2018.05.25

ドローンが叶える未来の物流<全3回>

第2回 ドローンが可能にする、私たちの新しい生活。

お店に注文すると、ものの10分で空からドローンがやって来て、荷物を届けてくれる……。これ、「少し先の未来」の話ではありません。既に実証実験が始まっている、「いま」の出来事なんです。実現させたのは、楽天ドローン。いつの間にか到来していたSF的物流の背景や課題をお聞きするべく、楽天のドローン事業部ジェネラルマネージャー・向井秀明さんにお話を伺いました。第2回目は、都市部や離島で行なった実証実験など、ドローンによる地域活性の現状を伺います。

(イラスト:岡崎由佳)

F.I.N.編集部

千葉県のゴルフ場でのケースのほかに、これまでどのような実証実験をおこなってきたのでしょうか?

向井さん

たとえば愛媛県今治市で「離島での配送」をしたり、千葉市では「都市部での配送」をしたり、藤枝市では「民家の庭に荷物を配送」したり……といった実証実験をおこなっています。

また、福島県南相馬市では、ローソン様の移動販売車と連携しながら「地域の公民館に商品をお届けする」サービスを、住民の方々にご提供しました。

F.I.N.編集部

離島間の配送というお話が出ましたが、そもそも、ドローンの航続距離はどれくらいなのでしょうか?

向井さん

場所や条件によって多少変化するのですが、機体の限界性能としては10㎞なので、片道5㎞程度の経路を往復できる想定です。ちなみに積載量は最大2㎏で、スピードは時速40㎞/hくらいです。南相馬市のときは、ローソンと公民館の距離が約3㎞でしたので、ご注文いただいてから10分程度でお届けしていました。

F.I.N.編集部

南相馬市でのお取り組みについて、具体的に教えていただけますか?

向井さん

通常の実証実験では、「空からモノが届く」という物流の新しいあり方について検証しているわけですが、南相馬市の場合は、買い物に行くのが困難な方々、いわゆる買い物弱者と呼ばれる方々に対して利便性をご提供したい、という思いでスタートしました。

南相馬市の住民の方々は、カートを押して公民館を訪れるような高齢者が多いんです。そうした方々にしてみると、数百メートル先の公民館までは来られるけれど、数キロ先のコンビニまで行くのは困難なわけです。そうした方々の日常的な手助けになれば、ということで始めたプロジェクトなんです。

F.I.N.編集部

注文配達受け取りは、どのような流れだったのでしょうか?

向井さん

ローソン様は、移動販売車という地域貢献サービスをやっていらっしゃいます。南相馬市の場合は、移動販売車が定期的に公民館にやって来るのですが、通常の店舗に2千数百種類の商品があるのに対し、移動販売車には300種類程度しか積めないそうです。なので、たとえば「移動販売車が来た」ということでおばあちゃんたちが買い物に行くと、「あれ、だしの素がない」という話になるわけです。それを移動販売車のスタッフがローソンの店舗へ連絡を入れます。店舗のスタッフが商品を専用の箱にセットし、「楽天ドローン」のスタッフが受け取って、ドローンに取り付けて離陸させると、空から届くという流れでした。

F.I.N.編集部

ドローンの積載量は最大2㎏とのことでしたが、運べないものはあったりしたのでしょうか?

向井

コンビニで取り扱っているものであれば、ほとんどの商品を運べます。揺れもほとんどないので、ドリンクでも問題ありません。そういえば、アイスカフェラテがよくドローンで運ばれていました(笑)。

都市におけるドローンのありかた。

F.I.N.編集部

千葉市でおこなった、「都市部での実証実験」についても教えてください。

向井さん

「都市部でドローンがなにかを配送する」という事例が当時はまだなかったので、その先例を作るためにおこないました。

このプロジェクトには続きがあるんです。千葉県市川市に楽天の倉庫があるのですが、その倉庫から、幕張新都心に建設中のマンションまで直接ドローンが飛ぶ、という構想があります。住民の方々にアプリを使ってもらい、そのアプリから注文すると、楽天の倉庫に置いてあるものならすぐに届く、という究極のオンデマンド・ショッピングを実現したいと思っています。

F.I.N.編集部

荷物は、どこで受け取れるのでしょうか? もしかして、ベランダで受け取れたり……

向井さん

ご注文いただいた荷物は、マンションの近くに確保したドローンの着陸場所にて受け渡しとなります。ベランダでの受け渡しは、それこそSFのようで夢がありますが、実際のところドローンは飛んでいると結構恐いので、まだまだ難しいと思います。それに、ベランダにはなにが置いてあるかわかりませんので、「ベランダに着陸」は、まだ現実的ではないと思います。

F.I.N.編集部

都市部におけるドローン配送には、将来、どのような需要があると想定していますか?

向井さん

考え方は2つあると思っています。1つは、本格的な物流への結合といいますか、小口の物流における「ラストワンマイル」の部分をドローンが担うという考え方。ただ、これはまだまだ難しいかなと。2020年とかではなく、もう少し先の話になってくると思います。

F.I.N.編集部

何がボトルネックになっているのでしょうか?

向井さん

大きくは法規制の部分です。現状、ドローンは人の上を飛行することができないんです。既存の物流の代わりになれるくらい、いろいろなところを飛ばせるかというと、まだそういう時代は来そうにありません。いまの有人飛行機くらい安全性が高まってくれば可能になってくると思いますが、それまでは、まだ待たないといけないと思います。

 

ですので、本丸としては2つめの方で、先程もお話したオンデマンド・ショッピングです。欲しいと思ったら、すぐに届く。そういうショッピングのかたちを、まずは過疎地から始めたいと思っています。都市部でも、千葉市のような国家戦略特区や、限られた河川上や、限られた海上であれば飛ばすことができるので、そういう場所で、オンデマンド・ショッピングのかたちを実現していきたいと思っています。

F.I.N.編集部

ドローンを使った物流が本格化していく未来において、新たに必要とされる機能や仕事があるとすれば、それはどのようなものでしょうか?

向井さん

いわゆる航空管制と呼ばれる機能が重要になってくると思います。いまは我々の頭上をドローンが飛び交っているということはありませんが、1社がうまくいけば、追従してくる会社も当然現れてくると思います。その時代に向け、空域管理の体制を整えておくことが大切です。そこで2017年に「楽天AirMap株式会社」という会社を立ち上げ、空域管理の仕組みづくりに取り組んでいます。

ドローン操縦者向けアプリ “AirMap”  写真提供:楽天

F.I.N.編集部

具体的にどういう取り組みなのでしょうか?

向井さん

現時点では、まずは飛ばせる場所と、飛ばせない場所を「見える化」して、飛ばせない場所であれば、誰に許可をとれば飛ばせるのかといった情報を、ドローンを飛ばしたい人に提示する業務をおこなっています。あと、国が主導するプロジェクトにもメンバーとして入り、国としてドローンの航空管制の枠組みをどうしていくか、という作業を一緒におこなっています。

 

有人機の場合は、とにかく人手がかかるというか、管制タワーには何十人もいるわけですが、国際会議に出ていると、ドローンはそういう方向ではないことが見えてきます。すべてのドローンに頭脳が乗っているので、どんどん自動化して、基本的には人が関わらなくても、飛行の許可申請や安全確認をはじめとするいろいろなことを、AIやセンサーが判断しながら、すべて自動化したかたちでやっていく、という未来になるのではないかと想像します。

次回は、今後の物流の変化を紐解き、そこから見えるさまざまな可能性について伺います。