地元の見る目を変えた47人。
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2018.04.05
子育て未来対談。<全4回>
待機児童問題や出産後のキャリア形成など、働くママの子育て環境がたびたび論じられています。育児と子育てに忙しく走り回るママたちは、どんな工夫をしているのでしょうか。そして、未来を担う子供たちにどんな願いを託しているのでしょうか。建築家として活躍する永山祐子さんと、女優であり子供服ブランド〈himher〉をディレクションする野波麻帆さんと一緒に、子育てをしながら働くこと、そして子どもたちの未来を探ります。
(写真:河内彩)
できるだけ、子供の発想を引き出せるおもちゃを。
F.I.N.編集部
お子さんが使うものの選び方について、何かこだわりはありますか?
野波さん
子供たちが小さい時には、口に入れても大丈夫なものなど、とにかく安全性を重視していました。大きくなってからは、一緒に買い物に行って、自分たちに選ばせています。今、幼稚園で手紙を書くことが流行していて、どこに行っても欲しがるのはレターセット。文字を覚えたい年齢になったので、幼稚園でお友だちとお手紙交換したり、じいじやばあばに渡したり、毎日いろんな人に手紙を書いています。
永山さん
うちも、上の子はひらがなも書けるようになりました。でも2歳頃から、自分だけの不思議な文字を使うんです。ノートを覗くと、こちらが感動するほど、びっしり書いてあって、それがあまりに美しくて、文字を教えない方がいいんじゃないかと思ったことも。今は両方を使っているようです。おもちゃは、とにかくウルトラマンが大好きなので、誕生日やクリスマスにウルトラマンのおもちゃを1体ずつプレゼントしています。以前、中古ですが、夫が一度に50体も手に入れてきて、さすがに大喧嘩したことがあります(笑)。下の子は動物将棋やカードゲーム、自分で工作できるものが好きなので、キャラクターグッズは誕生日の時だけにして、なるべく、絵本や自分で考えながら遊べるものを与えたいとは思っています。
永山さんのお子さんが大好きなウルトラマンのおもちゃ。
「ウルトラマン好きの息子は、折り紙で羽を付けたり、ペンで色を塗ってカスタマイズしオリジナルのウルトラマンを作っています。このウルトラマンを両手に2体持ち、飽きるまで永遠に遊んでいます」
野波さん
キャラクターグッズとの付き合い方は難しいですよね。うちも誕生日やクリスマスだけにしています。今、夫が「仮面ライダービルド」に出演しているので、先日みんなで観たんです。そしたら、仮面ライダーに敵対する役だったので、娘たちは「怖いから観ない」。仮面ライダーグッズをもらってきても、娘たちは「いらない」と(笑)。
野波さんの子育てで大活躍なのはスケッチブック。
「子どもたちは、絵を描くことが大好き。どこにでもスケッチブックを持って行くので、ものすごい勢いでスケッチブックが消費されています」
兄弟、姉妹の性格の違いを理解するのも、母の役割。
F.I.N.編集部
褒め方、叱り方で注意している点はありますか?
永山さん
なるべく褒めるようにはしていますが、もちろん、怒ることもあります。怒るというより、ブチギレる(笑)。先日、子供たちと一緒にアメリカに行ってきまして、帰国した翌朝、時差ボケで子供たちが早く起きたみたいで、部屋中におもちゃが散らかっていて大変なことになっていました……。どっと疲れが出ました……。
野波さん
うちも食べたら食べっぱなし! 私もしょっちゅうブチギレています(笑)。
永山さん
ちょっと叱りすぎたかなと反省することもあります。その分、どこかで褒めるようにしていますね。
野波さん
叱りっぱなしじゃなくて、フォローすることも大事ですよね。私は上の子と下の子で叱り方を変えています。お姉ちゃんはどうして怒られたのか、なぜダメなのか理由を聞きたがるので話し合うように。妹はこうしたかったという気持ちに同調して欲しいタイプなので、気持ちは分かると伝えることから始めています。
永山さん
うちも、上の子が理詰めで、下の子が感覚的なんですよ。上の子は怒られると、泣いて抱っこして欲しがるんです。下の子は、全身で抵抗するので、落ち着いてからなぜいけないのかを説明しています。
野波さん
それを見計らうのもお母さんの役割ですよね。
永山さん
女の子の二人姉妹だと、普段はどんな感じですか?
野波さん
うるさいですよ。朝起きてからずっと喋っています。髪を引っ張り合う喧嘩をすることもありますし、リカちゃんで仲良く遊んでいることもあります。今、やっと2人だけで遊んでくれるようになったんです。私が主人と話をしていると、2人でお喋りしていてくれるので、だいぶ楽になりました。男の子と女の子はどうですか?
