2021.10.06

「放課後はRobloxで会おう」――メタバースが変える遊び場の未来。

最近耳にすることも多くなってきた「メタバース」。それは、オンライン上で、世界中の人々がアバターで参加し、もう一つの現実を過ごせる仮想空間のこと。現実の社会を投影したコミュニケーション空間やゲームに特化した空間など、企業や個人によって多種多様なメタバースがインターネット上に誕生しています。

 

そのなかでも最近盛り上がりをみせているのが、米国の子どもを中心に人気を博しているゲームプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」です。気軽にプレーできるカジュアルなゲームが揃うメタバースで、一般の人もRobloxで遊べるゲームやアイテムを開発し、販売できるという新規性も。放課後はRobloxに集って遊ぶ子どもが増えているとか。

 

Robloxの魅力やメタバースにおける遊びの未来について知るべく、Robloxユーザーで、クリエイターのコミュニティを運営され、「メタバース文化祭」を企画されている高橋 翔(Sho T)さんに、お話を聞かせていただきました。

小学生のスタークリエイターも登場。

Robloxが子どもに支持される理由とは。

そもそもRobloxはどのようなものなのでしょうか。高橋さんは次のように説明します。

 

「すごく簡単に言うと、3Dの遊び場です。メタバースで家を建てたり、拳銃で撃ち合いのバトルをしたり、制限時間内にタワーの頂上に登ったりと、リアルではできないような多種多様な遊びをつくることができます。現在、800万人のクリエイターが2,000万以上の遊び場を構築。リアルだと遊び場が限られますが、Robloxなら自由自在です」(高橋 翔さん、以下同)

 

人気なのは子育てなど疑似家族を楽しめる「Adopt ME!」、ペットを購入して育成する「NEW PETSHOP! Club Roblox」などのシミュレーションゲーム。他にも、勉強からバイトまで様々な角度で高校生活を疑似体験できる「ロブロックスハイスクール」など、Robloxでは遊びを超えた時間を過ごせます。

アバターが仮想空間内で自由に空を飛んだり、高くジャンプをしたりしている様子。リアルではできない体験が可能に。

「物理的な制約の影響を受けないことが一番面白いですね。すごく高くジャンプできるし、どんな場所でもかくれんぼできる。アバターなら何でもできるので、特にコロナ禍では多くの子どもたちがRobloxで遊ぶようになったのではないでしょうか。LEGOブロックのようなキャラクターへの親近感と、シンプルなゲームが揃っていることも、子どもから支持されている理由だと思います」

 

また、単に体験のプラットフォームを提供するのではなく、ユーザー自らが、簡単に3Dの遊び場を作成できたり、遊び場を共同編集できたりするところもRobloxの魅力なのだといいます。

 

「オンラインで、生き残りをかけたバトルロワイヤルゲームを楽しめるプラットフォーム『フォートナイト(Fortnite)』や、無人島で生活する『あつまれ どうぶつの森』も、とても人気のゲームで、広義にはメタバースといえます。この2つに共通するのは、それ自体が面白いゲームであり、完成された世界で遊ぶ楽しさがあるということ。一方、Robloxはユーザーによってメタバースが構築されます。プログラミングの知識がなくても、ある程度簡単に遊びをつくれるので、ものづくりへの欲求を満たせます」

Roblox空間内に観覧車を配置している様子。プログラミングの知識がなくても簡単に自分の仮想空間を作り出すことができる。

また、Robloxはクリエイターに収益が還元される仕組みが充実しているといいます。子どものYouTuberが大金を稼ぐことが珍しくなくなってきたように、海外ではRobloxでゲームを有料化してお金を稼ぐ小学生のスタークリエイターが、増え始めています。

 

「アイテムを制作して売買したり、自分で手掛けた空間に大勢のプレイヤーが来ると、Roblox内のデジタル通貨『Robux』というお金が手に入るのですが、これは現金(ドル)に換えることができるんです。YouTubeの再生数と広告収入の関係と似たようなシステムで、年間1億円稼ぐ子どもも出現しています」

 

ゲームを提供するオンラインプラットフォームの側面と、クリエイタープラットフォームとしての側面を持ち合わせているところが、これまでのメタバースにないRobloxならではの特徴だとのこと。

 

「いまの子どもは仮想現実とリアルの違いを特別意識はしていないと思います。同級生や近所の子がRobloxで遊んでいるから自分もやってみる。ただその空間にいて一緒に遊ぶ。それでなんとなく仲良くなる。公園の遊び場で一緒にサッカーしたり砂遊びをしたりするのと一緒です。また、アバターは現実の見た目を反映しないので、人種や見た目で差別されたりいじめられたりもしません。その意味では、むしろリアルよりも仲良くなりやすいかもしれませんね」

 

ちなみに、Robloxの1日あたりの平均利用者数は約4,300万人(2021年2Q)。主にゲームで使うアバターの衣装の販売で収益を得ており、2020年の売上高は約9億ドルにのぼりました。

Gucciの洋服をアバターに。

メタバースで変わる“私”の輪郭。

仮想空間に軸足を置きながらも、リアル世界にも通じるプラットフォームを構築しているRoblox。最近はリアルで知名度のあるブランドとのコラボでも注目されたといいます。

 

