2018.08.06

青江覚峰さんと考える、お盆料理の新定番。<全3回>

第1回| 旬の野菜を使った料理・トマトのファルシ

お盆には実家に帰省して、家族や親戚と過ごすという方も多いのではないでしょうか。普段なかなか集まれない人たちと、食卓を囲む貴重な機会です。年に一度のお盆には、みんなが喜ぶ料理で、もっともっと楽しい時間を作りたい。今一度、お盆という行事の意味を見直し、新しい定番を探るため、住職でありながら、精進料理を中心としたレシピの考案や、料理本の執筆、『暗闇ごはん』などのイベントも主催する料理僧・青江覚峰さんに新しいお盆料理を考えていただきました。

撮影・スタイリング:minokamo(長尾明子)

Profile

青江覚峰/料理僧

 

1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。株式会社なか道代表取締役。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『サチのお寺ごはん』(秋田書店・監修)など。

http://nakamichi.world/#about-section

そもそも、お盆ってどんな行事?

青江さん: お盆とは、ご先祖様の魂が亡くなった方の世界から帰ってきて、それを祀るという古い日本の民間信仰と、仏教でいう盂蘭盆会(うらぼんえ)というものが混ざって今の形になりました。盂蘭盆会を少し説明しましょう。お釈迦さまの弟子に目連尊者(もくれんそんじゃ)という方がいます。この人はどんなところでも見える千里眼という超能力を持っていました。ある日、目連尊者は、亡くなったお母さんを探すと、なんとお腹が空いて辛い地獄、餓鬼界に見つけました。驚いた目連尊者は、師匠であるお釈迦さまに「あんなにいいお母さんがどうして地獄にいるのか?」と聞きました。お釈迦さまは「確かにあなたのお母さんは、あなたにとてもいいお母さんでした」と言います。しかし、お母さんは、息子に優しいが故に、他の人に少しでもいいから食べ物を恵んでくださいと頼まれた時に、「これはうちの息子の大切なご飯なんだからあげるもんか」と他人を犠牲にしてでも、息子を助けようとしたんです。これは親としてはとても大切な気持ちです。でも世間でいうとそれが良くないこともある。だから餓鬼になったとお釈迦さまは言います。目連尊者は「母を助けたい。どうすれば母を救えますか」と聞きました。お釈迦さまは「その発想がお母さんと一緒です。お母さんだけが救われればいいのでしょうか? 地獄で何を見ましたか? お腹が空いて苦しんでいるお母さんの隣では、何百万もの苦しんでいる人たちがいました。私はそのすべての人たちを救いたいと思います」。そうして旧暦の7月15日、十万の僧侶が祖先から現在の父母までのために祈りました。このお経から、7月15日を盂蘭盆会といいます。今の暦になおすと、8月の中旬です。この時期、多くのお寺では施餓鬼(せがき)というものをやります。餓鬼界のすべての人にお布施をして助けていく。そうすると最終的に自分の母親も救われる。それが仏教でいうお盆なんです。日本の民間信仰の、普段守ってくれている自分のご先祖さまを祀るという合わさった形になりました。だからお盆には、お寺で法要もするし、各家庭で迎え火を焚くこともします。

お盆に食べる料理は、地域によってさまざま。

青江さん: お盆にはこれを食べるという決まった料理がある地域もありますが、特に決まりのないところも多いです。料理ではないですが、精霊馬と呼ばれるきゅうりの馬や、なすの牛を作る慣習は各地で行われています。ご先祖さまにきゅうりの馬に乗って早くこちらへ来てください。なすで牛を作ったから、できるだけゆっくりあの世へ帰ってください。という遊び心です。これは仏教の行事ではなくて、日本の民間信仰。お盆は魂が行き来する時期だと昔から言われてきました。実はきゅうりやなすに特別な意味があるわけではないんです。それらを使う理由は、その時期に採れるもので、たくさんあるから。これは、きゅうりやなすに特別な力があるというわけではなく、その時期に採れるものなので、ありがたく使っていきたいという思いが形になったものです。ですから、お盆の時期では、それらの野菜を使ってお料理を作ったりしていました。季節のものをちゃんと食べて、夏バテを防止していこうという発想で、利に叶っているんですね。でも今は時代も変わってきゅうりとなすだけではなく、いろんなものが食べられるようになりました。今この時期で取れるもの、一般的にどの地域でも食べられるものの代表にトマトがあります。トマト、きゅうり、なすなどの旬の野菜を使って、食卓も華やかになる一品を考えました。

トマトのファルシ

材料(4人分)

茄子 2個

きゅうり 1本

みょうが 2個

ミディトマト 4個

 

<和え衣>

煎り胡麻 大さじ3

薄口しょうゆ 大さじ1

濃口しょうゆ 小さじ1

砂糖 小さじ1/2

昆布だし 大さじ2

作り方

1、茄子はヘタの付いている部分を切り落とし、縦半分に切り、20分ほど水にさらしアクを抜く。

2、沸騰した湯に1を入れ、落し蓋をして3-5分間茹る。冷水にとり、冷えたら幅1cmほどの薄切りにする。

3、きゅうりは小口切りにし、塩少々(分量外)をふり、軽くもみ、しんなりしたら絞る。

4、茗荷は縦半分に切って斜め薄切りにし、水に放し水気をきる。

5、トマトのヘタの部分を切り、中身をスプーンでくり抜く。

6、和え衣を混ぜ合わせ、②の茄子、③のきゅうり、④の茗荷を和え、トマトのくぼみに入れる。

暑い夏には、さっぱりと食べられる野菜料理が嬉しいです。見た目も可愛くて、小さなお子さんにも喜ばれそうな一品。大勢が集まる食事を彩ってくれます。 第二回に続きます。

青江覚峰さんと考える、お盆料理の新定番。<全3回>

第1回| 旬の野菜を使った料理・トマトのファルシ