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道元『典座教訓』、水上勉『土を喰ふ日々-わが精進十二カ月』

『典座教訓・赴粥飯法』道元(講談社学術文庫)/『土を喰ふ日々-わが精進十二カ月』水上勉(新潮文庫)

僕にとってのバイブルといえるのが、道元禅師が書いた『典座教訓』。これは今の和食の根源的なことが初めて明文化されたものなんです。しょっぱい、すっぱい、甘い、辛い、苦いという味覚を表す言葉がありますが、それに加えて、“淡い”という言葉が書かれています。これは、素材の味が生きているということ。味が弱すぎたり強すぎたりせず、ちょうどいい塩梅に整えることなど、料理についての基本的なことが書かれていて、和食の歴史を紐解く教科書のようなものです。また、読むだけで幸せな気持ちになるお気に入りの本が、直木賞作家の水上勉先生による味覚エッセイ『土を喰ふ日々-わが精進十二カ月』。禅寺で精進料理を教わった著者が、初夏に梅干しを漬けたり、冬に何もない畑を掘り起こして芋を見つけたりします。そうやって四季を通じて、日本人がいかに自然と同居してきたかが生き生きと描かれているんです。亡き住職が30年以上漬けた梅干しを、寺のみんなで思い出しながら食べる場面は、涙なくしては読めません。

1977年東京生まれ。企業研修などを行う株式会社なか道代表取締役。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。ユニット「料理僧三人衆」の一人としてダライ・ラマ法王の講演会などで料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『サチのお寺ごはん』(秋田書店・監修)など。
http://www.ryokusenji.net/kaku/