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ル・コルビジェ『ロンシャンの礼拝堂』

『ロンシャンの礼拝堂』ル・コルビュジエ(1955年竣工)

フランスにある、コルビジェの晩年の作品のひとつです。大学院の卒業旅行で見に行きました。その時の自分は就職先も決まり、建築の道に進むことは決めていたのですが、不安や焦りがありました。卒業したら「建築、デザインってなんだろう」という、本来は答えが見えないものの答えが見えてくると漠然と考えていたんです。しかし卒業してみても、結局その答えは明確になっていなかった。そんな気持ちを抱えた状態でこの作品を見たんです。それは僕が今まで見てきたコルビジェの作品とは、かけ離れた造形や考え方を示していて、そのギャップにすごく感動を覚えました。コルビジェですら積み上げていったものに対して違うものを作り、違う考え方を生み出している。建築の美しさに感動したのももちろんですが「答えを今出す必要はない。凝り固まる必要はない」と教えてもらったような気がして、涙が出ました。

1977年東京都生まれ。株式会社日建設計勤務を経て、有限会社nendoに入社。10年間に渡りチーフディレクターとして国内外の空間デザインを手がける。2015年に独立し、鬼木デザインスタジオ設立。建築、インテリア、展示会の空間デザインを中心に多方面にて活動。
http://oniki-design-studio.com