もくじ

2018.05.24

南紀白浜には、働き方の未来がありました。<全2回>

第1回 南紀白浜で今、何が起きている?

場所や時間に捉われない柔軟な働き方として、多くの企業で導入が進む”テレワーク”。近畿随一のリゾート地として名高い和歌山県の南紀白浜は近年、新しいテレワークのスタイル、“ワーケーション”の拠点として注目を浴びています。

東京から、名立たる企業の社員が移住しているという白浜町。一体何が起きているのでしょう?  ワーケーションブームの仕掛け人、白浜町役場の総務課企画政策係大平幸宏さんと前総務課企画政策係(現・日置川事務所地籍調査室)坂本和大さんにお話を伺いました。

(撮影:植松琢麿)

 

(写真左)大平幸宏さん(写真右)坂本和大さん

年間200社以上の企業が視察に訪れる、南紀白浜。

F.I.N.編集部

ここ最近、白浜がテレワークの拠点として注目されていますが、どんな経緯があったんですか?

坂本さん

もともと企業誘致に積極的に取り組んでいたわけではありませんでした。平成16年に、和歌山県と白浜町で、「白浜町ITビジネスオフィス」という貸オフィスを作ったのですが、当初、入居した2社が退去して以来、5年以上に渡って空室の状態が続いていました。 そんな状況の中、平成26年にメディスト株式会社が入居。その後1社だけでは寂しいという思いもあり、改めて企業誘致に力を入れるようになりました。すぐに2社目の入居が決まり、その後3社目として株式会社セールスフォース・ドットコムが入居してからは、新しいスタイルのテレワークとして注目されるようになり、メディアにも多く取り上げられるようになりました。昨年は、1年間を通して200社以上の視察があり、現在は合計13社の誘致に成功しています。

F.I.N.編集部

いろんなテレワークスタイルがある中でも、白浜町でのテレワークは「ワーケーション」と呼ばれているようですが、どんなものなんですか?

大平さん

和歌山県では、県内でのテレワークを、「ワーク」+「バケーション」の造語で、「ワーケーション」としてブランディングしています。

ワーケーションにもいろいろな働き方があり、ハッカソン(SEが合宿形式で短期間、集中的に仕事をする)のような形でSEの方が来られたり、ワーケーションウィークというような形で、期間限定で、白浜での働き方を体験したりするパターンもあります。ワーケーションの形は、会社ごとに違い定義はないのですが、その場ならではの特色と遊びを取り入れながら、勤務しているのが現状です。

F.I.N.編集部

それができるインフラが白浜町にあるということですね?

坂本さん

はい、平成26年に、白浜町が国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と協定を結んで、町内の11ヶ所に耐災害ネットワークを構築しました。これは、災害時でも切れないワイヤレスネットワークなんですが、緊急時だけだと、いざという時に使い方がわからないので、一般の方に平時利用できるフリーWi-Fiも提供しています。白良浜が、海水浴場としては世界初のフリーWi-Fiスポットだったりするので、海水浴をしながら仕事をする、そんな働き方も可能なんです。

企業誘致、成功の秘訣は密なサポートにあり。

F.I.N.編集部

テレワークの推進は、和歌山県や白浜町以外の地域でも行われているのでしょうか?

大平さん

はい。総務省が、年に一度「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」として、テレワークの有効性の検証を行う自治体と企業を募り、毎年、全国の市町村15団体ほどが取り組んでいます。

白浜町も平成27年度に参加し、株式会社セールスフォース・ドットコムとのご縁に繋がりました。 そして、自治体の中で成功しているケースが珍しく、白浜町が成功事例としてよく挙げられています。

F.I.N.編集部

失敗している自治体が多い中で、白浜町は成功している、そこにはどんな違いがあるのでしょうか?

坂本さん

そうですね……。企業誘致に取り組んでいる地域は最近多く、全国視察に行きましたが、看板はあるけれど事務所の中には誰もいないとか、そのような場所も結構ありました。

白浜町役場では、企業を誘致する前の準備はもちろん、誘致した後のサポートもしっかりしています。白浜に来られると、海水浴場や温泉、世界遺産の熊野古道があるなど、最初はすごく楽しいのですが、観光だけではなく、住む人にとっては、日々の生活が大切なんです。例えば、移住の際には住居探しをお手伝いしたり、普段使うスーパーの場所を教えたり、日常生活に必要なことをサポートしています。その後、生活が落ち着いたころには土日のサポート。一緒にバーベキューをしたり、釣りに行ったり、そんな遊びの部分まで提案しています。

F.I.N.編集部

え、一緒に遊びに行くんですか!? どうやって誘うんですか?

