デンマークではなかなか温泉に入る機会はないので、温泉と聞いて今でも鮮明に思い出すのは、日本デザインセンター代表取締役の原研哉さんと一緒に訪れた、石川県金沢にある宿べにや無何有。それはもう素晴らしい体験でした。ここは温泉に限らず、設備から食事まですべての要素がパーフェクトで、忘れられない日本の思い出のひとつです。温泉に入ると、不思議と特別な気分になるんですよね。私にとって温泉は、日常と違う体験を味わえる場所であり、すべてが新鮮で、今までの自分の考え方を変えてくれる気がするんです。べにや無何有には共同と個室のお風呂があり、原さんとは共同の方に入りました。お互い裸のまま心も体もリラックスし、周りの美しいロケーションにも感化されているからか、そこには普段は話さないことを自然と話せるような特別な雰囲気がありました。これが日本でいう“裸の付き合い”の魅力なのでしょうか。おかげで、原さんとは、これからの人生や家族のことなど、仕事以外のプライベートな話をたくさん話すことができました。お互い忙しさに惑わされることなく、温泉の良さを全身で体感しながらゆっくりと過ごせたことは、今でも素晴らしい思い出です。