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    haru.さんが『HIGH(er) magazine』をつくる理由

2019.01.31

ジェネレーションZ世代の今

1人目 haru.さんが『HIGH(er) magazine』をつくる理由

1990年代に生まれた人たちを「ミレニアル世代」と言いますが、その世代と重複しつつも、90年代後半から2000年代までに生まれた世代を、最近では「ジェネレーションZ」と呼ぶようにようになりました。この世代には、学生の頃から、インターネットなどを介して積極的に「外」に向かって発信・活動する人が多く、閉塞感が叫ばれる現代において、明るい兆しをもたらしつつあります。つまり、今彼らが考えていることこそ「未来の種」なのではないでしょうか。

そこで、F.I.N.編集部ではこれから「ジェネレーションZ」世代でめざましい活躍をする方たちに会いに行くことにしました。最初にご登場いただくのは、haru.さん。現在美術系の大学に在学中ながら、『HIGH(er) magazine』というインディペンデント・マガジンを立ち上げ、雑誌の編集に留まらず、さまざまな活動を通して、この世代を中心に多くの人々の注目や支持を集めています。haru.さんのこれまでのこと、そしてこれからのことを伺ってみました。

(撮影:鈴木慎平)

”雑誌好き”から始まった、雑誌づくり。

F.I.N.編集部

ハルさんの活動を知る上で重要なのは、「HIGH(er) magazine 」(以降「HIGH(er)」と略)だと思います。そもそもそうした雑誌を作ろうと思われたきっかけは何だったのですか。「HIGH(er)」は紙の雑誌ですが、あえてウェブではなく、「紙」にこだわられている点も含めて教えて下さい。

haru.

ウェブにしなかったのは、ものすごく自然なことだったんです。情報を発信したいという思いはそもそもそんなになくて。小学校の頃からいろんな雑誌を買い漁っていて、でも大きくなるにつれて、読みたい雑誌がなくなってきたなと感じていました。そんな時、雑誌好きな私を見て、父が自分の持っている『スタジオ・ボイス』のバックナンバーをたくさんくれたりもしました。「こんなのあったんだ!」、「こんなのあっていいんだ!」みたいにすごくワクワクしましたね。それで、今まであった既存の雑誌という形で、自分たちが作るんだったらどんなものが出来るのか見てみたい、そんな好奇心から始まったんですよね。

 

F.I.N.編集部

なるほど。そもそも雑誌が好きで、自分で雑誌を作ってみたいという思いからだったんですね。

haru.

高校生の時は、ドイツのシュタイナー学校に留学していました。当時は言葉の壁もありましたし、コミュニケーションの取り方がわからなかったんです。それで、一人で「ZINE(ジン)」を作り始めたんです。そして、卒業の時に初めて「人と作る」という経験をして、「これちょっといけるかも!」みたいな感覚になって。これ日本に帰っても絶対やろうと思ったんですよね。

F.I.N.編集部

その卒業の時に作られたものは、どのような人に向けて作ったんですか?

haru.

それは、自分たちのためというか。まず自分がいてあなたがいる。あくまで、「私」と「あなた」の関係性というか。だけど、それが第三者から見ても、自分が今まで感じていたことだったり、自分も経験したことがあると感じてもらえるようなものが作りたいと思っていたんです。ミクロ視点で見ているのに、それがわあって広がっていく感じ。だから、今でも割と近くにいる人との関係性が、そのまま「HIGH(er)」に反映されていて。だからもう、「HIGH(er)」は「私自身」と言ってもいいくらい。私の近くにいる人たちのことを通して「世界」を見ている。そういう感覚でやってます。

その感覚は、高校の頃に読んだ林央子さんの『拡張するファッション』から来ているかもしれません。そこでは、ミクロ視点でファッションを見ていた先駆者たちの話がたくさん載っているんです。記憶とかその人の身体感覚みたいなものに寄り添うというミクロな視点でファッションを考えるみたいなことに、私自身も興味があるんです。

F.I.N.編集部

つまり、ファッションも、「流行」や「トレンド」として捉えるのでなく、自分なりの視点で見るということですよね。

haru.

いわゆるファッション誌って、その時流行っているものしか載っていないものですよね。でも、林央子さんの本や『花椿』、『スタジオ・ボイス』はそうではない。ファッションの自分なりの捉え方ができるかもしれないという考え方になってきました。

分断されたジャンルを飛び越える「仲介人」として。

F.I.N.編集部

『スタジオ・ボイス』や『花椿』というと、「アート」との結びつきも強いですよね。haru.さんは、いま美術系の大学にも在籍されているわけですが。

haru.

私の存在って、たぶんどこにもしっかり属せないみたいな立ち位置だと思うんですよね。アーティストでもないし編集者でもないし。じゃあ何なんだろうと考えていたんですけど、もしかしたら「仲介人」なのかなと最近思い始めています。いろんな分断した世界を繋げる「仲介人」にならなれるんじゃないかと。だから、「アート」と「ファッション」の中間にいるような感覚もすごくありますね。

F.I.N.編集部

「仲介人」を英語にすると、「ミディアム」。要は自分自身が「メディア」になるということですね。

 

haru.

