2019.04.15

街でマンガを拾い読みできるアプリ「マワシヨミジャンプ」が登場。

集英社が、電⼦書籍の購⼊などの従来のアプリとは一味違う、マンガアプリ「マワシヨミジャンプ」の配信を2019年1月より開始しました。アプリ内のマップ上に落ちている「週刊少年ジャンプ」やコミックスを“拾って”読める、位置情報を活⽤したマンガ配信サービスです。新アプリの魅力とマンガの未来の可能性について、「週刊少年ジャンプ」編集部内にあるデジタルコンテンツを担う部署、「少年ジャンプ+」ご担当の籾山悠太さんにお話を伺いました。

位置情報を利用した、リアルと連動した新マンガアプリ。

「このアプリは、『週刊少年ジャンプ』の創刊50周年を記念して開催された『ジャンプアプリ開発コンテスト』の第1期入賞企画です。『週刊少年ジャンプ』自体や、そのマンガ、キャラクターに関する新しいアプリ、WEBサービスの開発企画を個人向け部門と法人向け部門で募集し、応募総数373件の中から選ばれました。現代のマンガや読書体験は、欲しいものしか取りに行かないという傾向があります。マップ上に落ちている作品を拾い、無作為にマンガと出会える同アプリは、電車の網棚に置かれたマンガ雑誌を手に取ることで知らなかった作品を読んで好きになるというような、かつてあった体験を、スマートフォンや位置情報を利用し、現代に新しい形で蘇らせたいと考えました」と、少年ジャンプ編集部籾山悠太さんは話します。

本との一期一会を感じて欲しい。

マップ上に配布する本のラインナップは、「週刊少年ジャンプ」、「ジャンプSQ.」、「ウルトラジャンプ」のバックナンバーや『ONE PIECE』『青の祓魔師』『ジョジョの奇妙な冒険』ほか、「週刊少年ジャンプ」や「ジャンプSQ.」「少年ジャンプ+」のコミックスなど合わせて600冊以上(2019年2月24日現在)。ユーザーは、現実のマップと連動したアプリ内のマップ上で、近くに表示された電子書籍を“拾って”読むことができます。マップから拾えるのは1回に1冊。新たに拾う場合は保持しているマンガを放出する必要があり、それをアプリ内の地図の好きな場所に置くことで他の読者に読ませることができます。またストア機能も実装しており、偶然“拾って”出会った作品が気に入り、すぐに続きが読みたくなった場合はアプリ内で使用可能なコインを購入することで、好きな巻や作品の電子書籍を買って読むこともできます。

 

「かつて自分たちが少年だった頃は、公園や河原にさまざまなマンガや雑誌が読み捨てられていて、そこで新しいマンガと出会うドキドキ感がありました。自ら購入して読むことはないけれど、たまたま出会ってページをめくることで、新たな作品に出会い、好きになる。そういう意味で、『マワシヨミジャンプ』は最新技術と懐かしい感覚が融合した画期的なサービスだと感じています。時代が移り変わる中で、時代に合わせて、よりさまざまな形でマンガ作品を世に出したいと考えています」

 

時代に合わせて進化する。マンガの可能性は無限大。

書籍の電子化や紙文化の衰退が叫ばれる一方で、時代に即した新たな可能性も感じていると、籾山さんは続けます。

 

「弊社では、2014年より『少年ジャンプ』電子版やオリジナル作品の漫画電子書籍の販売を行うアプリケーションおよびウェブサイト『少年ジャンプ+』を配信しています。そこでは『ジャンプルーキー!』というマンガ投稿サービスがあり、ユーザーは才能溢れる投稿作を読み放題で楽しむことができ、マンガ家志望の方は誰でも自分の作品を投稿でき、ジャンプデビューすることができます。現在、平均して毎月約500作品ほどが届けられています。こうなるともはや、マンガ雑誌や紙の単行本だけが正解ではありません。読者の行動パターンも変化していて、スマホやデジタルデバイスで、いつでもどこでもマンガが楽しめます。作家自身も、紙とペンでマンガを描く時代ではなくなってきていて、デジタルデバイスで作画し、「pixiv」などのイラストコミュニケーションサービスにデジタルにアップするというような、デジタルネイティブの作家が増えてきており、作品が世の中に出ていく過程も変わってきています。そういう意味で、昔よりたくさんの作品や才能が集まる場所が増えており、作家と読者を繋げる場が広がっていることに、可能性を感じています」

 

「マワシヨミジャンプ」ならではのマンガの楽しみ方

「マワシヨミジャンプ」のサービスが開始されてまだ3ヶ月足らずですが、編集部ではその反応をどう捉えているのでしょうか。

「正直、予想以上の反響に手応えを感じています。2月末にマワシヨミされた回数が150万回を超え、登録されているユーザー数よりマワシヨミされた回数の方が上回っています。SNSなどの反応をみると、地図上でマワシヨミする感覚を楽しんでもらっているようです。おそらく、マワシヨミを体験したことのない若いユーザー層は未体験の感覚が新鮮で、かつて学生時代にマワシヨミを楽しんでいた年代の方たちは懐かしさを持って楽しんでくれているのではないでしょうか」

マップを使用した位置情報との連動サービスという点にも、「マワシヨミジャンプ」ならではの魅力があるようです。

 

「例えば、葛飾区亀有付近では『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。ジャンプ編集部のある神保町付近では『バクマン。』というように、実際の街と作品の舞台が連動してマップ上に多く配布されているので、作品の舞台となっている街を実際に訪れながら、その世界観に没頭するという楽しみ方もできます。また、新しい元号が発表された4月1日には、24時間限定で平成元年発行の『週刊少年ジャンプ』1989年18号がマップ上をジャックしました。このように、今後はさまざまな記念日やプロモーションと連動した作品をマップ上に置くような企画もどんどん増やしていきたいと思っています」

 

地域に特化した作品との連動や、もしかしたら、作家先生のサイン入りのレア本がどこかのマップ上に落ちている!? なんて宝探し感覚でマンガが楽しめるような夢の企画が実現する日も、そう遠くないかもしれません。街とマンガ、人とマンガをつなぐ「マワシヨミジャンプ」には、まだまだ無限の可能性が秘められているのではないでしょうか。

 

 

 

 

『少年ジャンプ』の電子版やオリジナル作品の漫画電子書籍など、スマホやWEBを通じて時代にあったコンタクトポイントを提供するだけでなく、まったく新しい方法で漫画と出会う機会を創造する姿勢に、集英社の漫画への愛を感じました。

 

知らない漫画と出会える偶然性の創出、1冊の漫画をみんなで共有する楽しさ。「マワシヨミジャンプ」には、デジタルだからこそできる魅力が詰まっています。漫画が読まれてきた歴史や文化を尊重し、常に「新しくてドキドキする何か」を追い求める姿勢が、読者に楽しんでもらえるサービスを生み出すパワーになっているのだと感じました。(未来定番研究所 出井)