FUTURE IS NOW

時代の目利きたちの“今”から未来を探るメディア

FUTURE IS NOW

日本の原風景に囲まれている時

着物は日本の守るべき大切な文化ですが、正直に言うと都会にいる時に着たいと思うことはあまりないんです……(苦笑)。日常的に着られていた時代固有の環境でこそ、その良さが引き立つのであって、無理して今の暮らしの中で取り入れると、本来の美しさが失われてしまうような気がしています。例えば、杉で作られたきれいな下駄を履いてアスファルトの上を歩くと、たったの1日で底が削れてしまってダメになってしまう。そこにゴムのソールを付けたら、それはもはや本来の姿とは言えないような気がして。また、東京のような刺激の多い都会のジャングルの中では、着物が持つ染色の繊細な美しさは映えないと思うんです。それよりも僕が着物を着たいと思うのは、お茶畑の中や自然に囲まれた日本の原風景に近いところにいる時。土の上に立ち、自然が作り出す音があちこちから聞こえる環境で着れば、すごく気持ちが良いと思いますし、着姿も美しく見えると思います。着物にも工芸にも言えることは、伝統的なものはすべて現代の様式に沿わせればいいというわけではなく、そのものの本質的な良さを理解して、どう守るのが最適なのかをそれぞれに見極めることが大切なのだと思います。

1979年東京都出身。アパレル勤務などを経て、2010年に株式会社丸若屋を設立。プロダクトプロデューサー、プロジェクトプランナーとして、伝統工芸から最先端の工業技術まで今ある姿に時代の空気を取り入れて再構築、視点を変えた新たな提案を得意とする。14年、パリのサンジェルマンにギャラリーショップ〈NAKANIWA〉をオープン。17年春には渋谷に茶葉店〈幻幻庵〉を立ち上げ、世界に向けた“新しい日本茶カルチャー”の発信に取り組んでいる。
http://maru-waka.com/