2018.04.16

子育て未来対談。<全4回>

第3回| 小林和人×岡部文彦 パパ育児の理想と現実

“イクメン”という言葉が定着し、より積極的な父親の育児参加が求められています。働くママも増えて、仕事も育児も男女同等が理想と言われていますが、忙しい現役パパは、子育てについてどう考えているのでしょうか。〈Roundabout〉〈OUTBOUND〉店主の小林和人さん、スタイリストの岡部文彦さんと一緒に、子育ての今と未来を、2回に渡って考えます。前編の今回は、パパ育児の理想と現実について伺いました。

(写真:河内彩)

しっかりした上の子、甘えん坊な下の子。

F.I.N.編集部

まずは、お子さんの年齢を教えてください。

小林さん

小学6年生の娘と、小学2年の息子です。

岡部さん

うちも構成が似ていて、中学1年と小学2年の息子です。どちらも内気なタイプだったので、集団行動で積極性を学ばせようと、低学年からサッカーチームに入っています。下の子はやっと慣れたところですが。お姉ちゃんと弟の2人兄弟だと普段はどんな生活ですか?

小林さん

娘は慎重派で真面目という、まさに長女タイプです。本人の希望で4、5歳からバレエを習っていて、今は週3回通っています。やっとトウシューズを履けたところなので、まだまだですが、小さい頃からそういう世界に身を置いて、厳しさを垣間見れるのはいい経験だと思います。練習したらその分、成果が現れますしね。下の子は、筋金入りの甘えん坊です。娘が同じ年齢の時は、もうちょっとしっかりしていたんですが、男の子特有なんでしょうか。

岡部さん

うちも下の子は、わがままで甘えん坊です。上がお姉ちゃんだと育てやすいと聞きますが、どうですか。

小林さん

そうですね。上の子がしっかりしているので。でも、まだじゃれ合っていますよ。お姉ちゃんの力が強いので下の子が泣くこともあります。下の子はマイペースで、どこかで集団スポーツをやらせたいとは思っていますが、最近、ピアノを習い始めまして、知り合いから使ってない電子ピアノを貰って練習しています。子供は吸収が早いのか、既に形になり始めましたね。男の子兄弟はいかがですか?

岡部さん

5歳も離れていると力の差が歴然としているので、そこまで激しい喧嘩はないですね。うちは歳を離して良かったと思っています。

部活や習い事、厳しさもある程度は必要?

F.I.N.編集部

お子さんとは、どんな風に過ごしていますか?

岡部さん

週末、息子たちは部活の練習や試合があるんです。サッカーに関しては、奥さんが積極的に関わってくれるので、僕は応援に行ったり、下の子が練習のない日に多摩川で一緒に遊んだりしています。我が家は、今、スポーツを中心に回っていますね。椎名誠さんの『岳物語』に憧れていたので、子供が生まれる前は、息子とキャンプに行ったり、川下りに連れて行ったりするんだろうと思っていたんですよ。でも結局、子供たちはサッカーに忙しくて、気軽に旅行できない生活になりました。

小林さん

僕も小さい頃に、父親の車で海へ出かけた思い出があったので、自分もそうしたいと思っていたんですが、土日は店にいなくてはいけないので、なかなかできません。小学校就学前なら平日に休むことも可能でしたが、小学校になるとそんなわけにもいきませんしね。娘のバレエが土曜日もレッスンがあるので、家族旅行の計画も難しくなりました。

岡部さん

小学生になると、いろいろなことが変わりますよね。僕も想像していた子育てとは違いましたが、サッカーチームには入れて良かったと思っています。長男も小さい頃は内気だったんですが、サッカーの練習をしているせいか、高学年になるとリレーの選手に選ばれるようになり自信がついて、ようやくですが、勉強にもやる気が出てきたようです。次男も、やっと集団活動に馴染めてきたところですが、サッカーをやっていなかったら、内気な子のままだったんじゃないかな。とはいえ、奥さんが子育てのほとんどを担ってくれているので、僕はその隙間にやれることをやるような感じです。

小林さん

息子には何かチームスポーツを、とも思うのですが、子どもがチームに入ると、やっぱり親にも当番があったり、コーチをしたりと関わる必要が出てくるんでしょうか。

岡部さん

よく公園で一緒になる同級生のお父さんたちからも、それで躊躇しているという声を聞きます。でも、その人がどのくらい関わりたいかによると思うんですよ。僕は、サッカー経験者ではないので、たまに試合を見に行くくらいで、それほど関わってはいません。奥さんが積極的にやってくれているからそれができるということもあるんですが。でも、頑張る子供を応援するのはいいものですよ。

F.I.N.編集部

中学、高校では、厳しい部活が“ブラック部活”と呼ばれて問題になっていますが、それについてはどう思いますか?

