2018.08.10

思いを伝える、贈り物の選び方<全8回>

第5回 清水文太さんの場合

「お中元」や「お歳暮」といった贈り物はあまりしない方も増えつつありますが、その伝統は今なお続く大切な文化です。一方で、手土産やお土産など、日常の何気ないシーンに贈る気軽なプレゼントの形「カジュアルギフト」の需要が高まっているのも事実。実際に人々は、どんな場面で、どんな想いからものを選んでいるのでしょうか?この特集では、自身の活動から人々に刺激や感動を与えている方たちへ聞き取り調査をしてみました。

今回お話を聞いたのは、スタイリストでアーティストの清水文太さん。

Profile

清水文太 /スタイリスト・アーティスト

17歳の時、短期間でのスタイリストアシスタントを経験。児童館やたい焼き屋・八百屋での勤務もしていた。19歳にして水曜日のカンパネラのツアー衣装を手がけ、モデルとしてdoublet・DolceandGabbana・Mihara Yasuhiro のショーにも出演。その活動の他にも装苑・Webmagazineでのコラム執筆の他 自ら買い付けした古着のpopupショップ、渋谷TSUTAYAでのデザインディレクション、ギャラリーでのアート展示などを開催。鈴木えみやスチャダラパーBose・あやまんJAPANファンタジスタさくらだなどのスタイリングも。スタイリスト・クリエイター・アーティストとして多岐にわたる活躍を見せている。

贈りたい人:同級生の友人

贈りたいシーン:就職祝いとして

贈りたいもの:レザーのショルダーバッグ

選んだ理由

僕の同級生と言うと、今は大学生です。自分は不規則な仕事をしているので、なかなか都合が合わず、会えるのは数ヶ月に1回くらい。会えば、深い話は1割で、残りの9割はたわいない話をしています。

中学生時代の僕は少し荒れていて、当時、同級生に迷惑や負担をかけてしまいました。その負い目があってしばらくは音信不通でしたが、やりたい仕事をするようになって、ようやく普通に連絡が取れるようになったんです。だから、贈り物をするなら、自分が今携わっている、ファッションに関係のあるものを渡したいですね。

例えば、レザーのショルダーバッグ。僕は社会人なので「良い仕事や良い生活をするためには、良いものを持ちたい」とも思うけれど、大学生は、飲み会に行くとか遊びに行くとか、ものを買うことよりも瞬発的な楽しい体験により重きをおく年代ですよね。だからこそ、自分じゃ買わないような、良いものを渡してみたいかな。その時は「重たいな……」と思われるかもしれないですけど、1年後でも、2年後でも、あとあとその良さに気づいて、使ってくれたらそれでいいんです。同級生は大学3年生でちょうど就職活動の時期。就職が決まったらお祝いとしてたわいない話の合間にさらっと渡したいです。

清水文太さんが大切にする贈り物の条件

・自分らしいもの

・気楽なシチュエーションで渡す

まずは、自分が渡したいと感じるものであることが大事です。普通、「相手のために」というのが贈り物なのかもしれないですけど、正直な話、贈り物をするっていう時点で自分のエゴが入っていると思うんです。そこには、渡したっていう安心感もあれば、喜んでくれたらいいなっていう期待感も混ざっているはず。だから、素直に自分があげたいものをあげたらいいんじゃないかな。特に僕は派手なビジュアルをしているから、贈り物をするっていうと、ある程度みんな普通じゃないものを渡されることを覚悟しているんです(笑)。もちろん、相手も喜んでくれるかどうか、そのバランスを取ることは意識していますよ。

あとは、気楽なシチュエーションで渡したいですね。「プレゼントがあるんだ……」みたいな重い感じで渡すとお互いに緊張してしまうから、何気ない話の延長で「そういえば、あげる!」くらいの方がお互いに構えなくて良いかも。僕が嬉しかったのは、学校の先生から貰ったお弁当のプレゼント。当時の僕は貧乏で、お昼のお弁当を買うお金もなかったんです。ある時、学校のある先生に、「間違えてお弁当買っちゃったからさ、ひとつあげるよ」と言われたんです。当時は「ラッキー!」くらいにしか思ってなかったのですが、今考えたら、めちゃくちゃ気持ちこもってるなと。だって、弁当を二つ買い間違えることなんてないじゃないですか。先生は、俺の状況を知っていたので、全部理解した上で、「お弁当を二つ間違えて買ったよ」と言ってくれたのかなと思うと、涙が出ます。当時の僕は「誰の助けも要らない」というスタンスだったので、「お弁当を買ってあげるよ」では素直に受け取れなかったと思うんです。相手を身構えさせない何よりもスマートな渡し方ですよね。究極の贈り物でした。

 

 

次回は、〈SUNSHINE+CLOUD〉デザイナー兼オーナーの高須勇人さんにご登場いただきます。

思いを伝える、贈り物の選び方<全8回>

第5回 清水文太さんの場合