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2018.07.31

未来を仕掛ける日本全国の47人。

18人目 茨城県つくば市〈manufact jam〉・古橋治人さん、真理子さんご夫妻

毎週、F.I.N.編集部が1都道府県ずつ巡って、未来は世の中の定番になるかもしれない“もの”や“こと”、そしてそれを仕掛ける“人”を見つけていきます。今回向かったのは、茨城県のつくば市。〈archipelago〉店主の小菅庸喜さんが教えてくれた、〈manufact jam〉の古橋治人さん、真理子さんご夫妻をご紹介します。

 

この連載企画にご登場いただく47名は、F.I.N.編集部が信頼する、各地にネットワークを持つ方々にご推薦いただき、選出しています。

柔軟なものづくりと丁寧なお店作りで、緩やかに地域と結びつく人。

木工作家である治人さんの作品を中心に、器やカトラリー、そして洋服やアクセサリーなど、センスの良い生活雑貨がずらりと並ぶ、〈うつわと生活用品 manufact jam〉。2013年のオープン以来、治人さんが製作を、真理子さんが店頭に立ち、ご夫婦ふたりで運営されています。推薦してくださった小菅さんは、「商品に対して愛情を注いでおられて、ディスプレイが美しく、とても丁寧に使い方の提案をされています。また、おふたりのお店を含めて隣の本屋さん、珈琲屋さん、居酒屋さんとお客さんを紹介し合いながら、長屋的なお付き合いをしている風景にも未来を感じます」と話してくださいました。古橋治人さんご本人にお話を聞いてみました。

F.I.N.編集部

古橋さん、はじめまして。

古橋さん

はじめまして。

F.I.N.編集部

まずは、茨城県のつくば市について、特徴と魅力を教えていただけますか?

古橋さん

つくばは学園研究都市として生まれ変わった新しい街です。筑波山を背に控えた美しい自然と、JAXAなどに代表される研究施設を懐に抱えた一風変わった地域です。

F.I.N.編集部

確かに、つくばと言えば、大学や研究施設のイメージがあります。そもそも、〈manufact jam〉を出店されたのはどんなきっかけだったんですか?

古橋さん

現在並びで営業している〈千年一日珈琲焙煎所〉さんが今の物件を紹介してくれたことがきっかけです。〈千年一日珈琲焙煎所〉さんは、以前は別の場所で営業されていたのですが、ちょうど移転先を探していたそうなんです。いくつか見ていた中に、たまたま並びで閉まっている物件があって、1軒だけ珈琲屋としてオープンするよりも、その流れで何かお店があったほうが良いのでは、というお考えから、顔見知りだった私たちに声をかけてくださいました。2013年に、古書店の〈people bookstore〉、居酒屋の〈わかたろう〉と合わせて、4軒がほぼ同時に営業を開始しました。

F.I.N.編集部

小さな商店街のようですね。治人さんは、家具のような大きなものからカトラリーのような生活雑貨を幅広く手がける木工作家としてご活躍されていますが、ご自身のお店を持とうという思いは以前からあったんでしょうか?

古橋さん

いえ、以前は工房の小さなスペースで物販をしていたのですが、特に正式にお店を持とうと考えていたわけではありませんでした。ですが、たまたまお声がけいただいたタイミングが良かったので、「じゃあやってみようか」ということになりました。

F.I.N.編集部

お店に並ぶ生活用品の中心は、治人さんの作品かと思いますが、作品作りについて、何か一貫したこだわりはあるのでしょうか?

古橋さん

木工、建築、家具、陶器と節操なく活動をしていることもあり、一貫したこだわりは特にありません。何かに執着しないようにしていることがこだわりなのかもしれません。

F.I.N.編集部

その柔軟さが、数々の雰囲気ある作品を生み出しているんですね。〈manufact jam〉には、治人さんの作品以外に、全国の作家さんの素敵な作品も並んでいますね。

古橋さん

はい、〈manufact jam〉を構えてから、本格的に作家さんのものを仕入れるようになりました。自分自身がものを作っていることもあり、ものづくりの視点から、つくりの良いもの、どこか光るものを感じる作品をご紹介するようにしています。私たちが届けたいのは、作品そのもの。そこに魅力を感じたり、驚きがあったり……そういうものがいいなと思っています。

F.I.N.編集部

推薦してくれた小菅さんは、店内のディスプレイの美しさについてもお話していました。何かこだわりがあるんでしょうか?

古橋さん

10坪の小さい店舗ですので、その中で見やすく、探しやすく、また美しく見えるよう什器、ライティング、商品を配置しています。作品がものとしてより良く見えるように、ということを大切にしています。

F.I.N.編集部

なるほど。並びにある店舗さんとのお付き合いについて、小菅さんは”長屋的”と表現されていました。実際はどんな関係性なんですか?

古橋さん

先ほどお話したように、ほぼ同時にオープンした4軒とは並びで営業していて、ちょうど学校でいうところ部室のような配置になっています。お互いの関係性も、違うカテゴリーにありながら、緩く繋がりあった部活動のようです。

F.I.N.編集部

学校で言う他の部との関係性というと、近すぎず、遠すぎず、緩やかな仲間意識があるものですよね。お客さんとはどんなコミュニケーションをとられているんですか?

古橋さん

県外からのお客さんも多いのですが、近隣の方も来てくださいます。お客さんとはなるべくお話をするようにしていて、近所の方の中には、フラッと見に来てくださる方もいらっしゃいますし、あとは、おしゃべりしにくる、日常の世間話の延長で遊びに来てくださる方もいますよ。

F.I.N.編集部

地域の人たちにとっては、ついつい立ち寄りたくなる空間なのでしょうね。最後に、地域の方にとっては、どんなお店、どんな場所でありたいと思われますか?

古橋さん

全国で生まれる美しい手業を気軽にご覧いただける場所となれれば、嬉しく思います。

F.I.N.編集部

近隣のお店との、そして地域の方との近すぎず、でも遠すぎない緩やかな結びつきが、未来の地域コミュニティーを紐解く鍵なのかもしれません。本日はありがとうございました。

manufact jam

〒305-0005 茨城県つくば市天久保3-21-3 星谷ビル1-D

TEL:029-855-7694

http://manufact-jam.com/

 

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