はい。でも、それは私だけじゃなく、みんながそうなんだろうなと思っています。みんなが自分自身を「メディア」であると思って欲しいし、自分の持っているパワーをもっと自覚し欲しいなと思っています。

F.I.N.編集部

そうしたことを、たぶんこれまでも雑誌を通して発信して来られたと思うんですが。

haru.

確かに、政治やフェミニズム、性についての話なども取り扱っているんですが、「HIGH(er)」自体が発信してるというよりは、私の周りにいる人がどういう考えを持っているのか、それを反映させているというイメージなんです。例えば、LGBTの特集を組むというより、その人たちが居心地よく、ただ普通にそこにいるみたいなことが大事なのかなって思っていて。いろんな人がただ「共存」していることを見せたいんです。

 

F.I.N.編集部

それって雑誌ならではの表現にもなり得ますよね。雑多なものが「共存」しているのがそもそも雑誌ですから。

 

haru.

そうですね。次に出す予定の号もそうなんですが、出ている人も本当にバラバラで。私の小・中の同級生の、いきなりオーストラリアに移住した男の子二人とか(笑)。麻のパンツをつくりたいからプロデュースしてほしいって急に連絡が来たんです。「She is」っていうウェブ・メディアを立ち上げられた知り合いの二人の女性編集者とか。だから、自分の周りにいる人たちが同じプラットフォームにいるみたいな感じですね。

自分なりのコミュニケーション手段としての、雑誌づくり。

F.I.N.編集部

haru.さんは「人間」に興味があるということなんでしょうか。

haru.

なんか面白いと思ったら、すごくその人のこと大好きになっちゃうんですよ、私。それで、「HIGH(er)」があることで、そういう好きな人たちと何か出来るんじゃないかっていう発想になるんですよね。逆にそれがなかったら、その人たちへの愛を私はどういう風に表現したらいいか分からないし、ぶつけられないなみたいな気持ちもあるんです。

F.I.N.編集部

あと、ただ雑誌を作られているだけではなくて、ローンチ・パーティをやられたり、グッズを作るなどマーチャンダイズをやられたり、制作費をクラウド・ファンディングで募ったり、またそのリターンをいろいろ工夫されたりしていますよね。

haru.

毎回イベントをやるのは、やっぱりどんな人が読んでくれているのか見たいっていうのがすごく大きいから。雑誌の配送作業も自分たちでやっているのですが、全国から注文があるから、それがどんな人なのかをいろいろ想像しながら住所を書いているんです。だから、こっちが勝手にみんなに会いたいなと思ってやっているというのが大きい。あと、実際にみんなの考えてることも聞けたらなっていう気持ちでイベントはやっています。

あと、グッズは、最初ただ単に作りたくて作っていたんですけど、雑誌を半年に一回出して行くには費用もかかるので、定期的にグッズを出して、その売り上げを次の制作費に回すという役にも立ってくれています。

F.I.N.編集部

その循環がとても上手く行っていますよね。

haru.

まるでバンドみたいな感じですよね(笑)。でも、グッズ制作でも、例えばアーティストを巻き込んで一緒に作ったりとかできる。そうやって、雑誌という枠もを飛び越えられるというか、そんな感覚で作っています。

F.I.N.編集部

読者層はどんな感じなんですか。

大阪でのイベントの様子。

haru.

同年代、それも女の子が圧倒的に多くて、男の子もいるんですけど、イベントとかでやっぱり一人で来るの恥ずかしいみたいで(笑)。あと、結構上の世代の男性というか、それこそ『スタジオ・ボイス』をリアルタイムで読んでいた人たちが懐かしいと言って買ってくださることもあります。

F.I.N.編集部

そういう意味では、『スタジオ・ボイス』イズムみたいなものをどこかに感じられるのかもしれませんね

haru.

そうですね。そこまで意識してないけど、それで育ってきているので出ちゃってる(笑)。SNSに購入された方が、とっちらかった編集が『スタジオ・ボイス』っぽくて良いと感想を書いてくれました(笑)。

惹かれるのは、経験や体感と繋がる”アナログ”。

F.I.N.編集部

haru.さんがこれからどういう道を進んで行かれるかはわかりませんが、どのような形であれ、雑誌は作り続けて行きたいと思われていますか。

 

haru.

はい、作り続けて行きたいですね。雑誌は自分のコミュニケーション・ツールなので、やめたらどうやって世界と繋がればいいのかたぶん分からない(笑)。

F.I.N.編集部

しつこいようですが、今後はそれがウェブということもあり得ますか。それとも、やはり「紙」にこだわりたいですか。

 

haru.

それは、「紙」ですね。嫌なんですよ、ウェブって(笑)。

F.I.N.編集部

アナログにこだわりがあるということなんでしょうか。

haru.

