2021.12.24

目利きたちと考える、季節の新・定番習慣。<全10回>

第8回| 「紅葉狩り」は、狩って食べられるもみじパークへ。

日本には、年間を通して伝統や文化に根付いた行事や習慣が多く存在します。中には、他の行事と比較すると、人々の関心が薄まりつつある行事も少なくありません。「未来定番研究所」では、そうした伝統行事を未来に繋いでいくためにも、各界で活躍している方々にお話を伺いながら、新しい行事や習慣の在り方を探っていこうと思います。

 

第8回目にお招きしたのは、もみじやかえでの葉っぱを研究し、健康・美容に役立つ商品を開発している〈もみじかえで研究所〉代表・本間篤史(ほんま・あつし)さんです。秋の行楽の主役でもある「紅葉狩り」が今後どうなっていくか、もみじの専門的知見からアイデアをいただきました。

(イラスト:おおいしももこ)

紅葉を楽しむことを「紅葉狩り(もみじがり)」と言いますが、きのこ狩りや潮干狩りのように、実際に狩って(採って)食べることはしませんよね。関西では「もみじの天ぷら」という料理がありますが、全国的に見てもめずらしい習慣だと思います。「紅葉狩り」と言うからには、見て楽しむだけでなく、食べて楽しんでみるのはいかがでしょうか。

 

東京海洋大学在学時よりもみじ成分の研究をしているのですが、もみじの葉にはポリフェノールやβ-カロテン、ルテインが豊富に含まれていて、抗メタボリックシンドロームやアンチエイジングに効果があるとわかっています。もみじの葉は、種類にもよりますが、生で食べるとベリーのような酸っぱい味がします。〈もみじかえで研究所〉では、主にイロハモミジという種類を品種改良し、やわらかくて苦味の少ない葉を目指して作っています。これをフリーズドライした商品「食べられるもみじ葉」は、赤色は笹のような風味、黄色は烏龍茶の味がすると言われることが多いです。フランスなどではケーキにデコレーションしたり、日本でもお酒に浮かべたりして楽しんでいただいています。葉をそのまま食べるのもいいですが、エキスにすれば、ケーキやお菓子に混ぜたり、お茶やドリンクにしたりといろいろな応用が可能です。

 

近い将来、「もみじのテーマパーク」ができたらおもしろいなと思います。例えば、広大な土地にさまざまな種類のもみじが植えられていて、年間を通じて紅葉(こうよう)が楽しめるようになっています。もみじの葉を採って食べてみてもいいですし、パーク内に併設されたレストランに入れば、もみじのフルコースが食べられるんです。エキスを抽出する際に、「ロータリーエバポレーター」という、理科の実験で用いられそうなフラスコのついた機械を使用するのですが、カフェにその機械が置いてあったら、コーヒー屋さんのサイフォンみたいな雰囲気になるんじゃないでしょうか。ドリンクもフラスコのまま出したらラボっぽくて楽しいですよね。それからスーベニアショップなんかもあったりして、そこではもみじの樹液シャンプーやコスメ、盆栽などが買えます。

まだまだもみじについて研究している方が少なく、これから伸び代のある植物だと思っています。特に欧州では人気が高いので、テーマパークは外国の方にも大勢来ていただけるのではないでしょうか。春の風物詩である桜は、桜餅や桜漬けなどの食べ物が既に浸透しています。もみじも近い将来、「秋になったからもみじを食べよう」と思われる存在になってほしいですね。

Profile

本間篤史さん

岐阜県多治見市を拠点とする〈もみじかえで研究所〉代表。東京水産大学(現・東京海洋大学)で機能性食品の研究中にたまたまもみじと出会う。2011年に起業し、もみじの葉を活用した商品の開発・販売、植林活動、研究調査を行う。

https://www.momijikaedelab.jp/

【編集後記】

もみじの可能性について楽しくお話される本間さん。もみじを通じて耕作放棄地の活用やお茶や陶器など地場産業の振興にも力を入れられていて、「もみじのテーマパーク」ができれば、本当に楽しそうです。

目で愛でるだけであったもみじを口に入れる機会が増えていけば、秋になれば旬の食材としてもみじがわたしたちの食卓に並ぶ日も近いかもしれません。

(未来定番研究所 織田)