坂本さん

普通ですよ。「一緒に行こうよ」って。

だって寂しいじゃないですか。一人だけで来られてる会社もありますし。 だから、一緒に遊ぼうよって声かけて、地元ならではの楽しみ方を共有しています。まあ、そういうのがウケているのかもしれませんね。

大平さん

坂本さんって、ほんまにこんな感じの人なんですよ。だいたい出会って10分後には、誰とでも友だちみたいになってますからね(笑)。

坂本さん

あと、IT系の会社だと若い方も多いので、地元の秋祭りに参加してもらったりもしています。

坂本さん

やっぱり田舎って、だんだん祭りに出てくれる若者が減ってきて、昔ながらのお祭りがどんどんなくなっているんですね。だから、誘致した企業の若い人に祭りに参加してもらい、神輿を担いでもらったり、地域の活性化を図っています。 そういった地域交流の機会を通じて、白浜の地元の人たちとも仲良くなっていただいて、ここでの居場所ができていく。で、私たちから巣立っていく、っていうサイクルです(笑)。

大平さん

もちろん、和歌山県からの手厚い補助があるのも、白浜町が人気の理由のひとつです。 和歌山県が国内でも最大級のサポートを行なっていて、企業規模や地元雇用3名以上など、一定の条件を満たせば、飛行機代の半額補助や、地元雇用1名あたり年間30万円の補助、白浜町ITビジネスオフィスに入居されている企業であれば家賃の半額補助など、いろいろなサポートをしています。 入居の検討段階でも補助があり、初回、和歌山県や白浜町に来られる際には、補助金としてギフトカード4万円分をお渡ししています。だから、最初の1回は実質無料で見に来ていただけるんです。

若者が帰ってこられる町・南紀白浜を目指して。

F.I.N.編集部

なるほど。白浜町や和歌山県は、なぜ、そこまでサポートされてるんですか?

大平さん

私たちが一番求めているのは、「地元雇用」なんです。あまり言いたくないんですが、和歌山県は約30年にわたって、若者の県外流出率が全国ワースト1位なんです。県内に大学がないとか、働く場所がないとかで、若者が出ていかざるを得ない。だから、僕らが積極的に企業誘致に取り組んで、大手企業をどんどん誘致することで、県外に出て行った若者が帰ってこられる環境を作りたいなと。和歌山出身の人って、みんな和歌山が大好きなので、仕事さえあればこっちに帰ってきたいんですよ。

F.I.N.編集部

これまでの企業誘致によって、実際に雇用は増えているんですか?

坂本さん

はい。現時点では、13社の企業の中、操業中の11社で合計90名超の雇用が生まれています。そして、来月から新たに操業する2社でも既に20名ほどの雇用が決まっています。

F.I.N.編集部

それって、IT企業で働けるような人材がもともと白浜にいたということですか?

坂本さん

IT関連って聞くとSEというイメージが強いと思います。ですが、白浜町で雇用されている人は、会社にもよりますが、セールス部門だったり、テレビ会議システムのデモ画面に映る人だったり、必ずしもSEではないんです。SEで募集すると、やはり人材不足は否めません。白浜町では、将来のSEを育てていこうということで、誘致したIT企業のみなさまに協力いただき、地元の中学校でプログラミングの授業を行ったり、2020年のプログラミングの義務教育化に向けて、ひと足先に準備しています。 大学は大阪や東京に行くと思うんですが、IT企業をもっとたくさん誘致して、地元にも帰って来られる環境づくりができたらなと思っています。

F.I.N.編集部

今後、さらに白浜町への企業誘致が進んで、雇用も増えたら、白浜町はどんな風に変わっていきそうですか? また、それにはどんな課題がありそうですか?

大平さん

そうですね、今後もどんどん企業誘致を続けて、IT企業が集積したら、白浜を“シラコンバレー”として有名にしていきたいですね(笑) 白浜町に限らず、ワーケーション普及のためには、企業がもっと社員をサポートしていく必要があると感じています。例えば、移住時にかかる費用をサポートできる企業が増えてきたら、もう少しハードルは下がるかなと思います。自治体として、受け入れ体制はどんどん整えていきますので、働き方改革に意識の高い企業がもっと増えてくれたらと思います。

次回は、南紀白浜で“ワーケーション”という働き方を実践するIT企業、セールスフォース・ドットコムに潜入します。

(後編へ続く)

もくじ

関連する記事を見る