地元の見る目を変えた47人。
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2019.06.26
未来を仕掛ける日本全国の47人。
F.I.N.編集部が1都道府県ずつ順番に、未来は世の中の定番になるかもしれない“もの”や“こと”、そしてそれを仕掛ける“人”をご紹介します。今回取り上げるのは、山口県周南市。〈EXS Inc.〉代表の永田宙郷さんが教えてくれた、山口県周南市で、自家焙煎コーヒー豆の販売・カフェ〈コーヒーボーイ〉を営む、河内山嘉浩さんです。
この連載企画にご登場いただく47名は、F.I.N.編集部が信頼する、各地にネットワークを持つ方々にご推薦いただき、選出しています。
コーヒーの幸せを届ける人
山口県で〈コーヒーボーイ〉を6店舗経営する河内山さん。永田さんいわく、「直接の知り合いではないですが、共通の知人を通してお話を伺っていました。地域に根付いた店づくりと若手の育成にも積極的で、山口のコーヒーカルチャーシーンを牽引しているコーヒー屋さんです」。〈コーヒーボーイ〉は、地方ならではのお店づくりを大切に、こだわりながらこだわりすぎず、地域に密着した街のコーヒー屋さんです。河内山さんに地方でお店を続ける秘訣や地方のメリット、これからのお店の在り方などについて、お話を伺いました。
F.I.N.編集部
河内山さんが考える、山口県周南市の魅力についてお聞かせいただけますでしょうか?
河内山さん
山口県周南市は、海も山もあり自然が豊かで、気候も温暖で穏やかな場所です。幼少期から釣りが好きで、昔から瀬戸内で海に親しんでいました。今でも日本各地、世界各国をまわって釣りをするのですが、ここは適度に湿度もあって、こんなに心地いい場所は他にないと感じています。保守的で田舎だなと感じる部分もありますが、かえってそれがいいんです。
F.I.N.編集部
〈コーヒーボーイ〉を始めたきっかけを教えてください。
河内山さん
私の両親は、昭和36年からこの街で喫茶店を営んでいました。私が生まれてからは母が働けなくなったので、父はコーヒー豆の焙煎を始めたんです。私は東京の大学を卒業後、東京にある大手のコーヒーメーカーに3年間勤務。その後、地元へ戻ってお店を受け継いで、現在の自家焙煎豆の販売とカフェというスタイルに。両親が商売をしていたので、本当は自宅で仕事の匂いがしないサラリーマンに憧れていたのですが。仕事もしながら、毎日のように大好きな釣りをしたいと考えたら、自分の会社を持つのが一番だと思ったんです(笑)。
F.I.N.編集部
お店のコンセプトや大切にしていることを教えていただけますか?
河内山さん
まず、ローカルに根ざすこと。山口県には長さの短い川が多く、生活に用いる水も柔らかい軟水でとってもフレッシュな味わい。この風土と水を活かし、美味しいコーヒーを淹れ続けていきたいと思っています。そして、私たちのコーヒーの一番の特徴は、コーヒー豆の中の甘みを最大限引き出すように原料の選定、焙煎や抽出をしている点です。
F.I.N.編集部
「豆の中の甘みを最大に引き出す」とは、どういうことでしょうか?
河内山さん
コーヒーは黒くて苦いものというイメージですが、本来はワインと同じように甘みも酸味もあります。私たちは、焙煎や抽出などさまざまな行程で、その豆の甘みを最大限引き出せるよう意識しているんです。無意識に感じていた、「コーヒーは苦い」というイメージを払拭できればと考えています。
F.I.N.編集部
確かにコーヒーというと、苦いというイメージが浮かびます。上手に引き出すと甘みを感じられるなんて、コーヒーは奥深いですね。〈コーヒーボーイ〉が他店とは違う、“らしさ”とはどのような点でしょうか?
河内山さん
世代や抽出のスタイル、豆のグレードにこだわらず、できるだけ「広く多く長く」コーヒーを楽しんでいただきたいと考えています。「NOT TOO SERIOUS! 」。難しく考えず、深刻にならないことを意識しています。ある程度のガイドラインは決めていますが、街によって天気も違うし、お客さまの層も違う。いつでもどこでもまったく同じ味、ということにはこだわっていませんが、それぞれのお客さまに、その時一番合うコーヒーを提供するということには、注力しています。
F.I.N.編集部
お店のこだわりの味を貫くというより、お客さんに寄り添っているような姿勢が素敵ですね。
河内山さん
私たちは、“通訳”みたいなものだと思っているんです。コーヒーを知りたい人へコーヒーについて、かみくだいて説明をしてあげるようなイメージです。通訳の人って、依頼人の隣や少し後ろにいますよね。そんな風に、さりげなくお客さんの隣でコーヒーを紹介してあげること。こだわりはあるけど、こだわりすぎず執着しないことが大事だと考えています。「流されず、逆らわず」トレンドは把握しながらも、自分を持ち続けること。そして、寄り添いながらこういうものもありますよと新しさも提案してあげるのが、〈コーヒーボーイ〉の役割だと思っています。
F.I.N.編集部
カフェとしての空間づくりについて、目指していることはありますか?
