FUTURE IS NOW

時代の目利きたちの“今”から未来を探るメディア

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料理人の思いが伝わる

料理を通じて、料理人のメッセージが伝わってくると嬉しいです。食材の扱い方や調理方法、さらにお客さんの口までどういう風に運ばれるかというところまで考えているお店は素晴らしいと思います。仕事でもプライベートでも、数多くの飲食店に足を運んできましたが、その中でも特別なお店があります。静岡県にある天ぷら屋〈成生(なるせ)〉は、食材はお客さんの顔を見てから包丁を入れ、天ぷらの決め手となる衣は油を低温と高温に分けて揚げているんです。例えばさつまいもは、まず低温で40分間揚げ続け、その後高温の油で焼き付けるように揚げて完全に衣の水分を飛ばす。その後余熱を入れることによって、衣はサクサク、中は甘味たっぷりのホクホクに仕上がるというのです。細部まで考え尽くされた手法や店主の思いに感動します。また、銀座にある中華料理店〈Furuta〉(岐阜県にあった時代の「開化亭」)や、今は閉店してしまったフランス料理屋〈シェ・ワダ〉は、行くたびに驚きや感動があり、この3店は、僕に食の新しい見方を教えてくれたお店です。

1952年大阪府生まれ。株式会社ジオード・有限会社門上武司食研究所 代表取締役。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。著書に、『門上武司の僕を呼ぶ料理店』(クリエテ関西)のほか、『スローフードな宿』『スローフードな宿2』(木楽舎)、『京料理、おあがりやす』(廣済堂出版)など。
http://www.geode.co.jp/