まずは健康に配慮したメニューであることが重要。健全な食事によって健全な心と体が作られるからです。仏教では「五観の偈（ごかんのげ）」という言葉がありますが、目の前の食べ物の裏側にある人や命などを想像したり、健康な身体で食事できることに感謝したりすることなどを説いています。基本的に、料理は先人の知恵によって作られ、それが継承されて、現代の料理人によってアレンジされると僕は考えています。だから、料理の歴史をきちんと押さえた上で、オリジナリティを出し、さらに“驚き”を感じられる店が僕にとっての最高の店なんです。これにあてはまる店は、渋谷区神宮前にある〈KEISUKE MATUSHIMA〉。オーナーシェフの松嶋啓介さんは、料理の歴史的背景を紐解き、そこに日本人ならではの哲学を込められる素晴らしい料理人です。それから浅草にある和食店〈おと〉。日本酒を頼むとチェイサー代わりにだしが出てくる店です。日本酒は伝統的な日本のお酒ですが、海外文化のチェイサーにだしを取り入れるところに驚きがあります。それとなんといっても外せないのが、湯島の〈楽はせ川〉。そうした料理の哲学を僕に教えてくれた師匠が営むすてきなお店です。