2019.03.07

リアルスポーツとオンラインゲームの融合。eスポーツの魅力と可能性。

コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える「エレクトロニック・スポーツ」=「eスポーツ」。2000年前後からプロフェッショナルeスポーツの大会が欧米やアジアなど世界各国で開催され、世界規模で急速に発展を遂げています。一方、日本においては、海外での盛り上がりに対して展開スピードが遅いのが実態です。今回は、日本野球機構(NPB)と共に野球のプロリーグ「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」を開催し、FCバルセロナ選手ジェラール・ピケ氏によって創設されたeFootball.Pro社とのパートナーシップを展開する株式会社コナミデジタルエンタテインメントの広報担当の方に、eスポーツの魅力と、その可能性について伺いました。

始まりは「PES LEAGUE」。

「弊社における代表的なeスポーツの取り組みとしては、サッカーゲーム『ウイニングイレブン』シリーズの欧州大会を皮切りにグローバル展開を始めた2001年まで遡ります。海外では『PRO EVOLUTION SOCCER』という別タイトルで発売されているので、その略称にちなんで『PES LEAGUE』と題した、No.1プレイヤーを決めるKONAMI公式のeスポーツ世界選手権です。2018年の大会では、まずはネット対戦という形式で世界各国にてオンライン予選が開催され、成績上位プレイヤーがオフライン大会(アジアラウンド・南北アメリカラウンド・ヨーロッパラウンド)へ駒を進め、各大会の上位選手が決勝大会に出場しました。オフライン大会はドイツ、アルゼンチン、バルセロナなどで開催されリアルタイムで世界に動画配信されるので、視聴者はリアルなメジャースポーツに匹敵する盛り上がりをみせています」と、プロモーション企画本部、副本部長の車田貴之さんは話します。

eスポーツのその魅力はどこにあるのだろうか?

「まずは、ゲームプレイヤーなら誰もが選手として大会に参加できるチャンスがあるということです。そして、試合の歓声や興奮を、スマホやPCを通して世界中どこでもオンラインで観戦を楽しむことができるということです。ゲームというと、一人で部屋に閉じこもってするもの、というイメージがついて周りがちですが、実際にeスポーツの中継を見てもらうと分かりますが、まさにリアルなスポーツ中継と同じような感覚で観戦できるんです。プレイヤーだけでなく、視聴者として観戦する楽しみも味わえるのがeスポーツの魅力です」

 

 

©Konami Digital Entertainment

実際に、過去のeスポーツ大会の様子を視聴してみるとそのエンターテイメント性の高さに驚かされる。映画館の巨大スクリーンを使用したライブビューイングなども開催され、実況、解説、ゲストに元Jリーガーらも加わり、プロフェッショナルな面々が集結。

「視聴文化を生かした視聴コンテンツとしての魅力も大きいと思います。サッカーにしろ、野球にしろ、トップレベルのプレイヤーの試合は、見ていて本当に面白いんですよ。そのためにも、ゲームメーカーとしては、グローバルで楽しんでもらえるコンテンツを作ることが大前提です。ゲームデザインや演出など魅せるためのクリエイティブは年々進化しています。一つの大きなエンターテイメントですね」

ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment

リアルとゲームの融合。

そんな中、2018年にはプロ野球がeスポーツに本格参入というニュースが飛び込んできたことで、日本国内でもeスポーツは一気に知名度をあげました。コナミデジタルエンタテインメントによる野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」シリーズを使い、日本野球機構(NPB)とKONAMIがプロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」の共同開催をスタートさせたのです。

代表選手は一般のプレイヤーを対象に、オンライン予選と実技や面接などがあるオフライン選考会といったプロテストを実施。さらに2018年9月には「eドラフト会議」が開催され、1球団3名のプロ野球eスポーツ選手、計36名を登録。ペナントレースを戦い、リーグ代表戦を経てe日本シリーズで日本一を争うという、まさにプロ野球の世界がそのままeスポーツとして体現されているのです。

 

 

ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment

共催のきっかけは、プロ野球ファンの裾野を広げたいという要望からでした。実際のプロ野球ファンというのは30歳以上と年齢層が高い傾向にあり、若い層へのリーチを起こしたいというNPBさん側の思いと、若いファン層を獲得しているビデオゲームとの親和性が高かったのだと思います。メーカーとしても、もう一つのプロ野球を見せたい、という思いがあったので、リアリティのあるレギュレーションには細部までこだわりました。eBASEBALLの楽しさを通して、プロ野球って面白いね、今度リアルなプロ野球を見てみようかな、という若い層のプロ野球への興味を促し、一方で、ゲーム未体験者に対しても、視聴の楽しさから自分もパワプロをやってみようかな、とゲームにも興味を持ってもらえる。昨年11月に開催された開幕戦は、大いに盛り上がりましたね。全12球団のプロ野球eスポーツ選手が一堂に会し、実況にはプロのアナウンサー、解説にはプロ野球OBで解説者の真中満さんや谷繁元信さんらに参加いただき、プロ野球の新たな魅力を体験する場となりました」

ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment

プロのeスポーツプレイヤーは、まさにアスリート。

元々は1対1で行われるイメージのゲームですが、eBASEBALLでは各球団が3名のeスポーツ選手を指名し、3名のチームメイトでシーズンを戦うことになります。また「ウイニングイレブン」においてはCO-OPモード(最大3対3)がゲーム内に搭載されており、チームでプレイできるモードを導入したことで、eスポーツの魅力はより飛躍したとも言います。

「『ウイニングイレブン』では最大3人でプレイできるモードを導入[K1] したことで、チーム力が問われることになります。そのため、ゲーム内外での戦略が重要となり、リアルな部分でコミュニケーションが必要となります。チームメイトの息が合わないとチームとして勝てませんし、チームスポーツとしてeスポーツを楽しむことで、見せる面白さも高まりました。また、eドラフト会議では実技だけでなく面接も行われ、プロの選手としての資質、スター性など人間性も問われます。海外ではすでに浸透していますが、プロのeスポーツ選手は、まさにアスリートや芸能人と同等の人気を博しています。eスポーツとはいえ、プロのプレイヤーであることに変わりはないのです。eBASEBALLでも、研修会などが開催され、選手たちにあるのはまさにプロ意識、スポーツマンシップです。ゲームのファン、チームのファンからプレイヤーにもファンがつくことで、eスポーツの裾野はますます広がっていくと思います」

ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment

日本におけるプロeスポーツの可能性と未来。

「ここ2、3年、eスポーツ元年と言われ続けていますが、リアルとeスポーツの距離は確実の縮まりつつあり、結びつきは強くなっています。日本と海外の盛り上がりにここまで温度差がある一つの要因は、欧米と比べると大会の数が圧倒的に少ないことです。我々のようなメーカー主導の大会はあるものの、選手が育つ環境が整っていないのが実情です。活躍の場を増やさなければ、コンテンツのファンの裾野も広がりませんし、選手も育っていかないと思います」

©Konami Digital Entertainment

「近年は、eスポーツ部のある高校も増え、昨年には全国の高校生を対象に、『第1回 全国高校eスポーツ選手権』の開催も決定しました。また昨年開催された、第18回アジア競技大会のデモンストレーション競技で、eスポーツ ウイニングイレブン2018部門において日本代表が初の金メダルを獲得。代表選手の一人、相原翼選手は若干18歳。まさにキラ星のごとく現れた新星です。彼のプレイを見ていても、大会を重ねるごとに磨きがかかっていくのが良くわかります。インタビューの受け答え一つとっても、コメントに自信が見られるようになり、eスポーツを通して、彼の成長を見ることができるのです。これは、まさにスポーツを通した情操教育に通じるものがあると思います」

 

将来的なビジネス規模の拡大が見込めるプロリーグと、青少年の育成やプレイ人口の拡大への貢献が期待される高校の部活「eスポーツ部」。世界に向けて、日本のeスポーツの展望は、ここからが本格的な飛躍年を迎えるのではないだろうか。

 

ゲームが家庭内のコミュニケーションツールとなった任天堂wiiスポーツにある種の感動を覚えていた私ですが、ゲームの範疇にはとどまらない、プロ・アマ、リアル・スポーツ、世代、国籍、教育的視点などの「際」を超えた新たなコミュニケーションツールとなりつつあるeスポーツに未来を感じます。選手の活躍の場が得られるよう、我々も何かお手伝いできればよいなと思いました。(未来定番研究所 安達)