FUTURE IS NOW

時代の目利きたちの“今”から未来を探るメディア

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持永かおり 
〈モノ継ぎ〉主宰

1968年千葉県生まれ。多摩美術大学でガラス工芸と陶芸を学ぶ。2011年の震災をきっかけに、モノを作る側から直す側へと転身。以降国産の漆を使った日本古来の「金継ぎ」というリペア技術で、陶器やガラスの食器・置物などさまざまなワレモノの修理を手がけ、その仕上げの美しさには定評がある。現在はホームページからの受注に加え、2ヶ月に一度、東京都世田谷区の<D&DEPARTMENT TOKYO>にて金継ぎの公開受付も定期開催。著書に「繕うワザを磨く 金継ぎ上達レッスン」(メイツ出版)がある。

https://www.monotsugi.com
photoby:masacova!

共通質問1)あなただけが気づいている、5年後には定番になっている「もの」や「こと」は何ですか?

 

繕うこと、直すことが今よりも身近になっていると思います。2020年に向けて、漆の仲間数人と、きちんと漆で器を繕うことを国内外に広くアピールしていこうと計画中です。現在、残念ながら金継ぎといってもその半数以上が漆ではなく合成接着剤と合成塗料を使っています。もともと私は合成接着剤を使い美術品や花器の修復をしていて、大切に使っていた飯碗が割れた時に、食べ物が直接触れる器を合成接着剤では直せないと痛感し、漆の勉強を始めました。なので、安全とは言い切れない合成接着剤を使って器を直す場所があることを、疑問に思います。最近は若い人の間でも器がブームになっていて、長く使える良い物をお金をかけて選ぶ人が増えてきた気がします。気に入って手に入れたものを少しでも長く大事に使うために、きちんとした知識を持って、大切な器こそ安心して飲食に使える「漆」で直すということが定番になっているといいですね。

 

 

共通質問2)あなたが幸せを感じる瞬間はどんな時ですか?

 

器に現れる傷の軌跡を見ている時です。ひとりで部屋にこもって作業をしている際、修理した器の美しさに、思わず声を上げてしまう時があります。私はもともと、割れやヒビが好きで“ヒビフェチ”だと言われていて、器に入ったヒビを見ながらお酒を飲むこともあります(笑)。「傷跡を景色と見立てる」という茶道の美意識があるように、ヒビや傷を景色として美しく思うという考え方は日本の金継ぎにも通ずるものがあります。ヒビの線は、人が作為を持って描いた線ではありません。ヒビには、磁器、陶器、ガラスなりの入り方があり、ものを落としたり、壊したりなどの偶然の出来事によって生まれた必然です。その必然を傷跡として残し、さらに金で飾る価値観は、不完全なものに美を見い出す日本ならではの素晴らしい文化だと思います。きれいに入ったヒビをきれいに繕えると本当に幸せですね。

未来問答 No.36

最近あった、心があたたまるお話をひとつ教えてください。

器修理に来たお客さん

未来問答 No.35

あなたのとっておきの温泉(銭湯)を教えてください。

みなとみらいの万葉倶楽部

未来問答 No.34

冬になると食べたくなる「鍋」を教えてください。

長ネギたっぷりの豚しゃぶ

未来問答 No.33

この冬購入した、一番あたたかいファッションアイテムを教えてください。

ヤマヤのアームウォーマー兼レッグウォーマー