悪い子はいねがー」のなまはげですね。
猿田さん
そうです。今も、大晦日の晩にはなまはげが家々を廻りますよ。地元の人たちは“神の使い” としてなまはげをもてなし、一年の厄を払ってもらいます。
F.I.N.編集部
なまはげはありがたい存在として畏れられているのですね。古くからの風習が根付くこの土地で、どうして〈里山のカフェ ににぎ〉を始めたんですか?
猿田さん
高校卒業後、関東での9年間の暮らしを経て、地元である男鹿半島に帰ってきました。帰郷後に就いた、介護や不動産関係の仕事で、高齢化や人口減少、空家の増加やインフラの老朽化を目の当たりにし、地元の将来を案じるようになったんです。観光地としても魅力を有する土地であるにも関わらず、それを活かしていく人材が不足していることを強く感じました。しかし、1人の力では問題解決はかないません。そこで、自分のように帰郷した若者や移住者を迎え入れる、交流の場があったらいいのではと考えました。まずは、自宅である古民家を活用して何かできることはないかと模索していたところ、子供の誕生と東日本大震災というタイミングに重なり、友人や家族の協力を得て〈里山のカフェ ににぎ〉をオープンしました。
F.I.N.編集部
坂本さんは〈ににぎ〉での多様な催しにも未来の可能性を感じるとおっしゃっていました。そこにはどんな思いが込められているんですか?
猿田さん
古い文化と新しい文化、地元の人と他所の人、年配者と若者たち、いろんな人やものが交流できる機会にしたいと思っています。公共の事業としてではなく、地域に住む民間人の手で小さな営みを継続して起こしていけるような流れを作れたらいいですね。
F.I.N.編集部
なるほど。そのために、猿田さんが今一番力を入れていらっしゃることは何ですか?
猿田さん
人は生きている限りどこに行っても人間関係や自然の力と向き合わなければいけないもの。人生は一度きりだと思うので どうせなら楽しい生き方を目指したいですよね。日頃から心身を鍛えて好奇心や生きる術を身につけることが大事だと考えています。時代や場所に関係なく、自分たちの先輩やご先祖様たちもそうやって生きてきたはずなので、目新しいシンポジウムに行くよりも、世代を超えた知見が学べる場、例えば、お年寄りしか集まらないような集落の行事にもできるだけ参加して、お話に耳を傾けるようにしています(笑)。
F.I.N.編集部
土地も人も“古き”を重んじ、“新しき”を切り拓くという猿田さんの姿勢を感じます。猿田さんは、都市と地方の今の関係について、どうお考えですか?
猿田さん
僕はよく行政や組織、経済のあり方を人の身体に例えます。身体には部分ごとに役割があって、それぞれのバランスが崩れると病気や死に至ることがありますよね。それと同じように、日本も今は都市部に人口が集中しすぎていることでバランスを崩し、高度経済成長期に整備されたインフラが末端から壊死している状態だと思うんです。また、人間は指先で道具を使ったりしなければ生きていけないように、太い血管だけでなく、指先へ繋がる毛細血管も大切。かつては、小さな商店街や集落の営みがあったからこそ、国の経済も豊かだったのかな?と思います。
F.I.N.編集部
なるほど。これから〈里山のカフェ ににぎ〉をどのような場として発展させていきたいですか。
猿田さん
今は都会と地方、相互のバランスを見直さなければいけないターニングポイントです。〈里山のカフェ ににぎ〉は、皆がそれに気付き、何かを変えていく小さなきっかけを世の中に提供できたらいいですね。
F.I.N.編集部
地方への移住に興味がある人も多いと思いますが、何かアドバイスはありますか?
猿田さん
移住は結婚のようなもので、よく考えることも大事だし、時には勢いも大事かな(笑)。まずは自分が住んでみたい場所と、その窓口となる人を見つけ、話を聞いてみることをオススメします。その土地で今どんなことが求められているのかをヒアリングし、その中で自分に適した仕事、できそうなことを見出せれば、双方にとって良いと思うので。僕もそういう方がいらした際は、できるだけ対応させていただきたいと思っています。いつでもお待ちしておりますよ。
F.I.N.編集部
猿田さんの果たしていく役割は、これからさらに大きくなっていきそうですね。今後の活動も楽しみにしています。ありがとうございました。
里山のカフェ ににぎ
〒010-0685 秋田県男鹿市 北浦真山塞ノ神下14
TEL:0185-27-8422
定休日:水曜日、木曜日(臨時休業日あり)
編集後記
地元に帰りたいけど……、と思う方が増えているように思います。猿田さんは、ナマハゲの聖地である真山神社がある真山地区の青年団員であり(ナマハゲの中の人)、ご先祖から代々受け継いできた土地に帰り、周囲を巻き込みながら、地元の良さを一緒になって学んでおられます。地元の方に共感いただきながら、根を下ろしていかれているというのは、理想的に思いました。
(未来定番研究所 安達)
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