河内山さん
コーヒーのある空間を心地良く感じて、楽しんでもらえたらと思っています。幼い頃から父の喫茶店で、コーヒーを飲みながら新聞や本を読んだり、近所の人たち同士で会話をしたりして、それぞれの時間を楽しんでいる大人たちの姿がとても記憶に残っていて。そういうシーンの記憶が、私の原点になっていると思います。コーヒーにまつわる思い出って、誰しもひとつは持っているのではないでしょうか。コーヒーが飲めないからといつも紅茶を注文されるお客さまがいらっしゃるのですが、コーヒーの香りやカフェの空間が好きで、通ってくださっているのだそう。そんな風にコーヒーのある幸せな時間をサポートさせてもらいたいと考えています。
F.I.N.編集部
山口県でお店を開いて約26年だそうですが、地方でお店を長く続けることについて、どのように考えていらっしゃいますか?また、メリットだと感じる点はありますか?
河内山さん
大きな都市と違って、暮らし自体にお金がかからず、様々なコストも低い。新しいトレンドや激しい消費動向に左右されずに自分のペースを守りつつも、外側から自分のお店を冷静に見る感覚も持てることが、地方ならではのメリットだなと感じています。もちろん、誰にでも生業があるわけではないけれど、それも自分次第。私の場合は、都会で同じことはできなかったと思います。都会だと、常にとんがってエッジが立ってないといけないイメージですが、ここではそれを意識しなくていい。自分の目指すイメージと冷静に向き合って、落ち着いて社の運営ができることもメリットだと思います。
F.I.N.編集部
そのようなメリットもあるのは意外でした。豆の焙煎やカフェだけでなく、ワークショップやセミナーも開催されているそうですね。
河内山さん
各店舗で定期的にコーヒーセミナーやワークショップなども開催しています。美味しいコーヒーをもっと身近に楽しんでもらえたらと思っています。通常営業の時に「アイスコーヒーの美味しい淹れ方が知りたい」というお客さまがいれば、その場で実演してお伝えすることもありますよ。こういうことは、たくさん売ることを余儀なくされやすい都会ではできないかもしれませんね。お客さまとの距離が近いところも強みのひとつです。あとは、豆の卸やコーヒーのケータリングなども行なっています。お店の空気感をパッケージしてお届けできたらと思っています。
F.I.N.編集部
親しみやすいお店だと毎日通いたくなりますね。河内山さんは、地方で働くことの5年先の未来についてどのように考えていらっしゃいますか?
河内山さん
地方は、人口の減少や高齢化などネガテイブな問題も抱えていますが、どうすれば事業が継続できて、地方にあることを強みにできるのか、問題解決の糸口を常に探しています。地方で商売をするということは簡単ではないけど、やり方や思いの置き方次第でどこかに突破口があると思っています。コーヒー業界は、昭和の雰囲気が残る喫茶店あり、ナショナルブランドのコーヒーチェーンあり、斬新なサードウェーブのコーヒースタンドありと、多様性があってとても活気がある業界ではないでしょうか。あまり厳しい規制がなく自由度が高く、エキサイティングさもある。若い世代も増えて、新しいアプローチで可能性を切り開いているように思います。5年先はもっと自由にさまざまな広がりを見せてくれそうな予感がします。
F.I.N.編集部
その中で、〈コーヒーボーイ〉は今後どのような立ち位置を目指すべきだと考えていらっしゃいますか?
河内山さん
長く続く美味しいコーヒー屋さんがある街は、いい街に違いない、というのが持論です。なかったら帰って来てもおもしろくないですよね。それがコーヒー屋の役割、ある意味、地域のインフラだと思っています。続けていくこと、歴史があるというのは大切ですよね。いくらトレンドでも美味しくても、長い年月コツコツと続けることには叶わない。そういう想いでこれからも続けていきたいですね。山口県にも、若い方がコーヒースタンドを開くなど、コーヒーカルチャーが広まっています。〈コーヒーボーイ〉にも、焙煎を習いたいと来てくれる若者もいるので、工場も自由に見学できるようにしているんです。これからは若い人たちのプラットホームにならないといけないなとも感じています。また、今後は自分のスタンスを持ちながらも、場所にはこだわらず、ポップアップショップとして日本各地に〈コーヒーボーイ〉のコーヒーをご紹介していく予定です。すでに福岡県や埼玉県大宮市などでも実施しています。地方はお客さんの数は少ないですが、それなら自分から出向いて売りに行けばいい。「山口の甘いコーヒーを持ってきました」をキャッチフレーズに、全国を旅したいと思っています。
コーヒーボーイ
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