小林さん

僕は小学生の頃、ミニバスケットボールをやっていました。当時あった、水を飲んだらダメとか、コーチからシューズで頭を殴られるとか、そういう害悪でしかない理不尽な風習は滅ぶべきですけれど、肉体的な負荷という意味での厳しさは、逆に子供のうちから味わっておいてもいいんじゃないかと思います。小学3年生の頃、両親の仕事の都合でシンガポールに住んでいて、水泳を習っていました。今思えば練習内容がとてもハードでしたが、そこで体力やしぶとさが養われたので、ある程度、厳しい練習は経験した方がいいんじゃないでしょうか。まあ、意志は強くなりませんでしたが(笑)。また、娘がこれから、本格的にバレエの練習を続ける覚悟があるかは本人次第ですが、ストイックな環境に身を置くという意味で言うと、今の時点ではプラスになっています。

岡部さん

長男は中学に入学したばかりで、これから本格的な「部活」になるので、小学校のチームとは多少環境が変わるでしょうね。小学校では学年別だったのでいつでも試合に出場できましたし、コーチも時代のせいか、滅多に怒ることなく優しかったんです。長男は自分が、小学校で一番上手いと思っているようですが、これから他の小学校の生徒とも合流しますし、先輩もいますから、どうなるのか見守れたらと思っています。

“イクメン”ではなく、それぞれの家族にあった育児スタイルを。

F.I.N.編集部

巷では“子育てする父親=イクメン”という言葉が話題です。お二人はこの言葉についてどう思いますか?

岡部さん

僕はそう呼ばれることが苦手です。よく公園で小さい子どもを連れたお父さんを見かけるのですが、一生懸命“イクメン”になろうと頑張っているなと感じます。でも、本当はもっと自由でいいと思うんですよ。“イクメン”という言葉があると、それに縛られてしまう気がするんです。父親は積極的に子供たちと一緒に外遊びをするものだとか、キャンプに連れて行くだとか、それもまた違うんじゃないかな。SNSなどでそうコメントすると共感してくれる方がいらっしゃるので、“イクメン”に抵抗がある人は多いと思いますよ。

小林さん

僕も“イクメン”という言葉は苦手です。現状、育児はほぼ妻に任せてしまっているので、その僕が発言するのも変ですが、“イクメン”という言葉が生まれた背景には、育児は女性がするものという固定概念があり、子育てが積極的なパパが珍しいという発想が根底にあるからだと思います。我が家は主に妻が育児を担当して、自分が仕事をしていますが、家庭によってその逆もあるでしょうし、色んな形態があるはず。それを“イクメン”という言葉で括ることに違和感を覚えます。

岡部さん

本来の目的は異なっていたかもしれないけれど、言葉が一人歩きすることによって「育児に参加する父親像」というものが生まれましたよね。カッコいいお父さんが、海を見ながら子供を抱っこするとか、子供と一緒にサーフィンするとか。お父さんにも、それができる人とそうじゃない人がいますから。

(後編へ続く)

Profile

岡部文彦(写真左)/スタイリスト

1976年岩手県生まれ。2000年からメンズファッション雑誌のスタイリストとして活動。2006年からアウトドアファッションに重点をおいてスタイリング活動を始めたことで、様々なアウトドアメーカーとの企画開発に携わるようになる。雑誌『GOOUT』では外遊びを研究する連載を持ち、自身では、WEBSHOP「ホームセンターバリカンズ」と農園芸作業着ブランド「HARVESTA!」を運営している。 http://www.okabec.com/

Profile

小林和人(写真右)/〈Roundabout〉・〈OUTBOUND〉店主

1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う〈Roundabout〉を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する〈OUTBOUND〉を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。

http://roundabout.to

http://outbound.to

もくじ

関連する記事を見る

子育て未来対談。<全4回>

第3回| 小林和人×岡部文彦 パパ育児の理想と現実