2018.05.31

ドローンが叶える未来の物流<全3回>

第3回 物流はどう変わる?よりスムーズな配達を叶えるために。

お店に注文すると、ものの10分で空からドローンがやって来て、荷物を届けてくれる……。これ、「少し先の未来」の話ではありません。既に実証実験が始まっている、「いま」の出来事なんです。実現させたのは、楽天ドローン。いつの間にか到来していたSF的物流の背景や課題をお聞きするべく、楽天のドローン事業部ジェネラルマネージャー・向井秀明さんにお話を伺いました。最終回では、今後の課題と展望をあげていただき、実現化が期待されるドローン配送の未来図などを伺います。

(イラスト:岡崎由佳)

F.I.N.編集部

未来に懸念されるリスクを挙げるとすると、どのようなことが考えられるでしょうか?

向井さん

サイバーセキュリティの問題が、まず挙げられます。たとえば金融事業をするときに、「ハッキングされたらどうするんだ」というリスクは多々あると思うのですが、それに対しては、ひとつひとつセキュリティ対策をしていくしかありません。その点はドローンも同じで、「無線をハックされたらどうなのか」とか、「フライトコントローラーを物理的に攻撃されたらどうするんだ」といったことがあるのですが、IT企業としてのノウハウを使いながら、サイバーセキュリティ対策をしていくしかないと思っています。

F.I.N.編集部

千葉市での実証実験では「LTEを使った」と仰っていましたが、ドローン用の無線とLTE、それぞれのメリットデメリットを挙げるとすれば、なんでしょうか?

向井さん

ドローン用の無線というのは、基本、昔からラジコン飛行機などで使われているものとほぼ同じです。距離は、飛んだとしても5㎞未満。そういった電波を使って、ドローンとドローンを監視している人が、常に情報をシームレスに受け取れるのがドローン用無線です。一方LTEですが、実は現時点では、まだ正式には空で使ってはいけないんです。「LTEは地上用の無線」と総務省で定められていますし、地上に向けてしっかりと飛ぶように最適化されているので、空で受信してしまうと地上に悪影響が出る可能性があり、空ではまだ使えないというのが大前提なんです。

ですが特例として、携帯電話業者と組むことで、空でも使っていいという許可をいただくことができるんです。そこで千葉市のケースではNTTドコモ様と組んで実証実験をおこないました。LTEであれば、電波が入る限り距離の制限は一切ありません。実際、実証実験では、千葉市で飛んでいるドローンを東京・二子玉川にある楽天本社で監視しながら飛ばしていました。

今後5Gでの通信が実現すれば、ドローンに4Kカメラを積んで、高精細な映像をリアルタイムでもらいながら、なにかのサービスに生かすということも考えられます。当然、プライバシーやそのほかの問題も浮かびあがりますが、その一方で、さまざまな活用方法が考えられます。

F.I.N.編集部

「さまざまな活用方法」というと、物流以外にどういったサービスが考えられますか?

向井さん

実はドローンを活用したサービスというのは、「宅配」よりも、「監視」や「測量」の方が進んでいるんです。そちらの用途は、今後ますます進化していくと思います。ただ、我々のビジネスの中核はeコマースなので、おこなうべきは「物流」ですし、物流がきちんと離陸すれば巨大な経済効果があるとみています。ですので今は、物流に注力しています。

とはいえ、物流を担うドローンにセンサーをいくつかつけて、宅配と同時に監視をおこなったり、パトロールに使ったりといったアイデアも出てくると思いますので、可能性をどう広げていくかは、今後継続的に検討していきたいと思っています。

F.I.N.編集部

物流が変革した未来、ドローンは随時何台くらい飛んでいるとお考えですか?

向井さん

いわゆるピザ店の宅配のようなオンデマンド配達を、ドローンで補完していくことを最初におこない、その後、本格的な物流改革になっていくであろうと考えています。本格的な物流改革となるときには、都市部であれ、複数台のドローンが行き交いながら飛んでいるイメージです。

F.I.N.編集部

その物流改革に向けてボトルネックとなっているのは、どういう部分でしょうか?

向井さん

やはり、「人の上を飛ばせない」という点が一番大きな障壁です。とはいえ、人の上を飛ばして落ちてしまったら大変なので、安全性の部分や技術革新の部分も並行して進めながら、規制緩和に向けて働きかけていくことになると思います。

実際、人の上を飛ばせるようになれば、かなり大きなインパクトがあると思います。国と一緒になって、かつ、我々が投資している技術パートナーとも連携しながらやっていくことになります。内閣府が、「2019年にはドローン物流を実現する」と表明してくれたこともあり、経産省や国交省も、本気になって動いてくれています。

いま、経産省や国交省が合同で、「第三者上空を飛ばすには、どういうルールが必要なのか」を決める検討会を開いています。積極的に議論が進むなかで、最近は、条件付きで「監視者なしでも目視外飛行をやってもいい」というルールができたりしています。着実に、動き出してはいるんです。

F.I.N.編集部

確かに、ドローンが落ちてきたら恐いですね……

向井さん

現在楽天ドローンで使用している機体の重量は8~9㎏ほどありますが、ドローンがなんらかの異常をきたすと、パラシュートが飛び出してユラユラと降りてきますので、そのまま落下することはまずありません。とにかくいまは、ヘリコプターや小型セスナ並みの安全性を担保できるように開発を進めているところです。

あとは、例えばお米のような「より重いもの」を「より遠くまで」運べるような技術開発も、同時に追っていきたいと思います。

F.I.N.編集部

トラックに2トン、4トン……とあるように、ドローンも、S・M・L・XLとサイズを選べる時代が来るかもしれない、ということでしょうか?

向井さん

そうですね。そういったサイズが今後規格化され、「Mサイズの荷物だったら、こういうディメンションで、こういうドローンで運ぶ」となっていくといいなと。いま物流って、実は梱包が規格化されていないんです。そのため、余計な手間がかかるという背景もあるんです。そこが効率化されることは、とてもいいことだと思います。

あと、ドローンによる物流が普及することで、「ストック」という概念が変わるかもしれません。たとえば歯磨き粉やトイレットペーパーって、なかなか買いにいけないし、頼んでもすぐに届かないし、いちいち買いに行くのも面倒くさいので、買いだめしておくわけですよね。あるいは特売日に。

それは、買いだめすることで、いざ使いたいときに「ない」という状況を避けたいという心理が根底にある消費行動だと思うのですが、オンデマンドで、10分後に必ず届くのであれば、その行為もなくなると思っています。そうなると、家の中のストレージルームの使い方も変わると思いますし、それがBtoBにも波及すれば、倉庫の概念が変わったり、倉庫の立地も変わったりと、大きな影響を与えると思います。

そんな変化を、可能な限り早く実現するべく、全方位でがんばっていきたいと思います。

計画を完璧にして実装するのではなく、実験レベルで世の中に発信し、トライ&エラーを繰返し、アジャストしていく姿勢がものすごく魅力的に感じました。映画のような世界がすぐそこまでではなく、もう来ているんですね(驚)。一方、物流(交通)の発達と共に世界はどんどんグレーになっていく。何でもすぐに手に入る未来は豊かでもありますが、場所自体の価値はどんどん薄れていってしまうようにも感じました。この企画を通して、場所の価値を改めて考えるいい機会になりました。その“場所らしさ”は追求しないといけませんね。 

(未来定番研究所 村田)