2024.09.06

言葉

言葉は丸く、思いはまっすぐ。世の中をハッピーにするギャル式コミュニケーション。

日頃から私たちが思いを伝えるために使っている「言葉」。近年はインターネットやSNSが生活に定着し、以前よりも個人が言葉を発信する機会が増えたように思います。SNSを発端に新しい言葉やそれにまつわる文化が次々と生まれる一方で、不特定多数の人に触れられることから、意図とは違う意味合いで伝わってしまうことも。言葉の楽しさにも難しさにも直面している今こそ、F.I.N.ではその可能性を信じて探求していきます。

 

今回着目するのは、新たな言葉を次々と生み出し、コミュニケーション能力に長けているギャルたち。なかでも、名だたる企業や行政の会議にギャルが入り、硬直化した議論を活性化する「ギャル式ブレスト®︎」などを行う〈CGOドットコム〉は、ビジネスの現場でも注目が集まっています。そんな〈CGOドットコム〉からハラミさんとPiffanyさんをお招きし、ギャルマインドが息づく「言葉の力」を学びます。

 

(文:船橋麻貴/写真:藤島亮/サムネイルデザイン:岡本太玖斗)

Profile

ハラミさん

kira☆meki ファンタスティック ディレクター。小学生の時にギャルの存在に衝撃を受けて以来、ギャルカルチャーを追い続けている生粋のギャルオタク。現在はギャルと参加者の架け橋として、ギャルマインドを活用したワークショップ「ギャル式ブレスト®️」の設計/運営、ファシリテーターを務める。好きな言葉は、「じゃあお前ゼブラ柄のネイルやったことあんの?」。

Instagram:@kasa_harami_ku

Profile

Piffanyさん(ピファニー)

ダンスホールレゲエダンサー、イラストレーター、アニメーターとしても活動するマルチクリエイターギャル。アパレルブランド〈Not For Sale〉のブランドオーナー。〈CGOドットコム〉では、「バイブス高め聞き上手ギャル」。好きな言葉は、「感謝します」。

Instagram:@n4s_piffany

ギャルマインドさえあれば、誰もがギャルになれる

F.I.N.編集部

いつの時代もトレンドの最前線にいて、新たなカルチャーを次々と生み出すギャルの皆さん。私たちもPiffanyさんとハラミさんのようなギャルになれますか?

Piffanyさん

はい! 見た目じゃないんで、どんな人でもギャルになれますよ。年齢や性別、国籍も関係ありません。ただ、ギャルマインドが大事だよね。

ハラミさん

そうそう。実際、私たち〈CGOドットコム〉では、ギャルマインドの3つの定義を掲げています。周りに流されない「自分軸」、自分の好きに素直でいる「直感性」、ものごとを前向きに推進していく「ポジティブ思考」です。このギャルマインドさえ持ち合わせていたら、皆さんももうギャルです!

F.I.N.編集部

「自分軸」と「直感性」と「ポジティブ思考」ですか。大人になると、どうしても見失いがちな3つですね。

Piffanyさん

そうですよね〜。でも実は私も元からギャルマインドを持っていたわけじゃなかったんです。ある時から徐々にこのギャルマインドを自分に取り入れられるようになって、そうしたらなんか生きるのがもっと楽しくなったんですよね。だから「ギャルマインドって、最高だわ〜」って。

ハラミさん

わかる。私も元々はすっごいネガティブ。うまく主張できないイエスマンだったんです。だけど昔からギャルが大好きで、その精神性に憧れていたんですよ。で、ギャルマインドを持つようになってみたら、気分も軽くなったし、一緒にいる人たちもなんだか居心地が良さそうになったんですよね。

F.I.N.編集部

素敵……! 2人はどの段階で自分がギャルだと確信できたのですか?

Piffanyさん

私は最近ギャルマインドを持てるようになりました。それまでは見た目はギャルだったけど、マインドが追いつかなかったこともあったんです。この1年、この3つのマインドを意識して人とコミュニケーションを取ってみたら、自分もまわりもアゲになってきた。

ハラミさん

私はPiffanyちゃんとちょっと違って、まだ自分のことを完全にギャルだとは思っていない。だけど最近、自分の中のギャルを出せるようになってきていて、必要な場面で自分のギャルマインドを出せるようになってきている気がします。

Piffanyさん

いいね、それ! 自分の中にいるギャルを場面に合わせて少しずつ引き出してあげるみたいな? とにかくやってみて、徐々にバイブスを上げていく。ギャルマインドを取り入れられるかどうかは、まずやってみなきゃわからないですし。

ユーモアと言葉遊びで、ネガティブもポジティブに

F.I.N.編集部

積極的にギャルマインドを取り入れていきたいと思います。今回の特集テーマは「言葉」なのですが、2人が言葉で大切にされていることはありますか?