永山さん
下の子は、生まれた時からお兄ちゃんに張り倒されているから、強くなっちゃって、喧嘩してもめげないんです。女の子の方が精神年齢は高いと言いますけど、お兄ちゃんがメソメソしてると、おもちゃを持ってきて「これでいい?」って(笑)。2人で一緒に遊ぶこともありますけど、お兄ちゃんは自分の世界が強いので、下の子が頑張って合わせています。
野波さん
自分だけの世界観があるんですね。
永山さん
お兄ちゃんは、ウルトラマン2体だけで2時間遊んでいられるんです。妹はそこに「これは、こういうことでしょ?」と合いの手を入れては「違うよ!」と言われたりしてますね(笑)。それでもめげない。
野波さん
かわいい! うちもお姉ちゃんがリカちゃんで遊びはじめると、妹がユニコーンのぬいぐるみを持って来て参加しようとして。違うと言われても、下の子はめげないですよね。
寛容な社会、選択肢の多い世の中が、子供の未来を作る。
F.I.N.編集部
出産は仕事のキャリアにプラスになりましたか?
野波さん
子供服のデザインは、娘たちに直結することですし、女優業でも母親役を演じることが増えてきたので、子供がいることで役の理解が深まることがあります。
永山さん
建物を設計する時「コミュニティ」を考慮するのですが、私自身、子供が生まれてから、地域のお祭りに参加したり、保育園での繋がりが生まれたりと、よりコミュニティを身近に感じることができるようになりました。それは設計する上でプラスになっています。
F.I.N.編集部
未来に向けて、自分はどんな母親になりたいか、理想像はありますか?
野波さん
今はとにかく見守りたい気持ちが強いのですが、ひとつあるとすれば、彼女たちが本当に苦しい時、辛い時に私を思い出してほしいし、いつでも相談できる存在でありたい。彼女たちには、こうなってほしいという希望はありませんが、女の子でも自分で仕事をして、自分でお金を稼ぐ人になってくれたら。誰かに頼って生きるより、楽しいはずですから。
永山さん
今は、ただ健康に育って欲しいですね。私たちが何を与えられるのかを考えると、いろんな場所に連れて行ってあげたり、私の作品を見せたり、夫の展覧会に連れて行ってあげたりすることくらい。最近、子供たちは建物を見ると誰かが作ったものだと理解し始めていて、この世界は、誰かが作ったもので成り立っているんだと感覚で分かってくれたら嬉しいですね。だからといって建築家になって欲しいというのではなく、たくさんの選択肢から彼らが自分で選べるのだと教えてあげたいと思っています。
F.I.N.編集部
最後に、子供が育つ社会へ、提言があれば教えてください。
永山さん
先日、アメリカに行った時に、少し足を延ばしてサンタフェのジョージア・オキーフ美術館に立ち寄りました。中に入ると、子供たちはスケッチブックと鉛筆を渡されたんです。美術館の中で、子供たちは床に寝そべって絵を描いていいんです。オキーフの作品をスケッチしてもいいし、ウルトラマンの絵を描いてもいい。日本の美術館にも、そんな大らかさがあってもいいんじゃないかと思います。
野波さん
子供と美術館に行っても、監視員のお姉さんはピリピリしていますよね。上の子が、もうすぐ小学校に入るので、いろんな学校について調べていると、小学校にもっといろんな授業があってもいいのではないかと思ってしまいます。いろいろな場所に連れて行ってあげられる家庭ばかりじゃないですよね。家庭環境によって授業以外の学びの機会が限られてしまうのはもったいない気がしています。私立では独自のカリキュラムを組んでいる学校も増えてきましたが、公立の小学校でも、子供たちが好きな授業を選択できる機会を増やしてもいいんじゃないでしょうか。
永山さん
担任の先生が一人で教えるのではなく、たとえ教員免許を持っていなくても、面白いことを伝えられる人はたくさんいます。そういう人を講師に迎えて授業ができたら、子どもたちの興味も広がりそうですよね。
野波麻帆/女優・スタイリスト(写真左)
1980年東京都生まれ。1996年に東宝シンデレラオーディションでグランプリを受賞し女優に。2012年に俳優の水上剣星さんと結婚、2013年に長女、2015年には次女を出産。2016年には子ども服ブランド〈himher(ヒムハー)〉をスタート。
永山祐子/建築家(写真右)
1975年東京都生まれ。青木淳建築計画事務所を経て、2002年に永山祐子建築設計を設立。「ルイ・ヴィトン京都大丸店」や横尾忠則の美術館「豊島横尾館」、小淵沢のホール複合施設「女神の森セントラルガーデン」、「カヤバ珈琲」、「木屋旅館」などを手がけている。主な受賞に2014年度日本建築家協会JIA新人賞「豊島横尾館」等。
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