「Robloxは2006年にリリースされ、最初はゲームオタクな人たちの間で広まり、徐々に子どもに浸透していきました。そして15年目の今年、2021年3月にニューヨークの証券取引所に上場し、ゲームプラットフォームからソーシャルなメタバースへの転換を目指すべく、開発を加速させています。これまでも、ディズニーやレゴとのコラボはありましたが、最近では高級ファッションブランドのGucciとのコラボを実施し、ブランドエリアを設けました。アバターを着飾るために洋服を購入するという選択が、特段目新しいことではないデジタルネイティブ世代への訴求として、注目されました」

リアルとオンラインにある仮想のまちづくりコミュニティ組織、「令和市」と「シェア街」がRoblox上でコラボして作った仮想空間。Roblox内で両コミュニティのメンバーが交流している様子。

日本ではまだ認知度が低いRobloxですが、一部のファッションやアパレルのブランドは新しい商圏をメタバースに見出している模様。さらに2021年7月には、ソニーミュージックとの提携が発表され、今後アーティストがRobloxの中でライブやグッズを販売することも期待されています。

仮想空間内に美術館を作り、アバターで集まって見学している様子(メタバース文化祭テスト空間)。いずれは有償の美術館を作り、アート作品を展示することも可能に?

「子ども時代にメタバースが当たり前でなかったいまの大人は、価値観が追いつきにくいかもしれません。かたや、今の子どもたちは当たり前のようにRobloxで遊んでいます。今後、日本でも広まっていけば、おそらく海外のように、Robloxからスターが出てきて、YouTubeと同じように認知が広がっていくのではないかと予想しています」

ARが現実と3D世界をつなぐ未来も。

人類が存在する場を拡張するメタバース。

Robloxから新しい商圏が生まれはじめているいま、“どの世界に住みたいか”の選択肢が増えていると高橋さんは考察します。

 

「映像のエンターテインメントは、これまでテレビや映画でしか体験できませんでした。しかしYouTubeの登場で無数のチャンネルから、自分の好きなチャンネルを選べるようになりました。Robloxもこれに近いと思っています。また、ソーシャルネットワークなどを“デジタルにおける人間関係を構築する場”として認識する土台が出来上がったことも大きいですし、もちろんハードウェア・ソフトウェア・通信が飛躍的に向上して環境が整ってきていることがRobloxの台頭を後押ししているのは言うまでもありません」

仮想空間内では、冬でもビーチで海を眺めることができる。季節問わずに自分の好きな場所で好きな楽しみ方ができることも醍醐味の一つ。

リアルだけではなく、メタバースにも自分が存在する場を求められるようになると、遊びの姿はどう変わっていくのでしょうか。

 

「おそらく、遊ぶことと作ることの境界線がどんどん曖昧になっていくと思います。これからは創造の対象が空間(3D)に移行していくのではないでしょうか。また、もしかしたらVRゴーグルを使った多人数同時参加型オンラインゲーム『VRMMO』のような次世代型ゲームに発展する可能性もあるでしょう。メタバースでなら、渋谷駅周辺で鬼ごっこやサバゲーもできます。もっと未来を見据えるならば、ARで現実世界とリンク(ミラーワールドなど)できるかもしれません。現実での物理的制約と関係のない世界を仮想空間で作り、それを現実に投影して新しい表現を生み出すという活動も増えるのではないでしょうか」

 

技術者でなくても、コードを書かずにオンラインサービスが作れるという、ノーコードのムーブメントが広がる中、誰しもが3D世界を作れる可能性を示したRoblox。誰もがプレイヤーでもあり、クリエイターにもなれる。それが新たな自分の世界となり、仕事になり、その収益で生きていくこともできる。そんな「クリエイターエコノミーともいえるビジョンや哲学に可能性を感じています」と高橋さんは語ります。

 

2021年10月に「メタバース文化祭」なる催しをRobloxで企画している高橋さん。Robloxをきっかけに、メタバースに新たな居場所が増え続けると予想しているとのこと。

 

「メタバース文化祭では『何十人のアバターと一緒に空を飛んだ』『デジタルの世界で夕焼けを見た』『メタバース美術館で作品をみんなで鑑賞した』という経験を提供したいと思っています。それだけではなく、企業にもスポンサーとしてロゴを出してもらい、ビジネスや産業への落とし込みにも挑戦したいと思っています。こうした企画を通して、日本でもメタバースを身近にしていきたいですね」

Profile

高橋翔(たかはし・しょう)

一般社団法人NoCoders Japan協会 代表理事。株式会社プレスマン CINO(Chief Innovation Officer)

大企業からアントレプレナー、世界初SNSブロックチェーンSTEEMのエバンジェリスト等を経て、NoCoders Japan協会を設立。株式会社プレスマンCINO(Chief Innovation Officer)を兼任。ノーコード人材が770名超登録するプラットフォーム「NOCODO(ノコド)」も立ち上げる。イノベーターフェーズから未来をバックキャストするFuturist。

https://www.sho-takahashi.com/

【編集後記】

今回の取材を通して初めてRobloxに触れてみましたが、分からないなりにも何となく楽しめるハードルの低さもあり、ただただメタバース空間を動き回るだけであっという間に時間が過ぎていきました。

ただ単にゲームをする場ではなく、コミュニケーションの場としてメタバースが使われ、これから様々な企業が進出し、これまで以上にリアルとデジタルの境界線がなくなる世界が作られ、そこで新しい文化が生まれてくる未来を感じました。

(未来定番研究所 織田)