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2019.07.30

ベビーシッターはもはや「富裕層の御用達」ではない?<全2回>

第2回| キッズラインの場合

希望しても保育所に入れない待機児童や、母親がひとりで子育てや家事を担う「ワンオペ育児」が社会問題になっています。その中で、今、注目されているのがベビーシッター。高額で富裕層だけのものと思われていましたが、スマートフォンで手軽に予約ができ、リーズナブルに子どもを預けられるサービスが登場しています。後編では、ベビーシッターと家事代行サービスを行う「キッズライン」のマーケティングマネージャー・藤井聖子さんに、未来の子育てについてお話を伺いました。

(イラスト:かみやかやこ)

スマホひとつで予約から決済まで。

さらに安全な保育を目指す

1時間1,000円から、スマホひとつでベビーシッターを予約できる「キッズライン」。マーケティングマネージャーの藤井聖子さんによると、サービスを設立したきっかけには、代表の経沢香保子さんの子育ての経験があるそうです。

 

「10年ほど前、ベビーシッターは料金が高く、働く女性は気軽に利用できないものでした。保育園は待機児童も多く、すぐに入園できなかったり、保育園の時間と仕事との折り合いがつかなかったり。利用者がカスタマイズできる保育の制度が必要だと感じ、2015年にソーシャルシッティングサービスを開始しました」

 

サービスで最優先しているのは、安心・安全であること。インターネット掲示板を介してベビーシッターを依頼したお子さんが亡くなるという痛ましい事故が起きました。匿名性で誰もが書き込みができる掲示板は危険性がありますが、当時はそれを利用せざるを得ないほど、切実に保育を必要とする人がいたという現状がありました。そこで、「キッズライン」は、保育を依頼したい人と、シッターをマッチングするだけではなく、登録するシッターさんには独自の厳しい審査と研修を設け選抜しています。過去の利用者からのレビューも掲載されているので、コメントを見ながらシッターさんを選ぶこともできます。

 

「私たちスタッフの中には、子どもをもつ女性も多く、サービス開始時にはどんなシッターさんなら自分の子供も安心して預けられるのか、母親の目線で審査項目を考えました。今は全国から多くの方にご応募いただいているので体系化していますが、厳しい基準をクリアし、実地研修を受けた保育士の資格保有者や育児経験のある方だけでなく、大学生も登録しています」

 

子どもが乳児のときは保育士や看護師、大きくなって公園で走り回りたい子どもには、大学生や男性シッターさんが人気なのだとか。プロフィールにはシッターさんの特技も書いてあるため、現役大学生に家庭教師をしてもらったり、英語が得意なシッターさんにレッスンしてもらったり。ピアノの習い事を検討している家庭には、教室に入る前に、ピアノが得意なおじいちゃんシッターさんに、お試しレッスンをして子どもの反応を見る、というケースもあるそうです。

育児や家事代行

女性が輝くための社会を作る

安心・安全なシッターさんを手頃な料金で予約することができ、スマホひとつで支払いまで完了する。このサービスを始めるときに、参考にしたものは?

 

「歴史ある保育サービスの安全性は踏襲しつつ、今の時代のお客さまのニーズに合う利便性を追求しました。今はクリックすればすぐに届くネットショッピングが普及しています。私たちは、ベビーシッターをインフラのひとつにしたいと考えているので、その利便性を取り入れて、ベビーシッターを普及・文化にさせたいと思っています」

 

子どもをもつお父さん、お母さんが、ベビーシッターを利用することで、自分のやりたいことを実現できたら。そのお手伝いがしたい、という藤井さん。

 

「ベビーシッターに加えて、昨年11月から家事代行サービスもスタートしましたし、保育をお願いしている場合も、お子さんの年齢や諸条件はありますが、シッターさんがお子さんの面倒を見ながらご飯を作ったり、お掃除を引き受けてくださるサポーターさんもいらっしゃいます。また今年4月からはお子さんのいない方も、家事代行をご利用いただけるようになりました!」

 

福利厚生として、企業がキッズラインのポイントを社員に付与し、子育て家庭はシッターサービスを、子どもがいない社員は家事代行を利用するという、新たな利用方法も増えているそうです。

 

「将来的には、ベビーシッターや家事代行だけでなく、他の分野でもこのシステムを応用できたらと思っています。私たちのミッションのひとつに、「女性が輝く社会を作ること」というものがあります。あらゆるライフステージにある女性の、お手伝いができるサービスに拡大していきたいと思っています」

 

それでは、5年後の未来、子育てはどうなっているのでしょうか。

 

「シッターは子育ての当たり前になり、もうひとりのお母さんという存在になっているのが理想です。出産の前にシッターに登録しておくという方も増えてくるのではないでしょうか。またアクティブシニアも増えてきますので、これまで専業主婦だった方も家事や子育ての経験を生かして、新しい生きがいを見つけてもらえたらと思っています」

編集後記

ベビーシッターに登録される方は、若い方もいらっしゃれば、おじいさん、おばあさん世代の方まで様々なんだとか。昔は、母親一人で子育てを抱え込むのではなく、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんなど地域ぐるみで支え合いながら子育てをしていました。それが「気軽に依頼できるベビーシッター」という形で、形を変えて現代にリバイバルしているようにも感じられました。子供にとっても、いろいろなシッターさんと過ごすことで家族以外の年齢が離れた人とコミュニケーションをとる経験を積むことができ、コミュニケーション力の育成にもつながるのではないでしょうか。

ベビーシッターはもはや「富裕層の御用達」ではない?<全2回>

第2回| キッズラインの場合