Piffanyさん

うーん、言葉を使う時って、相手とコミュケーションを取る時ですよね。その時に大切にしているのは、やっぱり人の話を聞く姿勢かな。しっかりと相槌を打ったり、リアクションを取ったりして「話を聞いているよ」という姿勢が見えると、相手も私に言葉や思いをより届けやすくなると思うんですよね。

ハラミさん

聞く姿勢を大切にすると、お互いにコミュニケーションが円滑になるよね。私は自分のことも大切にしたいし、自分が考えていることをちゃんと相手に伝えたい。だから相手に「察して」っていう態度は取らないようにしています。自分の思いをしっかり言葉にして、相手に届けるということを意識的にやってますね。

F.I.N.編集部

自分の思いを伝える時、意識していることは?

ハラミさん

意識してるのは、わかりやすい言葉を使うこと。いい意見を言ったとしても相手に伝わらなかったらもったいない。だから、相手に合わせた言葉を使うようにしてますね。

Piffanyさん

たしかに。ビジネスの場や今みたいな取材の場でいきなりギャル語を使ったら、相手は置いてけぼりになっちゃう。だから相手が使う言葉に合わせて、そこに自分のテンションとバイブスを乗せていくっていうか。

ハラミさん

そう。実は自分軸を大切にしながらも、相手にとってわかりやすい言葉を選んでるんだよね。

Piffanyさん

私たち結構頭使ってるよね(笑)。

ハラミさん

うん、頑張ってる(笑)!  Piffanyちゃんはどう?

Piffanyさん

私は、ネガティブな言葉はなるべく使わないようにしてるかな。ギャルって常に明るい性格に見られがちだけど、私たちも皆さんと同じ人間。落ち込むこともいっぱいあるんですよね。だけど、気持ちだけじゃなく言葉までサゲだと、やっぱりマインドを持っていかれちゃう。だから、ネガティブな時ほど、ポジティブな言葉に変換するようにしてます。

ハラミさん

いいね! 私も、アイスを落としたら「ダイエットになってラッキー」って切り替えるとか、やってるな。嫌なことが起きたとしても、笑いに変えられるようなユーモアや言葉遊びは大切にしたいよね。

Piffanyさん

いいこと言うね〜。でも本当にそう。サゲな時こそ、ポジティブな言葉を使いたいよね。だって、落ちても上がってくだけだし、その活力をよりポジティブな方向に持っていきたいもんね。

ハラミさんのPCには、「つまらない生活をすてろ!」という言葉が書かれている

人も空気もやわらかくする「絵文字」の効用

F.I.N.編集部

先ほど「言葉遊び」の話が出ましたけど、ギャルの皆さんはその能力がかなり長けていますよね。最近はどんな言葉を生み出して使っていますか?

ハラミさん

昨日もPiffanyちゃんと一緒にお仕事をしていたんですけど、終わった後に、いきなり「お疲れやま〜」って言ってきて。

Piffanyさん

そうだったね(笑)。そもそも「お疲れ様」って言葉はかしこまりすぎかなって思ってて。「お疲れ様」を「お疲れやま」って言葉に変えて、試しに手で山の形を作りながら言ってみたら、ハラミもノリノリで返してくれた。細かいけど、そういうユーモアがあるやりとりを日常的にやっているね。

Piffanyさんとハラミさんが披露してくれた「お疲れやま」のポーズ

F.I.N.編集部

言葉をやわらかくして相手に届けるために、新たな言葉が生まれたのですね。

Piffanyさん

単純に楽しいし、かわいいからというのもありますけどね(笑)。とくにSNSではよく言葉で遊んでいるかも。「ありがトン」の「㌧ 」を記号文字にしたりして。

ハラミさん

私は最近、「わたくし」のことを「わ+タクシーの絵文字」で表現したり、語尾に半角カナで「ザマス」 ってつけたりしてる。タレントやインフルエンサーの方たちが使い始めて、それがギャルたちにも広まっているんです。感覚としては昔流行ったデコメに近いのかも。そもそもギャルはそういう面白い言葉をキャッチする感度がめちゃくちゃ高いよね。

Piffanyさん

誰かが使い出して盛り上がったら、次の日にみんなが使ってることが多い(笑)。楽しいし、元気が出るし、笑いも生まれる。良いコミュニケーションになってると思う。

ハラミさん

そういう共通言語があると、仲間意識が高まって気分もアガるよね。

F.I.N.編集部

私たちも共通言語を使って、仕事の士気を上げていきたいです!

