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2018.12.27

藤原美智子×山村博美 美しさの未来対談

第2回 新しい時代の女性たちのメイクとは?

メイクは時代を映す鏡。

世の中の移り変わりによって、女性たちの日々のメイクも多様に変化してきました。メイクの過去、現在をたどることで、そこにはどんな未来が見えてくるのでしょう?

今回お招きするのは、80年代のメイク黎明期からビューティ界を引っぱってきたヘアメイクアップ・アーティストの藤原美智子さん。そして、平安時代から現代までの化粧の歴史を体系的に研究している山村博美さん。異なる2つのアングルからひもときます。

2回目の今回は、これからの女性たちのメイクについて語ってもらいました。

(撮影:河内彩)

Profile

(写真右)藤原美智子/ヘアメイクアップ・アーティスト

雑誌や広告撮影のヘアメイク、化粧品関連のアドバイザーなど幅広く活躍。また、近年は美容だけでなく栄養コンサルタントとして食や健康、暮らし方といったライフスタイル全般を提案する。著書に『新しい口紅は寝る前に試す』(講談社)、『美の宿るところ』(幻冬舎)、『大人の女は、こうして輝く。』(KKベストセラーズ)『美しい朝で人生を変える』(幻冬舎)。新著に『美しく幸せに生きるための逆算思考』(集英社)がある。2017年5月、ライフスタイルブランド「MICHIKO.LIFE」を立ち上げた。

https://michiko.life/

Profile

(写真左)山村博美/化粧文化研究家

化粧品会社の研究所で、日本と欧米の化粧文化史、結髪史の研究に従事したのちフリーに。執筆活動のほか、講演や情報提供など、幅広く活動。主な編著書に、『化粧の日本史 美意識の移りかわり』(吉川弘文館)、『世界の櫛』(共著,ポーラ文化研究所)、『浮世絵美人くらべ』(共著,ポーラ文化研究所)、「江戸時代の化粧」(江戸遺跡研究会編『江戸文化の考古学』吉川弘文館)などがある。

山村さん

化粧史全体で見ると、「黒船襲来」に値するほど、「IT技術の進歩」はエポックメイキングな出来事でした。医薬部外品の開発や美容医療の進歩といった科学技術の進歩も美容業界を変えましたが、IT技術の進歩はそれ以上にすさまじい影響を与えたと思います。

藤原さん

実際に自分の顔で試すことなく“バーチャルメイク”のアプリでシミュレーションできたり、メイクのハウツー動画では実際のテクニックがなくても加工ありきで誰もが”メイク上手“になって発信できたりするような時代。

山村さん

かつては化粧品会社が開発したツールでしかできなかったことが、誰もができるようになって。インスタとか、宇宙人のような加工になっている子も見かけますよね(笑)。

藤原さん

「とにかくSNSで可愛く映ればいい」、現実の可愛さよりも「いいね」がもらえることの方が大事、という考えも珍しくない。

山村さん

動画や写真のバーチャルの世界で完結してしまっているんですね。

藤原さん

今は本当に過渡期かな、と思って見ています。当の本人たちもこんな時代が長く続くとは思っていない、案外クールでしっかりしている。いつかはバーチャルの世界から目覚めて、別の生き方をしていくのではないかしら。

山村さん

ことITが絡むと、技術ありきなので未来が本当に予想しにくいですね。30年前、世界がこんなことになるとは想像もできませんでした。そのうちメイクするAIなんて出てきたりして……?

藤原さん

もう研究開発されているみたいですよ。顔の凹凸や配置をセンサリングして、ファンデーションからアイシャドウ、口紅まで塗布してくれるメイクマシン。人間ってすごいな、と思いますよ。人間が発想したことは10年先か20年先かいずれ実現してカタチになる。「鳥のように空を飛びたい」と発想して飛行機ができて、「月に行きたい」と言って月に旅行できるようになった。こうして人間は歴史を作ってきたのですから。

山村さん

SFのような話ですけど、顔にマイクロチップをつけるとメイクして見えるとか、そんな機能もできそうですね。

藤原さん

そのうち、人工皮膚が着替えるように装着できるようになったりして(笑)。若い時の皮膚を培養し人工皮膚を作成して、顔にパッと貼るだけ。もうメイクも要らなくなっちゃいますね。AIは学習できるし、膨大なデータをもとに思考して発信できる。でもその発端を学習させるのは生身の人間。これからは記憶力よりもイマジネーションが豊かな人間が求められようになるのは当たり前ですよね。

山村さん

メイクのプロがAIの頭脳として活躍する、そんな時代がきそう。

藤原さん

人間がトレンドをインプットして、実際にメイクするのはAIだったりしてね。

山村さん

一方で、個人のメイク技術をAIや動画で教えてもらうのには限界がある。やっぱり対面で生身のプロに指導してもらうことも必要かな。

藤原さん

生身の人間とAIのミックスが、未来予想図かもしれませんね。

山村さん

こうして時代は少しずつ価値観や生活を変えていっているんですね。遡れば半世紀前には、「美白」なんて普通の女性は誰も言っていませんでした。みんな夏にはこんがり日焼けして、秋がくるとパックやマッサージで一応白くしようとはしていましたが……。オゾンホールの問題が提起されて80年代半ばから日焼け止めクリームや美白がブームになって。

藤原さん

当時日焼け止めクリームのCM撮影をしながら「どうして日焼け止めクリームなんか塗らなきゃいけないの!?」と本気で思っていましたから(笑)。

山村さん

時代は変わりますね! 今はSPF50が当たり前ですが、最初はSPF6ぐらいでしたし。でも白い肌に対する美意識は、日本人は昔から持ち合わせていたものです。江戸時代の美人の条件のひとつが”色が白い“こと。文献から”白肌”にまつわる表現を辿っていくと、“透き通るような””真珠のようにツヤのある““キメ細やかな”とか、今と変わらない表現がすでに江戸時代から存在していたことがわかっています。

藤原さん

根底にあるものは変わらないということですね。化粧に関しても、流行りやIT技術の進化はあったとしても、平安時代から根付いている日本人ならではの美意識のDNAは、ずっと変わらない気がします。

山村さん

日本人ならではの美意識は、未来にも継承され続けるのでしょうね。

編集後記

時代を反映するメイクですが、新しい形が生まれるためには今までの既成概念を壊す大きな力が働いているのですね。

特にITの発達でいうと、How to動画を参考にメイクする若者は、実際に対面した際の印象は二の次だとは…驚きました。ただしこの仮想空間上で成立する時代は長くない。この先はやはりリアルとの融合が必要とされていくのだと感じました。

また、これまで“シニア層”とひとくくりにされてきた50代以上の女性の変化も、興味深いお話でした。以前の「次世代の大人ファッションとは。」とも共通しますが、今の大人女性はファッションはもちろん、メイクの世界でも新しい流行をつくり出してきました。創造性に富んだこの世代の方々へ向けて、年齢的に抱える問題とのギャップを生めることが必要なのかもしれません。性別や世代関係なく、それぞれ個人の生き様やポリシーを表現できるためのメイクでありたいですね。

(未来定番研究所 佐々木)

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