地元の見る目を変えた47人。
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2018.04.19
子育て未来対談。<全4回>
“イクメン”という言葉が定着し、より積極的な父親の育児参加が求められています。働くママも増えて、仕事も育児も男女同等が理想と言われていますが、忙しい現役パパは、子育てについてどう考えているのでしょうか。〈Roundabout〉〈OUTBOUND〉店主の小林和人さん、スタイリストの岡部文彦さんと一緒に、2回に渡って考えます。後編の今回は、次世代を担う子供たちが歩む未来について聞いてみました。
“ものの目利き”が実践する、子供達のセンスの育み方とは。
F.I.N.編集部
お二人は、自分の仕事をお子さんに見せることはありますか?
小林さん
僕のお店に子供たちが来ることはあります。全部は理解していないでしょうけど、一緒に出かけた時に見つけたものを「これは、パパのお店に売っていそうだね」なんて話してくれたことがありまして、それが的外れではなかったので、何となく理解しているんでしょうね。
岡部さん
うちの長男は、最近バスケットボールにも興味を持ち始めているんです。バスケのウェアを扱っている古着屋さんも多いので、仕事のついでに「シカゴ・ブルズ」のキャップを買ってあげたんです。そしたら喜んでくれて、この前、一緒に下北沢で古着屋巡りをしたんです。「こんなものもあるんだぜ」と教えてあげたり、逆に息子が「これはミネソタ・ティンバーウルブスのアイテムだよ」と教えてくれたり。そうやってセッションできたのは嬉しかったですね。遺伝なのか、サッカーシューズやウェアは、カッコいいものを選びたいようで(笑)。家族の趣味嗜好は、家庭環境で自然と共有できるものなのかもしれませんね。
F.I.N.編集部
「もの」を見極めるプロであるお二人は、お子どもが使うものの選び方に関してはどんなこだわりを持っているんですか?
岡部さん
幼稚園の頃などは、レゴや木のおもちゃを与えていましたが、すぐに飽きちゃうんですよ。友達から「仮面ライダー」を覚えて、変身ベルトをプレゼントすると大喜びするのですが、それもだいたい3ヶ月で飽きたり、激しく遊んで壊したりするんです。それで、長男が小学校に入った頃、膝を突き合わせて「本当に欲しいものは何?」と聞いたら、毎年のクリスマスや誕生日は、サッカーシューズやウェアなど長く使えるものを欲しがるようになりました。下の子は相変わらずおもちゃですが、そろそろちゃんと聞いてみようかな。
岡部さんの子育てヒットアイテムは〈A&F〉のキャップ。
「長男がまだサッカーを始める前、よくこのキャップをかぶって公園で遊んでいました。走ったり、風が吹いたりすると上のプロペラが回るので、知らない人から「かわいい」なんて声をかけられることもありました。年月が経ち、これを次男に引き継ごうとすると、長男が「それは俺のだからダメ」と拒否。内気な子どもにとって、この帽子は、誰かと仲良くなるきっかけを作ってくれた、重要なコミュニケーションツールだったんだと思います」。
小林さん
うちも小さい頃は、木のおもちゃを与えたりしていたんですが、下の子は結局「ベイブレード」一辺倒です。女の子の場合は「ピンクヒラヒラ問題」が浮上する時期があるんですよ。でも、ある程度、その時期で消化しておかないと、大きくなって拗らせるのも問題だなと思いまして。とはいえ、キャラクターがプリントされた服は下着などの人目に触れないものを買い与え、ディズニーものやアンパンマンまではOKと、ある程度の線引きはしました。際限がないですから。娘も、以前は可愛らしいヒラヒラしたもの、鮮やかな色の服を選んでいましたが、最近は妻と身長が同じくらいになり、妻が昔、着ていたパーカーやセーターを着るようになったんです。すると自然に、グレーとかネイビーなど落ち着いた色を好むようになりました。だから、娘が「ピンクヒラヒラ期」に突入し困っているお父さんお母さんには、何の心配もないと声を大にして言いたい。子供自身がある程度納得すれば、次に進みますから。
小林さんの子育てヒットアイテムは、〈SONOR〉のメタルフォン。
「ゾノア社の「NG10」という、ドイツ生まれの鉄琴です。娘が2歳のとき、誕生日プレゼントとして玩具屋さんで購入しました。当初は娘もそこまで熱中するに至りませんでしたが、小学生になり学校で楽器に触れるようになると、家で練習したり、息子が生まれてからは兄弟で演奏したりと、出番がぐっと増えました。今でも、引っ張り出しては二人で演奏しています。やはり何だかんだ、良いものは(一旦は仕舞い込んだとしても)長いスパンで付き合えますね」。
将来は、世界規模、地球規模で活躍できる大人になって欲しい。
F.I.N.編集部
これから大きくなるお子さんたちに、何か伝えたいことはありますか。
岡部さん
僕自身、海外が苦手なんです。英語が上手じゃないので、仕事でしか海外に行ったことがありません。ファッションの仕事をしていると、国内と海外の垣根がなくなりつつあると実感することが多々あります。英語を習う子供たちも増えたし公立小学校でも英語の授業が始まりましたが、韓国や台湾に比べると遅れは否めない。これだけ先進国でありながら、どうしてなんだろうと疑問に感じます。全員が英語教室に通えるわけではないので、もっと行政がバックアップすべきなんじゃないかと思います。子どもたちは、いつかサッカーで海外に行く夢があるようなので、自由に世界を飛び回れるような英語力を身につけて欲しいと思います。海外に目を向けることは、海や山に行く冒険と一緒だと思うので。