ハラミさん

いいですね! じゃあ私たちもやってるんですけど、まずは「お世話になっております」っていう仕事メールの文言の最後に、虹の絵文字をつけてみたらどうですか?

Piffanyさん

いいね〜! かしこまった文章が絵文字1つでやわらかくなるような感じがするし、いっぱい色が入っていてかわいい。

言葉は魔法。使い方次第で社会もハッピーに

F.I.N.編集部

まずは近しい人へのメール文から始めてみたいと思います! 今日は言葉についてあれこれと思いを巡らせていただきましたが、改めて言葉について感じたことはありますか?

Piffanyさん

普段私は絵を描くんですけど、個人的には言葉にも形があると感じていて。私の中では、敬語や丁寧語はカクカクした四角で、ギャルの言葉は角のない丸のイメージなんですよね。ウチらが丸いギャルの言葉を使うことによって、どんなところでも、その場の空気感をよりやわらかくできるんじゃないかって思っています。

ハラミさん

そうだね。かしこまって距離を感じてしまっている相手には、あえてギャルの言葉をバランスよく織り交ぜるのがいいかも。

F.I.N.編集部

この先、ギャルの言葉を私たちが使っていくと、社会はどう変わっていくと思いますか?

Piffanyさん

コミュニケーションがスムーズになると思います。見た目がギャルじゃなくても、ギャル式のコミュニケーション方法や、マインドを取り入れていくと、自然とバイブスも上がる。そうすると新しい発見や気づきにも繋がって、いいアイデアが生まれる気がします。自分の言葉1つでその場の空気を変えられる。そのくらい可能性があると感じてます。だから私にとって言葉は、魔法のような存在ですね。

ハラミさん

私たちは私たちらしい言葉を使って、コミュニケーションをしているだけなんです。なので、みなさんにギャルが使う言葉をそのまま使ってほしいわけではまったくなくて。大事なのは、自分自身が楽しい、心地いいと思える言葉を使うことだと思っています。そうすると自分が生き生きと話せるようになり、次第に相手も生き生きと話せるようになって、お互いにとってハッピーな環境づくりができるんじゃないかなって。その結果、世の中全体がハッピーになるんじゃないかなと思っています

〈CGOドットコム〉

「世の中のバイブスをアゲる」ことをミッションに、社会的ギャップを価値に変換、ワークショップから企業のアウターブランディングなど幅広くサポートをしている。主力事業である「ギャル式ブレスト®︎」は、ギャルマインドを軸に、企業のコミュニケーション課題の解決、新規アイデア創出の伴走。他にもギャルマインドを活用し、企業の商品開発やPRをサポートする「ギャル式スタジオ」なども展開している。

https://cgo-gal.com/

【編集後記】

こちらの質問に1つ1つ、真摯に(ストロークはもちろん完全なるギャルで)明確かつエネルギッシュな言葉で堂々と答えてくださるさまはまさにアゲ。

彼女たちが職場で、自分のアイデアに「いいじゃん!やってみよ!」と言ってくれたり、失敗した時に「どうすればいいか、考えよ!」と言ってくれたら、通常よりワンランク上げて頑張れそうですし、自らもそう声をかけるのがデフォルトでありたいと思いました。

ネガティブな言葉は自動変換でポジティブに。相手に伝わってないな、と思ったらそこで諦めずに伝わりやすい言葉にする。寄り添ってくれる気持ちのみずみずしいやさしさが、なんとも素敵な時間でした。年齢や経験など関係なく「自分軸を信じて行動すればよい」と背中にそっとあたたかな手を添えてもらったような気がしました。

虹の絵文字、さっそくF.I.N.編集部内のメールで使い始めました。

2人の写真を撮らせていただいた時の、次から次へ繰り出されるポージングの数々と渋谷のビル群の背景との組み合わせ、最&高でした。

(未来定番研究所 内野)