やっぱり「物」としての強さってあると思うんですよね。だからお気に入りの映画は絶対にDVDを買うし。「物」を買うって記憶とも結びつくので、経験だと思います。でもウェブは、いつ見たか忘れちゃう。もちろん、手軽さも良いんですけど、私が作りたいものはもっと「経験」や「体感」を得られるものとして人に寄り添いたいという気持ちがあるから、たぶんウェブにはならないんじゃないかな。

F.I.N.編集部

haru.さんの世代は、物心ついた頃からインターネットの環境はあったでしょうに、そういう感覚はどこで身について行ったんでしょうね。

haru.

何なんですかね(笑)。うーん、でも、すごい収集癖とかもあって。マドラーとかめっちゃ集めちゃう子供だったんですよ。あと、切手とか(笑)。もちろん、雑誌もそうですね。でも、大量すぎてどうしようかなと思って、お気に入りのページを切り抜いて集めて、みたいな感じで。でも、それがページの両面、表裏にお気に入りがあったらどうしよう、とか(笑)。

 

F.I.N.編集部

そういう感覚って、周りとか、同世代の人に多いように思いますか。それとも、ちょっと特殊なんでしょうか。

haru.

どうなんだろう。でも、「HIGH(er)」を一緒に作ってる仲間たちはやっぱりこの世界に馴染みきってないな、と思うことがあるし、ここで普通に話してる会話って、違うコミュニティでは通じないのかもしれないと思うときもあります。私は、みんながもっと無理せずにいれる世界、人間対人間でいられる世界を理想としているところがあって。だから周りの人には、せめて私といるときは、いろんなルールに縛られることなく、自分らしくいて欲しいなという気持ちがあります。そういう人との向き合い方が、もうちょっと広がって行ったらいいなと思いますね。

F.I.N.編集部

なるほど。でも実際、どうしてもルールや立場、環境など、いろいろと違う人たち同士の間に壁を作るような風潮がありますよね。

 

haru.

そう、それってもう全部のトピックに当てはまりますよね。政治もそうだしジェンダーもそう。だから、そういう一旦決まってしまっているものや良しとされているものを省いて、ちゃんと人として向き合って話をするようになればいいですね。

皆がフラットでいられる世の中のために。

F.I.N.編集部

確かに。haru.さんにとってそういう姿勢は、今後どういう仕事や活動をして行かれようと、変わらない部分なのでしょうね。

haru.

そうですね。変わらないと思います。制作においてもそうだし、仕事をしていてもよく直面する。私自身まだ若いし、女の人だし、たまに軽く見られてしまうことがあるんです。難しいことだけど、良い方向に持って行けたらいいな。いろんな方面から、柔らかくそういう壁を壊して行きたいと思っています。

 

F.I.N.編集部

つまり「ソフト・パワー」ということですね。そういう理想の世界というか、理想の人と人の関係の在り方を語って頂いたところで、自分のイメージができる近い未来の範囲で、例えばどういうことに挑戦してみたいです。

haru.

今までトークイベントをやってみたりして気づいたのは、来てくれる人は同じような興味や関心がある人たちが圧倒的に多いということ。すでに私が見たい世界に共感してくれてる人たちというのは同じなんです。だから逆に、そこから全く外れたところでトークをしてみたいなと思います。学校とかの講演会ってら正直ゲストに期待とかしてないじゃないですか(笑)。たまたま、そういう場で知らない人から聞いた話が、何かその人に引っかかるような。そういう期待されてないゲストに自分からなってみる(笑)、そこで何ができるかみたいなことを考えて行きたいんです。だから、ラジオとかもすごく気になってて。去年、ラジオにちょくちょく出させてもらって、それをたまたま聴いた人に何人か出会って。あ、こんなことってあるんだなって思ったんですよね。

F.I.N.編集部

そうやってharu.さんの考えに共感する方が増えつつある中、何か感じ取れる変化はありますか。

haru.

そういう人たち同士で、ちゃんと話をして繋がっていってくれてるんだなというのを実感したのが、この前の大阪のイベントでした。知らない人たち同士が、大きい机にみんなで座っていて、そこにどんどん新しい子が来て、自己紹介して、それで横の繋がりもどんどんできていって。普段こういう場ってないから、自分たちでももっとやりたいよねという話をしてるのを見てて、「なんかすげえいいな。これだよな」と。私たちはそういうのを普通にやるっていうのをモットーとしてやって来た中で、それが段々浸透していることを感じられて、すごく嬉しいなと思いました。

F.I.N.編集部

そんなharu.さんの今後が本当に楽しみですね。次の「HIGH(er) magazine」も、ぜひどこかでご覧頂けたらと思います。

 

取材を終えて、HIGH(er) magazineを見てみました。まるで、haru.さんの毎日を垣間見ているかのような不思議な感覚になりました。インターネットやSNSが発達し、自分が触れてきた情報や環境が必ずしも隣の人と同じではない。そうなると、人それぞれ様々な考えや価値観を持って生きているのは当たり前のことですね。そんな人たちが肩を並べて一人の人間として暮らしていくことが自然なのかな、と感じました。

そう考えると、「ジェネレージョンZ」などと、ひとくくりにもできないですね(笑)。haru.さんの近くにいる方々もそうですが、みんながどんな考えや価値観を持って暮らしているのか、もっと知りたくなってきました。

(未来定番研究所 佐々木)

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