小林さん
僕のお店に来る中国や台湾の方も、皆さん英語が上手なんですよ。日本人との差は感じますね。一方で、20代で自由に世界を飛び回り、日本に戻って来た人たちもいます。知り合いの料理人たちは、オーストラリアのメルボルンやデンマークなど世界各地に学びに行き、日本でレストランを開いています。彼らの壁の無さに感心しますね。僕らの20代の頃には、そんな発想はありませんでした。
岡部さん
僕らの頃は、ファッションならロンドンやパリのこの学校、というルートが決まっていましたよね。今はネットで海外の情報が手に入るから、本当に自分が知りたいことを学びに行けるんでしょう。僕の知り合いでもイタリアで学んだ料理人がいます。彼らの知識量は本当にすごい。料理の世界にそういう人が増えているのは、日本でもライフスタイルが充実してきたからなのかもしれませんね。僕らの若い頃は、食事を抜いても服を買う若者が多かったけれど、今は、洋服と同じように、ライフスタイルにお金をかけるようになりました。文化面でやっと、先進国の感覚を理解できたのかもしれないですね。
小林さん
「可愛い子には旅をさせよ」じゃないですけれど、子供にはチャンスを与えたいですね。昔は、「国民性」「県民性」のように、地域ごとに一定の嗜好がありましたが、今はウェブやSNSの広がりによって、多様化した価値観が世界中に散らばっています。自分自身も世界に発信することができるようになりました。そうなると、やっぱりコミュニケーション能力は重要ですよね。僕も海外のお客さんに簡単なことは伝えられても、コンセプトを伝えるのは難しいし、英文メールは時間がかかる。だから、英語力などコミュニケーションをする上での基礎体力を養ってくれたらと思います。
岡部さん
そうですよね。人口が1億人の日本で親友が1人しかいなくても、世界には親友になれる人が2、3人はいるかもしれない。地球単位で考えてくれたら、いいと思います。日本もいい場所がたくさんありますが、海外から日本を見ると改めて良さに気付くかもしれないし、小さな違いで差別することもなくなると思うんですよ。
F.I.N.編集部
最後に、子供が育つ社会に、何か提言はありますか?
岡部さん
僕は岩手出身で小岩井農場の近くで育ったので、外遊びで制限されることはありませんでした。東京は公園でも川でも制限が多く、子どもたちもルールを守れと言われるから、危険かどうか自分で判断できなくなってしまうのではと不安を感じます。
小林さん
寛容さが失われているのかもしれませんね。大きい視点でゆったりと見守ることができればいいんですが。ある程度の礼儀があれば、好きにやらせてみてもいいんじゃないかと思います。自分のお店には、ご家族で入店されて何も言わずに立ち去る方もいらっしゃいます。あれは意外と傷付くんです。せめて会釈くらいしてくれたら嬉しいなと……(泣)。
岡部さん
素敵なお店で緊張されているのかもしれませんよ。でも礼儀は厳しく教えたいですよね。あとはやっぱり英語教育です。
小林さん
待機児童問題や、出産後に女性が仕事を継続できない状況も、行政がもっとサポートしてくれたらと思います。
岡部文彦(写真左)/スタイリスト
1976年岩手県生まれ。2000年からメンズファッション雑誌のスタイリストとして活動。2006年からアウトドアファッションに重点をおいてスタイリング活動を始めたことで、様々なアウトドアメーカーとの企画開発に携わるようになる。雑誌GOOUTでは外遊びを研究する連載を持ち、自身では、WEBSHOP「ホームセンターバリカンズ」と農園芸作業着ブランド「HARVESTA!」を運営している。
小林和人(写真右)/〈Roundabout〉・〈OUTBOUND〉店主
1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う〈Roundabout〉を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する〈OUTBOUND〉を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。
編集後記
今回ご登場いただいた皆様が、社会で素晴らしいご活躍をされておられる一方で、子育てにもそれぞれ創意工夫されながら奮闘されるお姿は、本当に頭が下がります。 でもそんな頑張りの中で、今の子育てを取り巻く環境が、子供にもパパ・ママにもちょっと不寛容だというのは悲しい話。「子供は未来の宝」のはずなのに……。 昔の長屋暮らしでは、助け合いながら育てていくという環境があったとか。子供があたり前に仕事や生活の場にいるというくらしの中で、みんなで助け合いながら楽しくのびのびと育てる。もしかしたら、そんな長屋的コミュニティのおおらかな寛容性を社会全体で思い出すことが、これからの未来の子育てをちょっと自由にするのかもしれない……なんて思いました。
(未来定番研究所 前川)
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